![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146532793/rectangle_large_type_2_4ba6d70835116a0bd48e6487d9441b96.jpeg?width=1200)
海 に
海 だれに聞いたらよい
海 おまえはわたしの墓場だ と
海 おまえはわたしの恋人だ と
海 おまえはわたしにかかわりがない と
海 だれに聞いたらよい
海 わたしの胸の 悲しみのしわ
海 わたしの秘めた心のながれ
海 わたしの奥にひろがる 暗やみ
海 だれもまわりにはいないから
海 その傷を わたしに見せてはくれぬか
海 神々の死骸をきつとかくしたおまえ
海 愛をふみぬいたその足の裏をわたしは 見たい
海 だれに聞いたらよい 忘れた怒り
海 だれに聞いたらよい 死なない怒り
海 わたしの知恵の果てを
海 ひややかにみつめている 妖婆
詩誌『駱駝』59号(1958年5月)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?