ぶらぶらドラマ「無脳シリーズ」第14話〜ビールとマフラーと寒波、また、古着屋。〜

お久しぶりです!現在タバコをやめているので、たぶん文章が錯乱しています!!また更新頻度高めっぞ!!!


  終わらせ方がわからなかった。適当に右手を振って、持ってた缶ビールの残りがピチャピチャ鳴って、それに気づいた君は、一瞬だけとても悲しい顔をして、俺の方へは振り返らなかった。


  大阪。心斎橋の、アメ村食堂の向かいの古着屋で、色付きの丸メガネを見ていた。入った瞬間から古着屋特有のツンとした匂いと、暖色のあかりが特徴的なその店は、人が五人も入れば狭く感じるようなつくりで、それでいてリングやピンズがガラスケースの上に直においてあったりするものだから、いつもヒヤヒヤする。無愛想な店主が一言、
「何かお探しですか」
と低い声でこちらを一瞥し、
「ああ、いや」
と、うやむやな鳴き声を発しておく。
  柄シャツ。かわいいのがあった、と思っても、大抵そういうのは高いか、生地が微妙なのが多い。ガラシャツ。ああ、気に入ったものも、そうでないものも、何にも気にせず全部買えたらいいのに。服なんて必需品なのだから、十円くらいで買えるようになればいいのに。衣食住に当てはまるものが全て十円になったら、世界中の人たちがどれほど喜ぶだろう。なんて、最高に頭の悪いわけのわからないことを考えながら、コーデュロイのベージュのパンツを触っていると、妙にポケットがごわついていた。
「ん?」
  探ってみると、キャンパスノートに書かれた手紙が入っていた。

<2021年12月11日  12時30分
ビレバンの前で待ってる。だから何も言わないで、ただ来てくれるだけでいい。それでもうおしまいにしよう。
ミナコ>

  随分下手くそな文字だった。きっと気取ったカップルが、気取った別れ方をしたいがために手の込んだことをしたのだ。日付と時間的に、まだミナコたちはビレバンの前にいるかもしれない。俺は手紙をポケットに戻して店を出た。

  ビレバンの前に着いても、若いのに白い杖を持った女性がいるだけだった。なんだ、もう別れ話は終わったのか。それともこれからなのか。隣のファミマでビールを買って、少し様子を見ていても、一向に修羅場が起きる気配はない。ただひたすらに杖の女性と俺だけがいる。それだけだった。寒いし、これ飲んだらもういいや。そう思って立ち去ろうとした時、

「なんでもっと早く来てくれなかったの!?」

  今にも泣きそうな声が聞こえた。杖の女性だ。

「ねえ、ひろくんでしょ!?そうでしょ!?そうだと言ってよ!!」

  これ、俺に向かって喋ってんのか?もちろん俺はひろくんではないし、この女性のことも知らない。

「私も悪かったの、目が見えない私に初めて優しくしてくれたのはひろくんだったから……」

  この辺りにひろくんらしき人物もいない。どうすればいいどうすればいいんだこのままひろくんを演じ切るしかないのか俺は……!

「ごめんなさい。いっぱい迷惑かけたよね。でももう……さようなら!」

  色々一通りヒロくんへの思いを喋り続けた女性は最後、俺にペコリと頭を下げた。
  終わらせ方がわからなかったから、適当に右手を振って、持ってた缶ビールの残りがピチャピチャ鳴って、それに気づいた女性は、一瞬だけとても悲しい顔をして、俺の方へは振り返らなかった。




 
  

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