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天路への誘ひ

あじさいのうつろふ色に
なんで嘆きを托し得ようか
花々も生を閉ぢては
なきがらに続く日はない

堅笛フリュートは森の奥から
しなやかなおまえの影の
トレモロをいざなひながら
星空にあちらこちらと

ああ そして ────
憤りは美しいもののために
涙は今日も 流れるにまかさう

希望は高くすこやかであるから
悲しみもみぞれのように
天のあたりでさらさらと雪になるのだ

   初出不明
   詩集『天路への誘ひ』(1948年2月*あけぼの書房)
   礒永秀雄選集(1977年10月*長周新聞社)再録

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復員してから書いた詩を初めてまとめたのが、見出し画像の詩集『天路への誘ひ』です。1948年は立て続けに、詩集『聖玻璃彷徨』と詩集『夜の聖火隊』とあわせて3冊編みます。
ところが古い自分との決別しようと、友人に託した各1冊を除いてこれらの詩集はすべて焼き払ってしまいます。
上記の詩は、焼いてしまわれた詩集のなかの1篇です。

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