『果つる底なき』

池井戸潤
講談社文庫 2001年

この物語も、他の池井戸さんの作品と同じく「この先どうなるのか」を気になり通しで読み通した。
池井戸さんの著作は、私は銀行が舞台の小説しか読んだことがない。全てそうなのだろうか。それにしても、同じ業界を元にこれだけのパターンの物語を作り出せることに感心する。それだけ、ネタが多い業界ということなのだろうか…事件ものの。

私は銀行業界に全く縁が無いので、銀行内部ってこういう感じなのかと思いながら読んでいる。派閥が、学閥が、というのは、私のような者のところにも噂は流れてくるのだけど、よくこんな世界で生きていこうと思うなあ。私には無理だ。魑魅魍魎がいる世界は苦手だ。
そういえば、昔働いていた会社に、今でいうFIREを目指す元銀行員の若者がいた。結構変わった人で、その自由な感じが私は好きだったけど、あれでは早々に銀行を辞めるわけだなと改めて思う。

話の中で、上場企業でも決算を粉飾していてデータをこねくり回して好きなように数字を作れる、みたいなことが書いてあった。ある程度は想像できるが、実際に好きなように作り上げられるのだろうか。だとしたら、経済に大きな影響を与える株式市場とか、単なる架空の数字に踊っているだけだということになるのか。だとしたらそんなものに大打撃を受ける社会や家計というのは何なのか。なんだかなあ。

そもそも、貨幣というのが、何と言ったか【みんなで共通の価値があると見なした単なる紙】なんだから、架空の物を流通しながら生きているのよね私たち。等価交換で買えるものが多いから大事ではあるけど、踊らされすぎないようにしないとね。


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