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しぶとく生き残ってやるわい

3月になりました。富士河口湖農園では、今月、種籾選別をすることになっています。

種籾の選別をするにあたっては、塩水選というのをするので、大きな入れ物が必要になります。

ドラム缶を切って、種籾の選別に使おうと思っているんですよ」

農園の方が、そうおっしゃるので、少し不思議に思いました。種籾の選別は、毎年されているはずです。「なんで?既に入れ物はあるのでは?

「種籾の選別、毎年やっていますよね?何故、ドラム缶を切るんですか?
「ドラム缶を切って、横に倒して使うんですよ。その方が効率が良いから」

なるほどぉ・・・毎年、やることが同じでも、常に改善をしていくわけです。

それだけではありません。今年は、種籾を撒くときにも、効率的に撒けるように、ちょっとした種まき器具を開発しているそうです。

これはまだ開発途中のものです。

いろいろと説明をしてくださったのですが、全体像が見えない私にとっては、どう効率的なのかがイマイチ理解できませんでした。ただとにかく、同じ作業だからといって、同じやり方でしないというところになんというか・・・気高さを感じました。

話は違うかもしれませんが、イチロー選手のバッティングフォームのことを思い出しました。

僕は毎年バッティングフォームを変えるようにしています。たとえ首位打者を獲ったり、だれよりもヒットを打ったとしても、次の年には変えてしまう。いまよりも前に進むためには、常にあたらしいチャレンジが必要だと信じているからです。
その結果、前の年よりも成績が下がったり、うまくいかないこともたくさんあります。まぁむしろ、そのほうが多いのかもしれません。
でも、僕はこう思うんです。成長するということは、まっすぐにそこに向かうことではないんじゃないか。前進と後退をくりかえして、すこしだけ前に進む。つまり、後退も成長に向けた大切なステップじゃないかと。

同じ作物を作るのであれば、ある程度のノウハウがあって、毎年、同じことをやっていればいいのかもしれません。

しかし、相手は自然ですし、いろんなことがあります。

そういうことを大前提に置いておいて、こちらも常に変えていく、試してみるというのが、農業をする上での楽しみや面白みでもあり、また人間の成長に繋がるのだと言われているような気がしました。

・・・深いです。


この日は、イチゴについてのチャレンジもありました。

こちらの農園には、まだ本格的な大規模栽培はしていませんが、イチゴがあります

この日、このイチゴで試してみたいことがあるということで、この「いちごの土」を買ってきました。

「こういう土でやったら、どうなるんだろうね?」ということで、試してみるのだそうです。

夏場、青々と茂っていたイチゴは、今はすっかり枯れています

ただ、これはイチゴが死んでしまっているわけではなく、根っこは生きていて、次のシーズンに備えているのだそうです。

ちょと細かい話ですが、イチゴにはランナーという茎が伸びていて、少し離れたところに、さらに新しい苗を作っていきます。

こちらの写真でいうと、左側からランナーが伸びてきて、この新しいイチゴの苗ができたわけです。

イチゴの実は、この伸びてきたランナーの反対側につくので、収穫をするときの手間などを考えて、ランナーがどちらからきたのかは、きちんと分かるようにしておく必要があるのだそうです。

ともあれ、このイチゴの苗を「いちごの土」にセットしてみます。

セットしたイチゴは、今、作りかけている温床の上に置いてみました。

仮に、温床がうまく機能すれば、イチゴは早々と暖かい環境のなか、生長を始められるわけです。

元気な苗だけでなく、枯れてしまったような苗も試してみようということで、いくつかポッドに入れて、同じように温床の上に並べてみました。

うーん・・・さすがにこれはダメかな?

ダメかもしれないけど、やってみよう

ダメにみえても、根っこは生きているかもしれません。

「こうやって、いろいろやってみるんですよ。これでイチゴが出てきたら、すごいよね?

はい、本当にすごいです。イチゴもさることながら、こうやっていろいろと試されていることに、本当に頭が下がる思いがしました。

日々、是勉強です。

枯れ切ったイチゴは、本当に死んでいるようにみえました。もしアレが、もう一度、青々とした葉を出して、イチゴの実をつけるようなことがあったら、かなり度肝を抜かれます

そして私には、そのイチゴが、今の人類に重なってみえました。

これから人類が経験することは、ある意味、人類全体が死に絶えるようにもみえることではないかと思うのです。しかし、きちんと根が残っていれば、いくらでも復活は可能なはずです。

そんなイチゴを前にして、ちと大げさですが、「自分もしぶとく生き残って、人類再生のための根っこになってやるわい」などと思ったのでした。


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