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宮野さんのはじめに、宮野さんの最後に
文章を生業とする人間が、人生の最後に書く文章とはどんなものだろう。
本の「おわりに」ではなく、「はじめに」が最後に手がけた文章になる研究者はどれだけいるだろう。
多くの方が10便に出る宮野さんの言葉を、彼女が最後に残した言葉として取り上げている。
でも時系列で考えると、彼女が最後に書いたのは10便ではない。彼女が最後に書いたのは、書簡の「はじめに」である。
偶然と運命を通じて、他者と生きる始
あなたが「変わる」時はいつか?
「急に具合が悪くなる」は、思った以上に多くの皆さんの手に届き、発売3ヶ月にしてすでに5刷が決定しました。ありがとうございます。
圧倒的に引用されているのは、4便で宮野さんが「私は不運ではあるが不幸ではない」と宣言する箇所、最終便で宮野さんが、偶然と運命を通じて世界を愛すると綴っている箇所です。
自分ではいかんともし難い理不尽に見舞われても、これは不運ではあるが不幸ではないと、その状況に力強く抗
「生きることの不安」を問い直すー哲学者・古田徹也さんとのトークイベント(2020.1.30)
私たちの生活には大小さまざまな不安が存在します。そこには、職場で体型のことをからかわれるとか、隣の席のあの人となんとなく上手くいかないとかいった生活の中で生じる種々の違和感から、就職ができず生活が立ち行かなくなるかもしれないとか、病気がどんどん悪化してこのままだと死んでしまうかもしれないとかいった、人生の根幹を揺るがしうる恐怖まで様々なものが含まれます。
私たちはそのような不安を、社会の中で賞
天神ー名古屋ー神楽坂
宮野さんにできるだけ長く書く時間を手渡すこと、私が先に死なないこと。
のちに『急に具合が悪くなる』と名付けられる書簡のやり取りが中盤に入った頃、ここだけは果たそうと心に決めていたことだった。
元気な人間が「死なないこと」を意識するなんて変な話だけど、この書簡の最悪のシナリオは、私が先に死んで、宮野さんが残されることで、なぜかそれだけ絶対にあってはならないと思ってた。といっても、気をつけることと
『急に具合が悪くなる』を読んで口をつぐまないで欲しい
とうとう発売が開始された『急に具合が悪くなる』。
すでに何人かの方から感想が届いています。
ありがとうございます!
ただ、その中で(すでに)ちょっと気になっているのは、「言葉がない」、「私ごときに…」、「何をいっても失礼になる」といった、この本を前にして自分は何か言える立場にないと口をつぐむ人たちの姿。
確かにこの本は「死」を扱っており、しかも著者の一人がすでにいないという状況です。こういう
“逆張りの問い”と信頼
問いかけること
これは、人類学者が担う大事な仕事の一つであると私は考えています。
でも、その「問い」は自分の好奇心を埋めるためにあるのではない。
その「問いかけ」は、相手の奥底に眠る、しかし、それこそが相手の生活の根幹を支える何かに通ずる、形式と中身を持つ必要があり、そんな問いが投じられた時、相手も、そして自分も互いを発見する。
「良い問い」とはそういうものであると私は考えています。
私
編集者・江坂祐輔という勇気
9月下旬に哲学者・宮野真生子さんとの20通の往復書簡、『急に具合が悪くなる』が晶文社より出版されます。前々回のnoteで私は、この本が異質な理由の一つを「著者二人が物語を駆け抜ける書であるから」と書きました。
おそらく本を書いたことのある人であればあるほど、この言葉に疑いを持ったと思います。そんなことでできるはずはない、そんなのは売り文句に過ぎず、実際は作られたプロットがあったに違いないと。
哲学者・宮野真生子の大勝負
9月下旬に発売される哲学者・宮野真生子さんとの20通の往復書簡である『急に具合が悪くなる』(晶文社)。
通常、共著の場合、著者の順番はあいうえお順ですが、本書において宮野さんの名前がはじめに来ているのは訳があります。
それは本書が、文字通り命をかけた、宮野さんの大勝負だからです。
この本の中で宮野さんは自分がどんな病気にかかり、どんな闘病生活を送り、そして今自分の身体がどんな状態であるのかと
『急に具合が悪くなる』〜著者二人が物語を駆け抜けた書
9月下旬に哲学者・宮野真生子さんとの20通の往復書簡、『急に具合が悪くなる』が晶文社より出版されます。
著者が言うのも何ですが、これはずいぶんと風変わりな本です。
とりあえず私は、このような本を今まで読んだことがありません。
なぜならこれは著者二人が物語を駆け抜ける書だからです。
ノンフィクションは、過去にあったことをもう一度再構成する形で描かれます。作品の中では、現在から未来に時間が流れる