見出し画像

「自由競争」まみれの農業は困る

私がお世話になろうと思っている地主さん、とても困っているそうです。聞いてみると、農地所有に金がかかるばかりだというのです。

日本では、全体的に高齢化が進み、農地を持っていたところで、実際に農業をできるわけではないケースが増えてきています。結果、費用ばかりがかさんでしまい、困っている人が多いというのは、ほかのところでも聞きました。

農地は耕作せずに放置してしまうと、荒れ放題になってしまい、再び農地として使うことが難しくなるだけでなく、獣害などの問題も引き起こします。なので、行政からも手入れをするように言われたりするため、そのメンテナンスにもお金や手間がかかるということのようです。

したがって、私のように「農地を借りて農業をしたい」という人は、地主さんからもありがたがられるというのです。実際、私の肌感覚でも、そんな感じでした。地主さんからは、とても歓迎されます

一方で、政府は農地活用のため、兵庫県養父市を国家戦略特区に指定し、一般の法人にも農地取得・所有を認める事業を進めてきました。

内閣府地方創生HPより転載

この法人の農地取得に関する政策については、あの竹中平蔵氏も関与していると言われています。

実際、竹中氏には利益誘導の“前科”が数々ある。たとえば、竹中氏がいまも有識者議員を務める「国家戦略特区諮問会議」では、国家戦略特区で神奈川県において実施を認めた家事支援外国人受入事業で事業者に選ばれた企業のなかにパソナがあった。また、同じく国家戦略特区に選ばれた兵庫県養父市では企業による農地の所有を認めるなどの規制緩和がおこなわれたが、そこにも竹中氏が社外取締役を務めているオリックスが100%出資する子会社のオリックス農業が参入している。

LITERA「岸田首相が竹中平蔵を「デジタル田園都市構想」委員に抜擢で批判殺到!」
2021年11月10日

一旦、彼自身の商売がどうかは置いておきます。個人的には、政府の意思決定に関与している人物が、その政策によって影響を受ける企業の利害関係者でいるというのは、望ましくないと思います。

ただ、本当の問題は、そこではないと思うのです。

日本の安全保障を考えるうえで、資本力をもつ企業が、日本の農業に参入できるようにすることが、果たして正しいことなのかという点、十分に考慮されなければなりません。

自由」という言葉は、とても美しい言葉だ。「不自由であるのがいいのか、自由であるのがいいのか?」と問われて「不自由の方がいい」と答える人は、ほとんどいない。誰もが自由を愛する
しかし、何でもかんでも自由にするのは正しいのだろうか。
多くの国では、実は自国の産業を守るためにいくつかの保護政策を取っている。守りたい産業を保護するために外国製品には高い関税をかける。
あるいは守りたい産業を国営化して、その重要な産業がつぶれないようにしている。インフラや農業は、多くの国で保護対象になる。
なぜか。ここが潰れれば、一気に国民生活に影響が出るからだ。
根幹部分を持っていかれると、場合によっては国が回らなくなってしまうのだ。

MONEY VOICE
「竹中平蔵氏が推進「自由競争」で日本は滅ぶ。農業も製造業もインフラも外国企業が独占」
2021年5月30日

彼が提唱するのは、「自由競争」の重要性です。

農業に関していえば、個人の農家がやっていることは非効率であり、経営能力が高く、生産性の高い農業を行える法人に農地取得・保有を許し、農業に参入させれば、農業が活性化するといったことになるでしょう。

大資本・大規模経営ができる企業が日本の農地を取得・保有し、彼らが日本の農業を担うようになれば、私たちの食料供給は、彼らに握られることになります。これに外資が加われば、食料自給率の意味合いも、少し考え直さなければなりません。

また、ここで考えておきたいのは、生産性の高い効率的な農業が、果たして私たちにどのような影響をもたらすのか?ということです。

生産性の高さを求めるがゆえに、安全性が損なわれては元も子もありません。しかし「自由競争」の名のもと、生産性の高さばかりが求められれば、簡単に安全性が失われる可能性もあるわけです。実際、既にそれは起こっているとも言えます。

行動の主眼はモンサントが開発したラウンドアップを含む除草剤への抗議だ。ラウンドアップの発がん性や遺伝子への影響が問題になり、2013年に始まった「反モンサント・デー」は今年で7回目を迎える。抗議行動の高まりのなかで世界各国ではラウンドアップの使用禁止や販売中止、輸入禁止が主な流れになっている。ところがそれに逆行して日本では内閣府食品安全委員会が「ラウンドアップは安全」と承認し、農協が使用を推奨し、ホームセンターなどでも販売合戦に拍車がかかっている。世界中で規制が強化され販売先を失ったラウンドアップが日本市場になだれ込んでいるといえる。

長周新聞「世界中が禁止するラウンドアップ 余剰分が日本市場で溢れかえる」2019年5月13日

私たちの生活・生命に直結するような大事な分野に関して、「自由競争」などという言葉に釣られて、安易にそれを開放してしまうというのは、非常に危険だと思われるのです。

まぁでも、なかなかに難しい問題です。私が、国家・政府の戦略に関われるわけでもありません

ただ、ひとつ思うのは、農地を持っている地主さん、あるいは農業に携わっている農家の方々、こういう方々にお金が回っていく仕組みを作ることの重要性です。生産性ばかりを求めている人たちばかりに、お金が回っていく仕組みでは、ろくなことがありません

そんなわけで、まずは冒頭に記したように、農地をもっている地主の方から農地をお借りしつつ、農業経験豊富な方々に教えを乞うて、アドバイザーとしての謝礼をお支払いする・・・そうすることで、少しでも経済が回っていくことになればと思うのでした。

とても小さいことですが、まずはそんなことからでも、私たちの生活を支えるための農業を守っていきたいと思わずにはいられません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?