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【活動報告④】磯焼け対策のビジネス化ーウニの蓄養について

消えかけている海の森を維持・回復させ、豊かな海を次世代に残すために立ち上がったISOP(=Ishinomaki Save the Ocean Project)。2020年4月から始まったこのプロジェクトは、海藻が減っていく「磯焼け」を食い止めるべく、ウニ駆除や海中造林といった活動を続け、海藻を増やす取り組みをしてきました。

この活動を長期的に実施していくためには、活動資金を集めることも必要です。そこで私たちは今年度、磯焼け対策のビジネス化にも取り組んできました。この記事では2021年4月から12月に行ったウニの蓄養の動きをご紹介します。

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ISOPでは、ウニの駆除を定期的に行ってきました。そうして駆除したウニの活用の一環として、産官学(民間企業、行政、大学)の連携で取り組む蓄養実験にも協力しています。蓄養とは、海で獲れた生き物を生け簀で一定期間飼育すること。宮城大学の協力のもと、宮城大学と宮城県石巻市・田代島にウニを飼育する水槽を設置し、約2000個のウニを飼育しています。

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飼育している水槽の様子

この取り組みもまた、磯焼け対策のビジネス化につながっています。その理由を一言で言うと、「邪魔者だったウニが売り物に変わる可能性がある」からです。やっていることは移植(前記事参照)とほぼ同じこと。

磯焼けが発生している海域では、海藻が減っているため、ウニの餌が足りず、中身が空っぽなウニが増えています。中身がスカスカでは売り物にすることができません。

そこで、ISOPは大学と連携することで、駆除したウニを陸上の水槽で飼育し、商品化することに挑戦しています。人工的に用意した環境での蓄養実験が成功すれば、ウニを好きなタイミングで出荷できるようになり、地域の新しいビジネスにもなりえます。

実はこの、「ウニを好きなタイミングで出荷できる」というのも、地元の漁業者にとっては重要な要素。繁忙期と閑散期が存在する漁師にとって、閑散期の仕事はとても貴重なものです。ウニの蓄養と販売が地元漁業者の閑散期のビジネスとして定着すれば、彼らが磯焼け対策として、ウニ駆除を続けるモチベーションにもつながります。

地域の経済を回すことで、ウニ駆除を継続的に行うことが可能となるのです。

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そんな可能性を秘めた蓄養ですが、まだ実験段階であり、事業化しているわけではりません。2021年7月から始まり、水槽内の温度や水質の関係でウニが死んでしまうこともありましたが、2022年3月現在では、約1000個のウニが育っています。

「蓄養が事業として成立するためにどのくらいのウニが必要か」、「どうしたら身入りがよくなるか」、「どうしたら味がよくなるか」などいまだ多くの検証すべきことが残っているため、来年以降も実験が続きます。

ISOPでは、今後も磯焼け対策の取り組みを続け、情報を発信していきます。
海の多様性を守るために、わたしたちに何ができるのか?これからも伝えていきます。


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