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海 に

海 だれに聞いたらよい
海 おまえはわたしの墓場だ と
海 おまえはわたしの恋人だ と
海 おまえはわたしにかかわりがない と

海 だれに聞いたらよい
海 わたしの胸の 悲しみのしわ
海 わたしの秘めた心のながれ
海 わたしの奥にひろがる 暗やみ

海 だれもまわりにはいないから
海 その傷を わたしに見せてはくれぬか
海 神々の死骸をきつとかくしたおまえ
海 愛をふみぬいたその足の裏をわたしは 見たい

海 だれに聞いたらよい 忘れた怒り
海 だれに聞いたらよい 死なない怒り
海 わたしの知恵の果てを
海 ひややかにみつめている 妖婆

     詩誌『駱駝』59号(1958年5月)

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