12/6 【G】Googleスプシで発掘したコンテスト入賞小説のプロットを供養する -7日目
多分私がこれまで個人でいただいた中で、一番大きな賞がcakes クリエイターコンテスト2020での入賞だった。
産休中だったか産休があけてすぐだったか忘れたけれど、ちょうど祖母が亡くなった。生まれたばかりの我が子と、亡くなった祖母と、その間にいる自分という「世代」を強く感じた時期に書いた小説「僕とおばあの49日間納骨チャレンジ」で賞をいただいたのは、大変光栄だった。
連載のお話もいただき、編集の方とも打ち合わせしたのだけど、元々1話目だけの短編のつもりだったこと、産休からの復帰を控えたタイミングだったこと、コロナ禍で情勢に不安があったこと、なにより連載するだけの覚悟がなかったこともあって、めちゃくちゃ尻込みしてしまい、連載の話はたち消えた。
そして現在、未完のまま、4年くらい放置している状況。
多分この先も、続きはちょっと書けそうにない。
私の小説の書き方は、たとえばミニチュアの模型を作り込んだ後で、その世界観が伝わるように、演出しながら映画を撮るような、世界をものすごく理解してから紐解くように書くタイプだ。それなので、一度気持ちが途切れて世界とのリンクが切れるとなかなか続きを書くのが難しいと感じる。
遅筆な作家さんが「あの人気シリーズの続きを書けば絶対に売れるのに、別のシリーズを始めてしまって残念」などと言われてるのを見かけることがあるが、「あのシリーズ」を書く気持ちを取り戻すのはなかなかに難しいからだと思う。
だけれども。
一応最後まで、プロットは考えていたので供養も兼ねてこの機に載せようと思う。ちなみに初期プロットと、編集さんとの打ち合わせの後に改変した連載版プロットがある。
興味がある方はよかったら見てみてください。
まず連載用のプロットの話から。
亡くなった祖母の遺言がyoutube動画で残っていた冒頭から、謎のVtuberの女の子を絡めて謎解きだとかSNSの匿名性だとかを散りばめた内容にした。とうのも初期プロットだとちょっと地味かな〜という編集さんのアドバイスが確かにそうだと思ったからだ。けれども、連載用に用意していた内容は今になってみると取材不足だし流行りものを取り入れようとしたはいいものの上っ面を撫でているだけだったなぁと思う。
編集さんからは、「亡くなった祖母が実はYoutuberだったという設定が新しくて面白い」と言っていただいた。
一方で、「エジプトに行くだけというのはゴールが簡単すぎないか?他にもっと難しいゴール……例えば南極を目指すとか……」と、アドバイスをいただいた。
けれど、ゴールを難しくすることについてあまり魅力を感じなくて。
それよりは、「面白い」と言ってもらっている「ネットの新しいメディア」のあれこれをもっと取り入れてやろうと欲張ったのがいけなかった。
そもそも「新しい」と言っていただいていたおばあちゃんがYoutuberだった設定も、2024年の現在ではもはやありふれている。X(Twitter)などで、おじいちゃん・おばあちゃんがYoutuberやVtuberをやる話もはちらほら見かけるようになった。
それ以上に、今となっては、そもそも、それは書きたい部分ではなかったなと反省する。
初期プロットについて。
身の回りにしか興味がない無気力な大学生って、実は他人から馬鹿だと思われるのが一番怖いんだと思っている。
なので、無知を晒す怖さを克服して一回り強くなるという過程が書きたかった。
エジプトは日本と国交のある国なので渡航するのにそんなに苦労するわけでは無いけれど、初めての海外旅行としては難易度が高いと思う。それが遺骨と一緒だとさらに難易度は高いと思ったのだ。
おそらく適切な人に適切な質問で聞けば、一から十まで丁寧に教えてもらうことはできるのだけれど、何も周りがわからないと、誰が適切な人かもわからない。
聞く人を間違えて怒られたり、聞き方を失敗して迷惑がられたり、困惑されたり、怒られたりしながら成長するのが面白いんじゃないかと書き始めた物語だった。
こうやって書いていたら、やっぱり最後まで書けばよかったかなとも思ったけど、いかんせん気持ちが切れてしまったのでなかなか難しい。
そういえば、今年の夏休みに小4息子の宿題で、「ノンフィクションの本を1冊読む」という課題が出たのだけれど、そこで買った本がまさにそれをやっていて、「ああ、こういうのが書きたかったな」と思ったのでそれも紹介する。
大学生の筆者が、本当にゼロからトースターを作る……たとえばプラスチックのカバーを作るために石油会社に電話して重油をちょっと分けてもらえないか聞くとか、鉱山に行って鉄鉱石を掘らせてもらうとか……という突拍子も無い内容だ。
とくに面白いのが一般的な企業に電話やメールで問い合わせた内容を文字に起こしているところだった。
「ちょっとバケツ一杯重油を分けてもらえないですかね?」
「なるほど……、えーと、いいですか。重油というのはとても扱いが難しいものなんです……」
若者からのめちゃくちゃな問い合わせに、一般的な社会人がすごく丁寧に対応しているのが面白い。
目的が明瞭であれば、その手順に少し難があっても、有識者が目的を達する手助けをしてくれる場合がある。それを若いうちに知れることは、実はすごく大事だと思う。社会を恐れず、夢を実現できる力になる。
そういう話、やっぱり書きたいかもしれない。
僕とおばあの〜ではないにしても、何かまた新しい創作小説ででも描いていければと思う。
※原案としてクレジットいただければ、プロットは使ってなにか書いてもらってもいいです。一報いただきたいです。