【※前職の記事】感情とテクノロジーの交差点、プロジェクト“Olive” (前編)


はじめまして、AZAPA株式会社の橋本一生です。私たちは日常に潜む感情・感性を見えるようにしたり、その情報を応用することで、より良い世界を目指しています。私のこと、そして私たちの手掛けるプロジェクト“Olive”のことを知ってもらうために、noteを始めます。

まずは、私がどんなことをやっているのか知ってもらいたいと思います。現在、AZAPAという会社で、感情技術に関する開発やコンサルティングを行っています。「感情に関する技術って何?」と思われる方が大半だと思いますが、例えばコンピュータビジョンで動画から表情を判別したり、声から感情を推定するようなものがこれにあたります。私たちの第1の興味も、心拍などの生体情報や動作から感情を推定することです。

図1

次に第2の興味ですが、取得した感情をどのように活用すればいいのかということに興味があります。これまでも、どのように感情を知ることができるかという研究には様々な企業や研究機関が挑戦してきました。一方で、感情データのうまい活用に成功した例はまだないように見えます。特に日本企業においては解析エンジンそのものの研究開発はそれなりに盛んですが、実際にサービスとして打ち出す開発においては存在感を示せていないのが現状ではないでしょうか。

例えば、会議中に個々人が抱く感情や停滞した全体の雰囲気をコンピュータがわかれば、一息つかせるためにいきなり音楽を流して注意を仕事から切り離すなど、人間が苦手な硬直した気持ちの切り替えなどをサポートできるかもしれません。このような単純な発想がうまくいくかは多くの実験を重ねる必要も想定されます。

しかし、世の中の多くの問題はなんらかの感情の動きに起因するのではないかという発想を持つことが、新たな問題の切り口になると私たちは考えています。買い物をするのも、自動車を運転するのも、家でくつろぐのも、私たち人間が行っているのですから、そこには何かしら感情的な活動を伴っているはずだからです。

ここで重要となるのが「文脈」です。うつりゆく文脈をどのようにコンピュータに認識させるか、そして文脈に即した効果的なフィードバックを行う方法を考えることが第3の興味です。人間は非常に文化的な生き物で、文脈の中で生きています。文脈は過去の経験や関係性、その場の流れといったものです。現在の感情を評価するだけでは無意味で、良いフィードバックを作り出すには過去のその人の特徴を考慮した上で、この後どういった行動をしたり、何を欲しているのかを考える必要があります。実験室のように文脈から切り離された状況は非常に稀で、大抵はなんらかの文脈を持っています。なので、この文脈を無視したフィードバックやサービスはユーザー体験を不連続にしてしまいますし、的外れになる可能性もあります。

このように感情を取り巻く世界はまだまだ考えないといけないことが多く、現実的なレベルではほとんど答えが出ていないことも多いです。私たちは、そんな考えを持ちながら、よりストレスフリーで楽しめる世界を作るため、日々活動を続けています。


次回は私のバックグラウンドやなぜ感情に注目した仕事をやることになったのかをお伝えしたいと思います。

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