嫌な思い出をなくす方法

私は小さかった頃の事をほとんど覚えていませんでした。小学校の時も中学校の時も高校の時の事もあまり思い出せない。それが普通だと思っていたけれど、最近になってなぜ思い出せないのかなと不思議に思い、ちょっと思い出そうとしてみると、楽しかったことではなく、いやな思いをしたことが頭に浮かんできました。なんでそういう事がまず思い出されるのだろうと思いながらも、まずひとつ、最初に頭に浮かび上がってきた出来事を詳しく思い出そうとしてみたら。。。その時の事を思い出そうとし始めた時からわりとすぐに自分の胃の辺りに緊張感のような、ムカムカするような、胃が荒れているようないやな感覚が出てきて、やだ、やだ、と逃げ出したくなりました。

その出来事をもっともっと思い出そうとする度に、自分の胃の下の部分、きっとみぞおちだとおもうけれど、そこがざわつくのです。すごく不快なのです。

今までの自分だったら、これはネガティブな感情だからと思い出すのをやめていたはずですが、私はその時その理由を知りたくなりました。ようやく本当の自分と向き合える準備ができたからなのかどうかはわからないし、全く関係ないのだろうけれど、とにかく時が来たのでしょう。その出来事をできる限り思い出してみました。

高校の時の嫌な出来事は、友人関係のトラブルでした。私が悪かったのはわかっていて、あんな態度をとってしまって、ほんとにバカみたいだった、悪かったな、とまず罪悪感をとらえる事ができました。改めて、こんなダメな自分がいる事を思い出させられ何度となく心からごめんなさいと、○○さん嫌な思いをさせてしまって申し訳なかった、と涙もどくどく出てきて謝り続けました。5分ほどほんとに悪かったと反省して謝っていると、そのうち涙もとまり、気が付くと、胃の辺りにあった嫌な感覚、ねじられていたようなみぞおちの感覚が軽いまろやかな感覚に変わっていて、でもね、自分もつらかったんだよ、あんな行動をとらなきゃいけないほど、つらかったんだよ、あの当時の自分はまだまだ未熟な人間で、いっぱいいっぱいで、ああやって甘えた行動に出るしかなかったんだよ、しょうがなかったんだよ、煩悩のあるのが人間だから、自分もたかが、人間だから、という言葉がスーっとみぞおちから丹田に降りてきたのです。そして、もうあの嫌な感覚は感じられなくなりました。

嫌な思い出をまず、どうゆう事が起こったのか順序だててみる。それを自分はどう捉えていたのか。例えば私の場合は、劣等感とやきもちと自己嫌悪をその時に感じていたようでした。そして、その先を解析すると（これが一番大事）人より自分の方が劣っていると思いたくない、思われたくない、あの人ばっかりずるい、そしてそう思ってしまう自分がいや、というところからきていました。つまり、人と比べる自分、ねたむ自分、それをわかっている自分がいたのです。頭の中にある刷り込まれてきた常識によると、そんな風に人と比べてはいけないとわかっているので、そういう自分がいるという事を認める事は非常に難しい。あんな風に態度に出してしまった事が許せない、自分はあんな事をする人間じゃないのに、してしまった。。。穴があったら入りたい、その出来事自体を消してしまいたい。これを自分と思いたくない。なので、思い出として認められなかったから思い出せなかったのではないかと思いました。

脳＝理性と心の間のギャップによる葛藤でしょうね。そういう一般的にダメと言われている感情を持つ心があってもいいんだよ、それで普通なんだよ、と脳が認めることができると、その出来事と、それに伴っていた嫌な感情が初めて切り離せるようでした。

その仕組みがわかってから、頭に浮かんでくる嫌な思い出を思い出してみては気持ちの整理をしています。心から謝り、泣いての繰り返しです。これで終わったかと思っても、あれ、もしかして悟った？と思えてもしばらくすると次から次に整理するべき思い出が出てきます。あんなに昔の事が思い出せなかったのに、ジャンジャン出てきます。その時は整理できたと思っていても、またあとで気づく心の痛み、自分の痛みも、人に与えてしまっていた心の痛みも手に取るように感じられます。ああ、あの時はわからなかったんだけど、この人をどれだけ傷づつけてしまっていたのか。特に、子供達に対しては本当に頭が下がるばかりで。そして、実は私の無神経さにきちんと耐え続けている彼らの方ができている人間で、私は彼らを通して、いろいろと学ばせてもらっているのだなあと、頭が下がる思いです。

そして、時には本当につらい作業にもなりうる、『思い出から嫌な感情をみつけ、くみ取って解析する』事によって、その思い出が起こっていた当時でさえたくさんの愛情を周りから受けていた事が改めて思い出されるのです。せっかくのいい思い出も、時系列を同じくして起こっていた嫌な思い出に阻まれて、出てこれなくなっていたんですね。

そうしたら、もう感謝しかありません。

悪い思い出は消せません。でも、ただの思い出、にすることは可能です。