見出し画像

医療機器のユーザーエクスペリエンスとは

■医療機器のユーザー

医療機器については現状、Human Factors Engineeringによる安全性と効果の確保・検証がもっぱらのトピックですが、もちろんユーザーエクスペリエンスについても論じられるべきだと思っています。

コンシューマープロダクトのUXでは、ユーザーにとっての楽しさや便利さが焦点となります。医療機器では、関与者として医療従事者と患者の2種類のユーザーグループがあるのが特徴です。医療従事者には医師・技師・看護師が含まれ、患者には患者本人と、自由の利かない患者のお世話をする人(ケアギバー)が含まれます。

■医療機器のUX

医療従事者のUXとしては、自分の治療選択や手技に自信が持てること、自らの職業への誇りを感じられることが考えられるでしょう。医療従事者も人間なので、迷ったり挫折を味わったりしながら仕事をしています。医療機器を使うことで、そうした負の感情が和らげられるなら、優れたエクスペリエンスを提供できていると思います。

一方、患者にとっては、生活の不便を解消することはもちろん、病気のせいで失われがちな医療への信頼感を保てたり、将来への安心を感じられたりするのが、良いUX(PX: Patient Experienceとも)ではないでしょうか。
少し幅を広げて考えてみると、まだ病気ではない人が健康維持に自信を持てることや、ケアギバーが患者との生活に安心や明るさを感じられることも含まれるでしょう。

さらに、医療従事者と患者の間のコミュニケーションの改善、信頼感の醸成、インフォームドコンセントの充実にも、ユーザーエクスペリエンスは大きな役割を果たすはずです。

■今後の医療機器UX

医療施設で用いられる医療機器に関してだけではなく、今後ますます普及するであろうDTx(Digital Therapeutics, 治療プログラム)やSaMD(Software as a Medical Device, プログラム医療機器)においては特に、ユーザーエクスペリエンスへの注目が高まるのではないかと予想しています。

■UXデザインにおける新規性

また、こうした安心・信頼・自信に関わるUXのデザインは、ヘルスケア以外にモビリティ、ファイナンス、ガバメントで特に重要だと思われます。従来に比べて新規性のあるUXデザイン分野として開拓され、これらの産業のDX化の推進に重要な役割を果たしていくだろうと考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?