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No,131.心理学の意義「いまさらながら社会心理学について」

※この記事は2分で読めます

尊敬する中島らもは、進学校である灘中に入ったときの成績が8番だったという。
しかし高校生になり、どんどん成績は下がり落ちこぼれになったという。

サラリーマンなら聞くことがあるだろう。
「あの人って係長の時はバリバリのヤリ手だったのに部長になったとたん仕事が出来なくなった」

このように、ひとは環境により能力を発揮出来たり出来なかったりすることはよくある話です。

それにより性格や人格まで変わる場合もある。

個人的には「年齢や環境または付き合う人間で変わるもの」と思うんですが、多くの人はその人が変わる(人格)ことを嫌がります。

なぜなら、その人のイメージをアップデート(更新)しなければならないからです。

兎にも角にも、そういった環境による人の行動や変化を科学的に検証する学問の一つに社会心理学があります。


社会心理学

かの有名なフロイト(1921)はこう言っています。

「個人心理学は、個々の人間を扱い、個人がどのような方法で衝動を満足するかを探求するが、その際個人と社会の関係を無視しても差し支えない立場におかれることは稀で、しかもそれは一定の例外的な場合だけである。個人の精神生活の中で、他人は手本として、対象として、助力者として、そしてまた敵対者として問題になるのが常である。したがって個人心理学は、最初から同時にひろい意味での、いやまったく正当な意味での社会心理学なのである」。

※臨床心理士やスクールカウンセラー、産業カウンセラーなどの臨床系は応用心理学の領域であり、社会心理学(社会科学系)は基礎心理学に分類されている。

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つまり、個人は外的要因(環境)によって影響され、それを含めた個人(社会心理学領域)を考えなければならないと述べている。

以下、それを裏付ける研究を一部紹介します。

1.先行研究の紹介(性格・人格について)

宮城(1960、1998)によれば、人格(パーソナリティ)遺伝的・身体的な部分が核だとしたら、その周りに膜で覆うように性格が後天的に作られると述べている(玉子の黄身と白身のようなイメージ)。

筆者作成

人格(パーソナリティ)は変化しにくい部分で、能動的に変化する性格は、他人からの印象を受けやすいとされる。

また川幡(2012)は「性格とか人格と呼ばれているものは、自己規定の様式と捉えることができる。・・・自己を規定するには、他者による位置づけ・規定が不可欠であるから、性格・人格は、自己と他者との関係のあり方の関数と言えよう。すなわち、人間とは、一つの記号であり、他の記号(他者)との関係からその価値(人格)がつくられる」

例えば、ある人が他者を見たとき、その印象から「この人は冷たい人や温かい人、またはおしゃれな人やダサい人」などと判断する。

この判断は、非常に断片的で限られた情報から決定する。社会心理学ではこれを印象形成と言ったりするが、有名なハロー効果(「見た目がいい=異性にモテる」「高学歴=仕事ができる」という先入観など)も印象形成に似た概念です。

このように他人からの印象がポジティブであれネガティブであれ、他人から印象づけられたそのイメージから影響を受け、自分の性格といったものが形成される。

性格や人格形成において自己と他者または自己と環境といった外的要因によるならば、いかに良い環境にいるかが重要なのは自明です。

2.先行研究の紹介(能力について)

社会心理学者のローゼンソールとジェイコブソンは、生徒の1年後の学業成績を予測できる「ハーバード式能力開花期テスト」という架空のテストを考案し、小学生に受けさせた。

このテストは、実際には言語能力と推理能力を測定する知能検査であったが、このテストの成績とは無関係に、クラスの中からランダムに20パーセントの子どもを選びだして実験群とし、その他の子どもたちを統制群とした。

そして、実験群に割り当てられた子どもの名前を書いた名簿を担任の教師に「先のテストの成績からみると、この子たちは急速に成績が伸びると予測できる子どもたちである」と告げた(まったくのウソです)。

名簿は、担任教師にだけ示し、子どもや親には秘密にした。担任教師だけに「成績が伸びる」という期待をもたせた。

つまり、「素質は優秀だが本来の実力が十分に発揮できていない子」という役割を子どもに与えるように教師を仕向けたのである。

8カ月後に同じ知能検査を行なった結果、実験群(先生に成績が伸びるといった生徒たち)の子どもは、小学校の1~2年生では、統制群の子どもに比べ、著しい伸びを示した。

この実験は社会心理学で有名なピグマリオン効果と言われる心理的行動です。

さいごに

レビュー研究からいえることは、人格・性格にしろ、能力にしろ、ポジティブな恩恵が受けれる環境下に自らを置くことが重要であることがわかります。

ハロー効果(見た目に良し悪し)やピグマリオン効果(家庭や教育環境)にしろ、本人の実力や努力以外にコントロールできない領域があることは念頭に置いておくことは重要だろう。

つまり、そういった領域のよし悪しは運といえば運(子どもが選んだ顔や生まれてくる家を選べない)である。

そのことについては「実力も運のうち・能力主義は正義か?」の著者であるマイケル・サンデルが提唱しています。


最後まで読んでいただきありがとうございます( *´艸`)

参考文献

川幡政道(2012)「役割交代の効果 -性格は変わるか-」『横浜市立大学論叢人文科学系列』 第63巻、第3号、

フロイト1921(1970)「集団心理学と自我の分析」『フロイト著作集6』所収 小此木啓吾訳 人文書院

Rosenthal, R. & Jacobson, L.(1968)"Pygmalion in the classroom", Holt, Rinehart & Winston , New York

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