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東京五輪での持続可能性とISOの在り方

無観客の中行われた東京五輪。コロナ禍で、熱い戦いを見せてくれた選手にはとても感動しました。日本人選手がメダルを獲得した嬉しいニュースが報道された一方で、信じがたいニュースも報道されました。

それは、開会式当日に4000食の弁当が廃棄されたこと。宿泊施設では朝食付きプランで101人予約が入っていたのに、実際に訪れたのはたったの5人。など管理不十分としか思えないようなニュースを見て、怒りや悲しみがこみ上げてきました。

今回は、食品ロス問題と持続可能性に配慮したイベントを運営するための国際規格であるISO20121について説明していきます。
また、SDGsとISOを勉強中のわたしが食品ロス問題への対応策とISOの在り方に話していきますので、ぜひご一読ください。

持続可能性を意識したコンセプトが掲げていた東京五輪

東京五輪では、「Be better, together /より良い未来へ、ともに進もう。」をコンセプトに掲げ、持続可能な社会の実現に向け、課題解決のモデルを国内外に示していきます。と宣言していました。

※SDGsとは…「持続可能な開発目標」。世界全体で解決しなければならない環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を、2030年までに解決しましょうといった国際的な目標。

食品ロスを減らす・なくすこともSDGsの目標の一つです。
あるニュースでは、「弁当の発注数は有観客の際から変更されていなかった」や「食べない人がいることの想定はなく、一定数廃棄する前提だった」などと書かれていました。
これらの内容が真実かはわかりません。しかし、開会式当日だけで4000食廃棄ともなると、SDGsという世界的課題を達成しようという意識がないというのは一目瞭然です。

また、選手やボランティアが宿泊する施設についても同じです。朝食付きプランの予約が入っており、101人分用意していたそうですが、96食分は廃棄に。

これだけの食材、”いのち”をいただいているのも関わらず廃棄になってしまうのは非常に悲しいことです。

組織委員会は、「弁当は廃棄ではなく、飼料化リサイクル・バイオガス化している」と説明。
SDGsを勉強中のわたしは、この会見をみてリサイクルって3Rの最終手段では?、なぜ最初からリサイクルという手段をとったのかなと疑問でした。

3Rは

Reduce リデュース(廃棄物抑制)>Reuse リユース(再使用)>Recycle リサイクル(再資源化)

の優先順位で行っていく認識です。リサイクルは、食べ残しや食材の利用しない部分(きのこの石づきやりんごの芯など)を再資源化するための最終手段だと考えます。
そして、リサイクルはリデュースやリユースと比べて、コストや環境負荷もかかるため、3Rのリサイクルまでをどう小さくしていくかが重要だと思います。

東京五輪はISOを取得している

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、持続可能性に配慮したイベントを運営するためのマネジメントシステムの国際規格であるISO20121を取得していました。

ISO20121の大きな特徴としては、環境だけでなく、イベントの社会的・経済的影響についても対象としています。

取得するメリットとしては、

イベントで環境および社会性を考慮した取り組みに対して、社会・顧客から、信用を得られ、組織やイベントのブランドイメージの向上が期待できること。

イベントのサプライチェーン全体における、二酸化炭素や廃棄物の排出削減、資源効率性の向上など、環境負荷の低減を目指す。

従業員、地域のコミュニティ、サプライヤーおよびその他の利害関係者との関係をよりよいものにする。

などが挙げられます。
イベントサスティナビリティに関するこの規格は、オリンピックから地方のお祭りまで幅広いイベントに適用が可能となっています。またイベント主催者だけでなく、イベント会場(ホテル、会議場、競技場など)、イベントに関わる施工業者、サプライヤーにとってもこの規格を活用するメリットがあるそうです。

東京五輪でのISOの在り方はどうでしょうか。
環境負荷の低減を実現していたか、社会的・経済的にいい影響を与えられたか、開催地のホテルや飲食店、その他利害関係者にメリットはあったか。と考えると、あくまでわたしの感じた中ではISOを活かした運用はできていなかったと思います。

・規格の取得が目的になっている。
・規格の趣旨(持続可能性)が組織全体に浸透していない。
・目標値を立て、数値化できていない。(弁当廃棄について内閣官房オリパラ事務局は「廃棄された数など詳細はわからない」とのこと)

ISOは組織全員の協力で目標を達成していきます。規格の趣旨が分かっていない、数値がわからないなど、規格の内容を把握していないとうまく運用できないと思います。
数値化できていなければ明確な改善策も立てられません。

東京五輪でISOが運用されることで、内部や外部にどのような影響をもたらすのか。オリンピックでのISOの在り方にとても興味があったので、今回このような結果になってしまいとても残念に思います。


私なりに考える対応策

食品ロスの対応策について考えていきたいと思います。

1、選手やボランティアに食事券を渡し、開催地の飲食店で食べてもらう。
コロナ禍だからこそ平等に飲食店にチャンスが与えられると思うし、少しでも売り上げにつながると思いました。
選手やボランティアが好きなものを食べられますし、食事券が使われなければ、弁当のように仮に食べない人がいてもムダな出費が生まれません。

2、弁当を配布する場合
廃棄を最小限に抑えるために、Reduce(廃棄物抑制)>Reuse(再使用)>Recycle(再資源化)3Rの順番で対応していきます。

まずはリデュース。有観客か無観客開催の2パターンの発注数を想定し、廃棄物をできる限り抑制します。食べ物はすぐに対応できないので、早めの決断も重要だと考えます。いきなり発注数を減らされても、食品業者のほうに損失がでたり廃棄が出たりしますから。

次にリユース。残った弁当は関係者が持ち帰れるようにします。コロナ禍で食に困っている人、夏休み中で昼食の困っている学生に配るなどもできるでしょう。
また、「オリンピック選手弁当!」など話題にし、廃棄がでないように引き取ってくれる人を募ることもできたと思います。

最終手段のリサイクル。食材の食べられない部分や食べ残しなどどうしようもない場合に対応します。手も付けていない弁当をリサイクルに回すのは論外です。

3、宿泊施設への対応
すぐに食材の対応はできないので朝食付きプランにせず、食事は各自で用意してもらいます。
また、有観客の時から弁当の数が変更されていないのなら、余っている弁当を宿泊施設に配り選手やボランティアに食べてもらう方法もあったと思います。


4、本来のISOの在り方
今回のオリンピックでISOの在り方についても思うことがたくさんありました。

・取得だけを目的にしないISOの運用
・組織全体への規格内容や活動の浸透
・ISO20121の特徴を生かした目標設定、具体的な数値、周囲の影響などを明確にする
・PDCAサイクルをうまく回す体制作り
・ISOを活用して内部外部に作用するメリットを最大限に引き出す
・記録や数値として残す

どれもISO運用の基本だと思います。
ISOを正しく運用することで、解決策が生まれ、運用当初よりもいい作用を内外部に起こすことができるのです。

まとめ

持続可能性を掲げ、国内外のモデルになると宣言したならばその活動が高く評価され、全世界のお手本になるような国になるべきだったと思います。
「おもてなし」や「もったいない」など日本でずっと昔から根付いている精神を伝えられるいい機会だと思っていたのでとても残念です。

今後のオリンピックでは同じようなことが起こらないように願いたいと思います。

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