いそじばあの読書記録

いそじばあです。

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最近の記事

『リスクを生きる』

内田樹 岩田健太郎 2022年 朝日新聞出版 岩田健太郎さんは、新型コロナウイルスが流行し出した頃有名になった客船乗り込みの人だった。センセーショナルな感じで報道されていたし、行動の是非は素人には分からなかったけれども、この本を読んでなぜそういう行動をしたかは理解できた気がする。 専門家は言い切れない、ということが書いてあって、本当にそうだよなと思う。知れば知るほど、決めつけることは難しくなる。だっていろいろな例外があることを知るし、条件が変われば結果も変わるかもしれない

    • 『同調圧力のトリセツ』

      鴻上尚史 中野信子 2022年 小学館 「日本は同調圧力の強い国」とよく言われる。私も、そう思う。 私は同調「圧力」を強く感じたことはそれほど無いのだけど、女子グループからいつも外れてしまう(意図してるわけではないからそれなりに悩みではあった)とか、自分の感じ方考え方はメジャーではないようだと感じる場面が日常的にあり、「なぜほかの人たちはそんなに似たような言動になるのだろうか、自分の意見を言わないのだろうか」というのは学生のころからの謎だった。 今回の本は、このところ人生相

      • 『護られなかった者たちへ』

        中山七里 2021年 8月 職場に、この著者の本が何冊か置いてあったんですよ。バラバラの著者の本が何冊かある中で同じ著者の本が数冊あるのが気になって、「読んだことないけどどんな内容なのかな」と気にしていたところ図書館で見かけたので借りてみた。 そういう感じでこの著者の本を前に1冊読んでみて、面白くて、「女性が書いたみたいじゃない本だな」と思っていたら、この『護られなかった~』の最後に対談の写真がついていて、男性で、納得した。 今のご時世で男だの女だの言っていたらアレなんだ

        • 『家族シアター』

          辻村深月 2018年 講談社 すれ違ったり誤解したりしていた家族の、グッドエンドな話が詰まった本。 なんだかんだで最後はほんわかしていて、好き。 何より心にしみるのは、よく出てくる「KYな家族」が自分に似ていること。 我が道を行って、回りに合わせない(合わせられない)。友達が少ない。 KYではない主人公の気持ちよりも、そっちのほうに気持をとられて切なくなる。 社会に出て何十年もたつけど、なんで自分があんなに(こんなに)人からずれているのかなあと時々考える。 皆、なんだ

          『署長シンドローム』

          今野敏 2023年 講談社 隠蔽捜査シリーズは好きで、ここまでのは全部読んでいる。何が好きって、竜崎伸也の筋の通し方。ここまで筋を通して最終的にはチャンチャンで終わるってなかなか無いよなあと思いながら、でも話にそこまで無理があるわけでもなく楽しく読んでいた。 続編出ないのかなあとたまに思いながら見ていたので、この本は隠蔽捜査シリーズとはなっていないけれどもスピンアウト?的な感じだったので読んでみた。 表紙に女性警察官が描いてあるし、帯にもそう書いてあったし、それがどんな話

          『署長シンドローム』

          『ハヤブサ消防団』

          池井戸潤 2022年 集英社 まだ読んでいない本を探していて図書館で何度か目にしたが、なんとなく自分の趣味ではないかなあという気がして通り過ぎていた。 今回、何となく読む気になって読んでみて、思っていたのとだいぶ違う流れでかなり面白かった。 雰囲気としては、最近ドラマ放映されていた木村拓哉さん主演の『Believe』に近いと思う。舞台は田舎設定で田舎ならではの文化や人付き合いもあったりで『Believe』とはだいぶ違う。何が近いのかというと、登場人物が怪しかったり怪しくな

          『ハヤブサ消防団』

          『おそろし』三島屋変調百物語事始

          宮部みゆき 2012年 角川文庫 宮部みゆきさんは、私的【気持ちが重い作家さん】の一人。 自分の気持ちが重くなるというより、いやそれも含むんだけど、記述の仕方がものすごく情が溢れていてその情が深くて多くて重く感じる、ということ。あとは、乙川優三郎さんとか。 何年も前、私が読書好きの親に乙川さんの本を勧めた際に「そういう重いのは年をとるとしんどい」と話していてそんなものかと思っていたけど、それが分かるようになってきたということは私も年をとってきたということだな。今の世の中だ

          『おそろし』三島屋変調百物語事始

          『教誨』

          柚月裕子 2022年 小学館 単行本を選ぶときには、本の帯を参考にする。どんな内容か、参考にしたいので。今回の帯には書店員さんの言葉がいくつか載っていて『ラストに驚愕・慟哭』みたいな感じが多く、著者の言葉からもかなり重い内容なんだなと思い、用心しながら読み進めた。なんせ、重いのはもうしんどい年齢なので、、、でも読みたい気はまだするので。 結果的に、用心していたせいかそこまでズシンとはこなかった。似たタイプの話でズシンという意味では、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』や、角田

          『イスタンブールで青に溺れる』発達障害者の世界周航記

          横道誠 文藝春秋 2022年 この本の存在を知ったのは、確か新聞のどこかに書いてあったからだ。興味を持ってすぐにメモして、図書館に行った時に調べたが、すでに借りている人がいて「また今度」と思っているうちにそのままになっていた。 そうしたら、ある時図書館に行ったらたまたま配架してあって、「おお!」と思って早速借りた。 そもそもの知識としては【著者が発達障害の方で、海外を旅行した時の記録】という認識だけだったので、読んでみて予想外で面白かった。 著者は京都大学卒。知的レベル

          『イスタンブールで青に溺れる』発達障害者の世界周航記

          『ツリーハウス』

          角田光代 文春文庫 2013年 この著書の本はエッセイを含め何冊か読んでいるはず。どの本も読み心地がよくいい印象を持っているが、内容をしっかりと覚えているのは『八日目の蝉』。でも『八日目の蝉』は、子どもを持つ身としては切なすぎて、しばらくは読めないなあと思っていた。 そんな中で、文庫本の裏に書いてあるあらすじから選んだのがこの本。 そのあらすじと、出だしの内容から、こんなことでこの先どんな話が展開するんだろうと不思議だった。章ごとでもなく、気分的にはいきなり変わる話し手、

          『小さいときから考えてきたこと』

          黒柳徹子 新潮文庫 平成17年3刷 『窓際のトットちゃん』の第2弾が出たという話を聞いて、気になっていた。何十年も昔に読んだ第1弾の内容は詳しく覚えていないのだけど、もちろん粗筋は覚えていて、周囲と同じようにできない今でいうADHDやLDだったらしい著者がいい教育者に出会ってまっすぐに成長していく話。 気になっていたらこの本が目について、著者が小さい頃にどのように考えていたのか、どのように育ってきたのか興味があったので読んでみた。 著者は、結構いいご家庭に生まれたのだなあ

          『小さいときから考えてきたこと』

          『魔王』

          伊坂幸太郎 講談社文庫 2023 (新装版) だいぶ前に読んだことがあったが、内容を忘れてしまっていた(私はこれがよくあるので、この読書記録をつけることにしたのだ)のと、新装版の表紙が良かったので、また読んでみることにした。 この著者の本は、『死神の精度』の印象が良かった覚えがある。他の本も面白いのだけど、軽妙な語りが私には軽妙すぎる感じがしてある程度読んでからその後は読んでいなかった。 『魔王』はどうだったかな、、、と思いながら読んだところ、軽妙さがそれほど気になること

          『どう生きるかつらかったときの話をしよう』

          野口聡一 アスコム 2023年 TVでにこやかに話されているのを見ていたし、「宇宙飛行士なんて超選ばれた人しかできないことをしていた人でも、こんな心境になるんだなあ」と思って、読んでみた。 だってねえ、しばらく前に一般から募集されて話題になった宇宙飛行士も、選ばれたのは学歴も職歴もとびぬけた人で、「やっぱりこう人が選ばれるものなんだな」と再認識したところだもの。 才能もあって、ほとんどの人ができない素晴らしい経験をして、それでも生き方に迷うってどういうことよ?でしょ。

          『どう生きるかつらかったときの話をしよう』

          『キリンの保育園』新・動物記1

          齋藤美保 京都大学学術出版会 2021年 人類学とかフィールドワークとか興味があって、でも残念ながら自分で関わるにはもう遅いしそこまでの情熱もたぶん私は持てないので、たまに本で読むくらいにしている。 この本については、新聞の記事で知った。どうやらシリーズものらしいのだけど、読めたのはとりあえずこの1冊のみ。 読んでみると、著者はまだまだ若いドクターらしく、最後のほうには「今後どうするか、どうしたいか」ということも書いてあってほほえましかった。 著者がキリンの研究を始めた

          『キリンの保育園』新・動物記1

          『火定』

          澤田瞳子 PHP 2017年 著者が何かの賞をとられた時にニュースを見て、面白い読み方の名前だなと印象に残っていた。今回は珍しくジャケ借り、というか、表紙がと題名が目について帯を読んで「面白そうだな」と思って著者を見たらこの方だったので、「読んでみよう」と思った次第。 全体の感想としては、とにかく読みやすい。 帯に【天平】【藤原四兄弟】とあったものの、平安くらいかなと思って読み始めたら平安よりも前の奈良時代だった。これくらいの時代は人の名前も馴染みが無さすぎる&長いので頭

          『FACTFULNESS』

          著者:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 訳者:上杉周作、関美和 日経BP 2020年33刷 話題になった時から気になっていたけれどもだいぶ経ってから途中まで読んで、図書館の返却期日が来てしまったので返して、そしてまたしばらく経ってから借りて読んだ。 なんで、1回目読むのにそんなに時間かかったかな?と不思議なくらい、分厚いけれども読みやすい内容。メイン著者のハンスが剣飲み芸人になろうとした話とか、今だから言えるようになった間違った判断の