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春のたそがれ

潜水服のような春のたそがれです
僕はしだいに重い空気の沼を沈んで
わずかにくゆらせている一本のパイプ

おびただしい光の群れはどこへ行ったのでしょう
風も死に
歌も死に
ああ 僕の口臭を封じこめるこの沈鬱な季節の底に
溢れひたす不確かなイオンを感じながら
それでも 創生の層を求めて
神様 ──── あなたのように僕も立ちつくしてしまうのです

     初出不明
     詩集『海がわたしをつつむ時』(鳳鳴出版*1971年)

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