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錨をおろせ赤道下

いかりをおろせ 赤道下
南と北とのどまん中
見事なあかねの雲の下に
わが革命の船を止めよ

海は涙の寄るところ
そこは珊瑚のあるところ
もぐるじゅごんのあとを追って
錨を放て 沈めてゆけ

繰出せ さらせ 錨鋼 わが腸
錆びて嚙み合う悲しみの鎖を
おお 灼熱の日の下に
青いしよつぱい水の下に

錨をおろせ 赤道下
どろどろどろどろ船をゆるがし
珊瑚の林に沈んでいつては
天地の語らいをして来ねばならん

     詩誌『駱駝』31号(1954年3月)


この詩は1954年3月1日にビキニ環礁でアメリカが水爆実験をしたことが影響しているのではないでしょうか。南の島の珊瑚の海の底に散っていった戦友のことを思わずにはいられなかったのでしょう。
腸を錨綱に見立て、ジュゴンの視点と重ね合わせ、海底に沈みながら腹の底に響く激しい気持ちを、戦友と語らいたい思いがこめられているようです。

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