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塩はそんなに悪いのか

「減塩」と書いてあると健康の象徴のようになっておりますが、どうなのでしょう?ほんとに健康的なんでしょうか?

減塩原理主義

ひどいのは味噌とか醤油にも「減塩」と書かれていることです。調味料というのは味の調整をするのですから最初から塩分を減らすのは全く意味が分かりません。世が世なら「ケチってる」と思われるだけですが、世が世なので「健康的だ」と思うのでしょう。

もっとひどいのは梅干しや漬物まで減塩が進んでいることです。保存食というのは塩が沢山入っているから腐りにくいのであって、減塩したら意味がないのです。いっとき弁当の「梅干しが腐る」と問題になりましたが、最近聞きません。酸化防止剤が添加されたからでしょうか。

塩を減らしたせいで腐りやすくなって困るので、酸化防止剤を添加して腐りにくくしたものを「健康的」と感じるのはもうなんのことやら分からない事態です。塩より毒のほうがいいということでしょうか。

ということで塩の味方をする話をつづります。

縄文人の塩事情

ちょっと前に柏の太平書林で買った本、『いちかわ再発見』。市川市を中心に縄文時代事情をつづっております。この中に「ナトリウムとカリウム」という項目があったのでご紹介します。1977年発行なので情報が古いところがあるかもしれませんが、ご容赦下さい。

p40

 日本列島においては、今からおよそ三千数百年前の縄文時代後期の終り頃、当時海であった霞ヶ浦を中心として土器製塩が開始されたことが、最近の研究で明らかとなった。市川では堀之内貝塚で製塩用土器がみつかっている。しかし、日本各地で製塩が盛んになりはじめたのは、古墳時代も半ば過ぎ以降のことである。
 では、本格的製塩が開始される前、人々はどのようにしてナトリウムを摂取していたのであろうか。それは、貝・魚・海草などの海産物、イノシシやシカなどの動物の肉・臓器・骨髄を食べることによって、そこに含まれているナトリウムを自然に得ていたのである。

『いちかわ再発見』市川ジャーナル社 1977

霞ヶ浦は茨城県の湖です。琵琶湖に次ぐ大きさなので、全国的にもそこそこ有名だと思います。
海のそばで暮らす縄文人がどうして塩を必要としたのか疑問の残るところです。もしかすると内陸との交易があったのかもしれません。あるいは見知らぬ土地への旅に携行したのかもしれません。そんなことを思うと胸が踊ります。

p40

 カリウムの多量で恒常的な摂取は、生化学的にナトリウムの摂取を不断に必要とする、という生体組織のイオン交換関係からすれば、植物を主とする食生活は、カリウム摂取量の増加となり、生理的にナトリウムを欲求するようになる。

『いちかわ再発見』市川ジャーナル社 1977

最近の健康情報では、「カリウムをとるとナトリウムを捨ててくれます。だから野菜や果物を沢山とりましょう」と喧伝されることが多いです。しかしながら、人類学や動物学などでは、植物食になるほどにナトリウムが必要になるという知見で探求されてきました。

まとめ

人類史でみると現代が特殊なのかもしれませんが、「ナトリウムを減らしてカリウムをたくさん摂りましょう」というのは、健康情報としてバランスが悪すぎると思います。野菜や果物ばかり食べていると高カリウム血症になることもあるのです。

「ナトリウムを摂らないとカリウムを排泄できない」

生理学の基本として知っておくべきですね。

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