見出し画像

マンボウが農業に与える影響

マンボウ、始まりましたね。

政府は21日午前0時から新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」を東京、神奈川、愛知など13都県に適用した。期間は2月13日まで。9日から適用中の広島、山口、沖縄の3県を含め対象地域は16都県に広がった。

日本経済新聞
「まん延防止、東京など13都県で適用始まる 2月13日まで」
2022年1月21日より引用

政府の政策については、多方面から疑問が呈されていますが、もうコレはコレです。やるというのだから、仕方ありません

毎度、言われることではありますが、この措置を実施すると、飲食店の営業に大きな影響が出ます。

新型インフルエンザ等対策特別措置法にもとづく措置。都道府県知事が飲食店などに営業時間の短縮要請や命令を出せるようになる。従った事業者には協力金を支払い、命令違反には20万円以下の過料を科すことができる。対象地域は原則として市区町村単位で、知事が指定する。

日本経済新聞
「まん延防止等重点措置とは 飲食店に時短要請や命令」
2022年1月7日より引用

これについては、いろいろな方が、さまざまな視点から問題指摘をされているので、ここではあまり踏み込みません

ただひとつ、今回のマンボウの報に触れて、あることを思い出しました。それは今年、私が借りることになった農地についてです。

元々、そこはご高齢の地元の方が、コメを作っていたそうです。そして、そのコメは、近くのホテルに納めていたといいます。

しかし、度重なる緊急事態宣言や自粛の呼びかけなどにより、ホテルでの需要が減ってしまい、コメ作りをやめてしまったというのです。

人が生きるうえで、ホテルで食べようが、自宅で食べようが、消費する食べ物の総量は、そんなに大きく変わるものではないと思います。しかし、それを生産している人たちからすると、売り先が変わってしまうとなると、なかなかに大変なことになります。そのことによって、農業の継続が難しくなるということがあるのです。

さらに踏み込んでいえば、ここ最近、飲食店が直接、生産活動にまで乗り出す「6次産業化」も進んでいました。

6次産業化とは、農業などに従事する1次生産者が所得向上などを目的に、2次産業(食品加工など)や3次産業(飲食業など)に参入する取り組みのこと。一方で近年では、3次産業の飲食企業が1次や2次に参入する新しいかたちの6次産業化も出てきている。

ぐるなび通信「外食企業がカギを握る! 6次産業化への道」
2018年8月28日より引用

この動きにより、外食産業(飲食店)が、直接、農業(第1次産業)との結びつきを強くしていったのです。場合によっては、第1次~第3次産業までが一体化するというところまで出てきています。

当然、飲食店への締め付けは、より一層、農業を含む第1次産業への締め付けとなってきます。

問題は、農業を継続できなくなる人たちが増えてくると、どういうことが起こるのか?ということです。

「もともとは農業に関する経験も知見もありませんでした。しかし当時から、TPPの交渉、農地法改正による規制緩和、農業従事者の減少など、農業を取り巻く環境が大きく変わることが予想されていました。既存の枠組みが変化するところには新たなビジネスチャンスがあると考え、農事業への本格的な参入を決めたのです」

オリックスHP
「オリックスが成長分野の一つと捉える「農事業」最前線」より引用

このように、これまで農業と関係がなかった企業が、入ってくるようになるでしょう。当然、農業を諦める人々が増えれば増えるほど、こういう企業に大きなビジネスチャンスが転がり込むことになります。

市場主義・資本主義的な考え方からすれば、それは歓迎すべきことなのかもしれません。しかし、私たちにとっては、必ずしもそうではない点、考慮しておかなければなりません。

また、ここで考えておきたいのは、生産性の高い効率的な農業が、果たして私たちにどのような影響をもたらすのか?ということです。
生産性の高さを求めるがゆえに、安全性が損なわれては元も子もありません。しかし「自由競争」の名のもと、生産性の高さばかりが求められれば、簡単に安全性が失われる可能性もあるわけです。実際、既にそれは起こっているとも言えます。

「「自由競争」まみれの農業は困る」より引用

いやいや・・・それでも、大企業が農業に進出してくれれば、新しく雇用を創出してくれるんだから、それはそれでいいじゃないか?

「今の法律では、企業は正社員として採用すれば定年まで雇用しないといけないため、正規雇用を少なくしたいと考え、代わりに非正規雇用の人を安く使っています。そうではなく、既得権となっている正規雇用の社員の解雇規定をつくることで雇用の流動化を図り、正規も非正規も同じように扱われるようにするべきなのです」

朝日新聞SDGs ACTION
「オリックス・宮内義彦氏「国民すべてに現金支給を」「コロナ禍の今こそベーシックインカム」」
2021年4月20日より引用

例えば、農業の新規参入を狙っているオリックスでは、一度雇用してしまったら、それを「既得権益」と考えるようです。もちろん、考え方はさまざまですが、労働力を安く調達し、要らなくなったら簡単に解雇できるように求めるような企業が為す雇用創出に期待しろというのは、ちょっと無理があるのではないでしょうか。


また、農業の継続を難しくするのは、これだけではありません。

肥料の調達が難しくなれば、これもまた農業従事者を締め付けることになります。

中国という国がどういう国かを知っていれば、今の農業が非常に危険な状況にあることが理解できるはずです。

一方で、同国が行っているのは、食糧の歴史的備蓄だといいます。

中国は歴史的な高水準で食糧を備蓄しており、現在、世界のトウモロコシなどの穀物の半分以上を保有しています。2022年半ばには、世界のトウモロコシの69%、米の60%、小麦の51%を備蓄すると推定されている。

THE WATCHERS「China stockpiling food at historically high levels」
2022年1月14日より引用(機械翻訳)

私たちは、これから先の時代を生きていくうえで、真剣に食べ物のことを考えた方がいいと思います。

今年、インフレがくると言われています。

今はコロナ禍の反動による一時的なインフレと、マネーの過剰供給による従来型インフレ、ESG重視の流れで起きている部分的だけれども長期的に続きそうなインフレの全てが起きる条件がそろっていますから、インフレが起きるのはもう間違いないと思います。問題は起きるか起きないかではなく、いつ、どういう形で起きるのか。その時どう対処するかです。

日経スタイル「2022年は3要因でインフレ 長年デフレの日本は要注意」
2022年1月20日より引用

インフレが起これば、物価は高騰します。一番、困るのが、私たちが生きるうえで必要なもの・・・食べ物です。

これから考えられる食糧危機に備えて、備蓄をすべきという人たちもいます。私も、その一人ではあります。しかし、備蓄などというものは、一時的な解決策であり、緊急避難的な手段でしかありません。

今、構造的な変化が起こっている以上、そうした危機に備えるには、自分たちの生活スタイルや構造自体を変えていく必要があると思います。

毎度のことですが、農業、考えましょう


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?