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ヨガのダウンドックで手が滑る問題

今日のトピックは、「ダウンドック(アトムカシュヴァナーサナ/下を向いた犬のポーズ)で手が滑る問題」についてだ。

個人の経験から、手が滑る理由として以下の3点を挙げる。

① 筋力・柔軟性不足によるミスアライメント

筋肉が温まり柔らかくなるまでに時間を要するため、思い通りに身体を動かしにくい。太ももの裏側や肩回りの筋肉の硬さによって体重が手に乗りやすくなる。

② 空調により手に汗をかきやすくなる

暖房や冷房が必要以上に効いたスタジオの中に入れば、外気との温度差で汗をかいて当然。(スタジオにいる全員を満足させる最適な温度設定って難しいのよ…。)

③ ヨガマットが滑りやすい素材を使用している

私の調査によると、ポリ塩化ビニル製のマットは滑りやすい。手に汗をかいているとなおさら。

以上の3点である。

まぁ、②と③は環境の問題であるから、環境を変えればすぐに解決できる。練習中はできるだけ暖房はつけずに、ウォーミングアップでお腹や足の力を使うワークを多めに行い、「自家発電」すればすぐに身体は温まる。
ヨガマットは「グリップ力」が強いものをチョイスすることをお勧めする。ちなみに、私はマンドゥカ製(eKOlite エコライト 4mm)のものを愛用している。グリップ力抜群!

となると、1番の解決方法は「①筋力・柔軟性不足によるミスアライメント 」をなくすことである。

しかしながら、筋力や柔軟性というものは一朝一夕で身につくものではないので、結論「手が滑るのはしょうがないので、練習せよ」に尽きる。

そもそも、ダウンドックは難しいポーズという問題もある

ダンダーサナ、メルダンダーサナ(アルダハラーサナ)、壁を使ったダウンドック(アルダ・アドムカヴリクシャーサナで足を壁につけて行う)をとってみてほしい。これらのポーズはダウンドックの土台の向きが変わっただけなのだが、正しいアライメント(ポーズをとる際の筋肉や骨などの身体の部位の配置をその人にとって正確な位置に整えること)でとると、意外と筋力も柔軟性もどちらもフルで発揮しないとすぐにポーズが崩れてしまう。

ダウンドックはヨガのレッスンでは頻出のポーズであるが、非常に難しいポーズということを知っておくこと。そうすれば、「まぁ、地道にコツコツ練習しよう」と思え、自分を必要以上に追い込まずに心軽やかにいられる。
結果を求め過ぎず、ポーズを完成させるまでのひとつひとつのプロセスを毎回丁寧に確認することに目を向けた方が心の健康に良い。
プロセスを確認するときには、筋肉が正しく使えているかも確認できると、自分が持っている筋力を最大限に使え、いつもその時にベストなダウンドックをとることができる。

ダウンドックで手が滑ることを今もなおずーっと気にしている私の研究結果によると、このポーズは「前鋸筋(ぜんきょきん)」の使い方がポイントである。

私のイメージだと、マットを押す力がマットから押し返される力(エネルギー)に変わり、手の平⇒前腕⇒上腕⇒肩甲骨⇒前鋸筋⇒お腹・腰⇒お尻へと広がっていくのだが、肩や背中回りの筋力や柔軟性が不足することによって、その力(エネルギー)が途中、特に上腕辺りで途切れてしまう。
そうなると、身体が弓のように床に向かってたわみ、腕にぶら下がるような姿勢でダウンドックをとるしかなくなる(腰が柔らかい女性の方に多い)。そして重心が前へ前へと向かいやすくなるため、手がどんどん前に滑ってしまう。

ダウンドックではかかとでマットを押そうとする力はもとより、手の平でマットを押す力も大切で、手の平でマットを強く押すことによって前鋸筋が働き収縮する。その収縮によって肩甲骨が前方に押し出され(前方突出)、背中の中心から離れ、体幹(お腹の力)が強くなっていく。
これらの働きによって前述の身体のたわみはなくなり、上半身のアライメントが完成するため、あとはかかとでマットを押すということに専念することができる。重心は後ろへかけやすくなり、手の滑りなぞ忘れてしまう。

「手が滑るので困っているのに、もっと手でマットを押すのはどういうことか?」と矛盾しているように思えるが、私の経験上これが一番の解決方法であると思う。
そのためには、即、解決できてしまう②や③の問題はすぐにでも解決してしまおう。そして「手が滑るのはしょうがないので、練習せよ 」と自分に言い聞かせて、毎日毎日繰り返しの練習をするしかないのである。