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Creepypasta私家訳『ソンブレロを被った恐竜』(原題“Sombrero Wearing Dinosaur”)

作品紹介

Sombrero Wearing Dinosaurを訳しました。Creepypasta Wikiでは「Pasta of the Month」に選ばれた作品です。 ソンブレロを被った愉快な恐竜さんが出てきます。

ちなみに、チェッカーとは黒と赤の駒を取り合うボードゲームのことらしいです。

原作: Sombrero Wearing Dinosaur (Creepypasta Wiki、oldid=1463702)
原著者: The Wizard Experience Starring Meds 2.0
翻訳: 閉途 (Tojito)
ライセンス: CC BY-SA 4.0


ソンブレロを被った恐竜


真夜中、ビリーは目を覚ました。いつもの悪夢のせいだ。しかし、今回はいつもの悪夢よりもひどかった。死ぬのを見るのではなく、殺す側に回っていたのだ。冷たい汗が額を伝って落ち、両目を見開いた。数時間も両目を閉じずにいたような感覚だ。

悪夢は何度も頭の中で再生された。まるで誰かが巻き戻しボタンを押して、繰り返し最初から悪夢を流しているかのようだ。ビリーの両手は熊手のように凍り付いたように感じられ、震え、何かを掴もうとしていた。両目はただぼんやりと両脚を覆う毛布を見つめた。悪夢がゆっくりと心から消えていくと、ビリーは頭をゆっくりと上げ、そしてそのベッドの前に見た……大きくて……黄色の……ティラノサウルスの姿を。ティラノサウルスは、とても大きいが体の大きさからしてきつそうなソンブレロのようなものを被っていた。その恐竜はティラノサウルスにしてはかなり小さかったが、それでも大きかった。頭は天井に接触し、尻尾は床の上でその恐竜の周りを取り巻いていた。部屋に収まるには大きすぎたのだ。

ビリーは叫ぼうとしたが、突然に何かがハンマーのようにビリーの頭を打ち付けた。本物のハンマーだったら、ビリーの頭は粉々に吹っ飛ばされていただろう。なんてこった、壁が血や脳味噌、頭部の破片に塗れているイメージが既に心に浮かんでいた。そのイメージは数秒間残ったが、心は恐竜に焦点を戻した。

あの恐竜は絶対に前に会ったことがある。

恐竜は身を乗り出した。ビリーの顔には恐竜の暖かい息が感じられた。ビリーはソンブレロを細かく把握できるようになった。薄茶色のフェルトでできており、側面とてっぺんは深紅と白の花柄で、白い部分には金ぴかのラメがあった。

恐竜は丸々一分間ビリーを見つめた。ビリーは自分が恐竜に恐怖を抱いていないだけでなく、安心感のようなものを感じていることに驚いた。恐竜は口を開けて物を言った。奇妙なことに口は恐竜が話すようには動いておらず、誰かが恐竜の中にいて、内側から話しかけているようだった。

「大丈夫かい、ダニー?」

恐竜は低い声で聞いてきた。奇妙なことに他の何物でもなく人間の声のように聞こえた。

ダニーはゆっくりと頷いた。ダニーは膝を胸の方に寄せて、腕で膝を抱え、助けようとしてくれている恐竜をじっと眺めた。恐竜は頭を上げて、それからゆっくりとダニーのナイトテーブルの上にあるディジタル時計を見た。時計の画面には6:25という数字が輝いていた。恐竜は頭をダニーの方に向けて、再び話しかけた。

「また悪夢かい? 寝た方がいいよ、テディ」

テディはすぐに首を横に振った。ゆっくりと脚を広げて言った。

「悪夢が怖いんだ……」

すすり泣きのような言い方だった。恐竜は部屋を見まわした。尻尾がナイトテーブルの脚の1本にバタンと打ち付けて、ナイトテーブルをひっくり返した。しかし、少年も恐竜も気にせず、隣の部屋で眠る両親でさえも物音に気付かなかった。

「名前はなんていうの?」

テディがそう聞いたとき、恐竜はテディの棚の上に置かれたおもちゃを見ていた。恐竜はぼんやりと棚の上のテディベアを見つめながら言った。

「覚えていないのかな? 僕たちは親友だったんだよ、スティーブ……」

スティーブは瞬きした。どんな恐竜とも友達になった記憶はない。しかし、ジェリーと一緒にいてそんな気分がするのはそういうことかもしれない……そうだ、ジェリーだ。スティーブはやっと思い出した。

「ジェリー、でしょ?」

スティーブはそう聞いて、ベッドの反対端にまでゆっくりと這っていった。恐竜は見渡すと、爬虫類の唇に笑みを浮かべて頷いた。それから、テディベアを抱えて振り返った。テディベアにはジョシュアという名前が書いてあった。

「これは君のだよね?」

ジェリーはジョシュアにテディベアを渡した。ジョシュアはベッドから跳び下りると、恐竜の尻尾で躓きかけた。バランスを取り直すと、頷いてテディベアを受け取った。テディベアを抱いて押しつぶした。

「遊ぼうよ」

ジョシュアはジェリーに優しく微笑みかけた。恐竜は笑顔を返して頷いた。2人は床に座ってジョシュアのおもちゃで遊んだ。ジョシュアはテディベア役で、ジェリーはジャケットを着て右ポケットにナイフを入れた男の役。2人は冗談を言って笑いながら遊んだ。

それから、2人はチェッカーで遊んだ。ジョシュアは黒の駒、ジェリーは赤の駒。

それから、2人は泥棒ごっこで遊んだ。ジョシュアは警官、ジェリーは泥棒。

それから、2人は消防士ごっこで遊んだ。ジョシュアは消防士で、ジェリーはナイフ。

それから、2人はスーパーヒーローごっこで遊んだ。ジョシュアはスーパーヒーローで、ジェリーは複数の刺し傷。

それから、2人は騎士の龍退治ごっこで遊んだ。ジョシュアは銃、ジェリーは頭蓋骨を貫く銃弾。

それから、2人はチェッカーで遊んだ。スーザンは死体、ジェリーは父親。

最後に、2人はスーザンの寝室でかくれんぼで遊んだ。スーザンは罪、ジェリーは破れたガラス。

2人はスーザンが学校へ行く準備をする時間になるまで遊び続けた。ジェリーはスーザンの両親の寝室のドアが開く音と、誰かが自分の寝室の方へ歩いてくる足音を聞いた。スーザンは焦った。部屋はめちゃくちゃで、おもちゃは床中を散らばり、そこには恐竜がいる。スーザンはすぐに恐竜の方へ向いて、そして……

ジェリーはいなくなっていた……。

ビリーの母親がドアを開けると、床の上のおもちゃを見て眉をひそめた。大目玉を食らって朝食を食べた後、ビリーは学校へ行く準備をした。ビリーは玄関の前に立ち、母親がビリーの部屋からお気に入りのドナルドダックの冬用帽子を持ってくるのを待っていた。母親は帽子を持ってすぐに階段を駆け下りてきた。ドアを開けて、帽子をビリーに手渡した。すぐにバスが到着するところだった。外では、前庭の芝生が雪が降り積もって真っ白に染まっていた。一部が黄色の雪になっていて、父親が雪で覆い隠そうとしていた。

「今朝、またクソッタレのルーカスの野郎が酔って芝生に小便しやがった」

父親が母親に怒りと疲労で怒鳴りながらそう言った。

ビリーが歩いて出ようとすると、母親が立ち塞がった。母親は膝をついて、ビリーの頬に軽くキスをした。

「ごめんね叱っちゃって。でも、自分の部屋をあんなに散らかしちゃ駄目でしょ……」

母親はビリーの目をじっと見つめた。

「厳しくし過ぎたくなかったの。また悪夢を見たの?」

母親は心配しながら言った。

ビリーは首を横に振った。なんて嘘吐き。

一方で、父親はルーカスの野郎が次に立ち小便をしたら、頭をショベルで何度も殴り、黒いキャンバスに描いた絵のように白雪に脳味噌をばら撒いてやって、それから奴の死体の上に座って煙草を一服してやると考えていた。そのイメージが頭を過ぎり、顔に少し笑みが浮かんだ。といっても、ただの思い付きだ。

ビリーはバスに乗り、その日はいつもと同じように展開していった。

バスは車線を走った。空には雲一つなく、太陽が眩しく輝き、そのせいで雪で目が潰れかねなかった。バスはビリーの家の前に停まった。ビリーはバスから慎重に跳び下りた。足を踏み外して転ばないようにした。それから、家に向かい、戸口の上り段のそばで足を止め、ドアベルを鳴らした。母親がドアを開けて、歩み入ろうとするビリーに微笑みかけた。

巻き戻し

バスは車線を走った。空には一塊の雲があったが、太陽は眩しく輝き、そのせいで雪で目が潰れかねなかった。バスはビリーの家の前に停まった。ビリーはバスから慎重に跳び下りた。足を踏み外して転んで顔面を地面に打ちつけないようにした。それから、家に向かい、戸口の上り段のそばで足を止め、ドアベルを鳴らした。母親がドアを開けて、歩み入ろうとするビリーをじっと見つめた。

巻き戻し

バスは車線を走った。空には沢山の雲があったが、太陽は眩しく輝き、そのせいで雪で目が潰れかねなかった。バスはビリーの家の前に停まった。ビリーはバスから慎重に跳び下りた。足を踏み外して転んで顔面を地面に打ちつけて、綺麗な歩道に血塗れにしないようにした。それから、家に向かった。戸口の上り段のそばで足を止め、ドアベルを鳴らした。母親がドアを開けて、歩み入ろうとするビリーに眉をひそめた。

巻き戻し

バスは車線を走った。空は曇っており、太陽は見えなかった。バスはビリーの家の前に停まった。ビリーはバスから慎重に跳び下りた。足を踏み外して転んで顔面を地面に打ちつけて、頭蓋骨を骨折して綺麗な歩道を脳味噌で汚さないようにした。それから、家に向かった。戸口の上り段のそばで足を止め、ドアベルを鳴らしたが、返事がなかった……。もう一度鳴らしたが……返事はなかった。それから、ビリーはドアは開いていることに気付いた。2人の警官が中にいて、台所の床の上に横たわる2人の死体を見下ろしていた。

ジミーは2人の死体をじっと見つめた。2人の顔は見えなかったが、見たくなかった。もしあれが自分の……

「すまないが……君がジミーか?」

警官の1人がドアのそばにいたスティーブに気付いた。

スティーブはとてもゆっくりと頷いた。

警官は溜息をつき、それからこう言った。

「可哀想に……お巡りさんたちは誰がこんなことをしたのか見つけようとしているんだ……分かるかい?」

警官はジョシュアの目を見つめて、肩に腕を回してジョシュアを慰めようとしてた。もう1人の警官が頭をかきながら、遺体を調べつつこう言った。

「まるで恐竜がやったみたいだな……」

これは最高だ。

巻き戻し

これは最高だ。

巻き戻し

最悪だこんなの飲み物がほしい。

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