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晩秋雲脚記 (上)

晩秋雲脚記(上) 夜光詩社 草川義英


雨霽れの土の匂もなつかしや旅にあひぬ
る時雨なりけり


旅にきて蛇使ひの眼を見てありぬかはき
し心して見てありぬ


ぐつたりとい寢んねがひもさもしけれ京
の祇園のともしのいろよ


浪路はるかの岩の黑さに月も出よこのま
ゝ秋の夜は更けゆくを


夢に泣きすずろに夢をなげかへし秋のつ
めたき旅のめざめよ


秋の雨淋しくながし土にしみ吾の心を濡
す都を


しらじらと夜の渚の黑土に咲ける秋草ひ
そかなりけむ


運命にもまることさへたゞならず流離の
人のかたるおもざし


廣重の繪に見るところと淋しくうすき光
にたぢたぢと暮る


(函館毎日新聞 大正六年十二月二日 一日夕刊
 第一万一千六百十二號 一面より)

#函館毎日新聞 #函館 #修学旅行 #祇園 #大正時代 #短歌



※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒
 を中心に結成された夜光詩社という短歌クラブに所属していた。
[解説]夜光詩社について



函館市中央図書館、国立国会図書館、所蔵


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