1.3 未来年表2030年に向けて知っておくべきこと

不動産価格と賃料は、需要と供給のバランスで決まリます。余れば下がり、足りなければ上がる。不動産投資の基本中の基本です。
2030年には人口減少や産業構造の変化で、地方の経済力が弱まり不動産の需要は減退します。そして、人材不足が深刻になると、より真ん中に集まり、不動産需要は上がります。

一方で、供給は2030年にどうなるか、マクロ環境を見てみましょう。将来の需給バランスを見れば、伸びる市場、投資の位置付けが分かってきます。今から逆算して、何をしなければいけないか、何に投資しておくべきかが見えてきます。2030年の住宅マーケット、家計、人口動態について、過去に新聞記事で予想された内容をまとめてみました。

【住宅マーケット】
- 築30年を超えるマンションが100万戸を超え、建て替え問題が起きる
- リフォーム・リニューアル市場が31兆9500億円に達する(2000年度の22%増:うち住宅が11兆5560円、非住宅が20兆3950円)
- 2005年前後に大量供給された新築マンションが中古マンション適齢期を迎え、日本の世帯数が下降線をたどりはじめる時期と重なる
- 住宅の寿命が平均40年に延びる(2003年時点ではおよそ30年)

【家計・人口】
- 貯蓄を取り崩す高齢者、低賃金で働くパート労働の増加により、日本人の家計貯蓄率が3.4%に低下する
- 労働市場での再チャレンジを後押しする政策により、高齢者の労働力人口が160万人増加、女性が25万人増加
-  都市を終の棲家とする団塊の世代が65歳を超え、3大都市圏の高齢化が2000年当時の島根県(24.8%)を超える(首都圏24.2%、大阪圏25.8%、名古屋圏25.1%)
-東京で暮らす中国人の数が20万人を突破する  

【政治・財政】
- 世界のGDPに占める日本の比率が9.5%に低下する(1995年当時は18.1%)
- 財政再建が進まず、国の債務残高がGDPの2倍を突破。長期金利が3.4%に上昇する
- 「経済成長戦略大綱」を推進する政府が、観光や福祉を含むサービス6分野の市場規模を70兆円拡大する

【海外】
- 世界全体の個人資産総額が315兆ドルに達する(2010年は195兆ドル)
- 韓中日の富裕層市場がピークを迎え、6000億ドル(約72兆円)の規模に達する
- 中国の生産年齢人口が9.98億人でピークを迎え、高齢者数(60歳以上)が2億人を突破する(全体の15%)
- フィリピンの人口が、2030年までに1億人を超える
- 中国3大都市(上海、北京、広州)の富裕層が、富裕層全体の47%を占めるようになる。中国が世界一のぜいたく品消費国になる
- インドのミドルリッチ層が4430万世帯の規模に達し、インドとインドネシアの家計資産が倍増する
- 中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)間で関税が撤廃されサービス自由化  
- 東京で暮らす中国人の数が20万人を突破する世界の富裕層は2010年に比べてたった20年で1.6倍に 

- 世界の旅行人口は18億人になると言われています。2020年時点の世界の旅行人口約14億人から、右肩上がりに増え続け、2030年には18億人になると言われています。2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2025年の大阪・関西万博といったイベントは、会場周辺での宿泊需要を大きくブーストさせることでしょう。さらに周辺都市を回遊する観光需要を生じ、一時的なイベントにとどまりません。宿泊する人の国籍、年齢層、目的は今後ますます多様化していきます。

- 2020年時点で日本人の平均年齢は40代半ば、建物の平均築年数は約25年です。2030年にはそれが約30年に。日本で不動産投資する場合、物件の築年数というのは他の国では考えられないくらい価格に影響するファクターになります。理由は融資がそれで決まるからです。ヨーロッパは築年数が経過してもビンテージ物件として価値が上がることがありますが、日本は上がるのではなく、下がります。国民性の問題なのか、木造文化が影響しているのか、法律の制度が原因なのか分かりませんが古くて高く評価されている物件は皆無と言っていいでしょう。

耐用年数の残存期間=融資期間が金融庁の指針で定められています。金融庁のガイドラインに従うほとんどの金融機関は築年数が経過した物件に対する評価を低くせざるを得ません。RC物件築30年だとすると、原則、法定耐用年数47年-30年=残り17年しか融資は組めません。融資期間が短いと元本返済負担が大きくなり返済比率が上がるので、キャッシュフローが出なくなってしまいます。築古物件のオーナーは、空室リスクと修繕リスクと戦いながら、多額の元本を返済することになります。高値で買ってしまったら、売却したくてもできない状態に陥り、なんとかキャッシュフローを確保してデフォルトしなうように経営をしていかなければいけません。
残債が減るまでなんとかうまく乗り切るか、損切りして安く売るか、現金買いで買ってくれる買主を探すかの限られた選択肢になります。万が一、債務超過になれば、次の物件を取得することもできなくなります。つまり、2030年に平均30歳を迎える日本の不動産は流動性がさらに悪化するということです。築古投資は早めに手を打っておかないと、いずれ大きなお荷物を抱えることになるでしょう。

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