ナショナリズムについて考える

前回の話「差別について考える」からの続きではあるけど、前回の記事から先に読まないでも、この記事から読んでもだいじょうぶです。

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さて、8月のアルカシルカの東ヨーロッパツアーから一ヶ月ほど遡る。
僕はバスクという土地に行っていた。
この時は東京で活動する友人のバンド"THE RODEOS"のバスクツアーのドキュメンタリービデオを撮るために同行していた。

※バスクという場所は非常に複雑な土地なので、簡潔に説明をするが、ネットで調べたり人から直接聞いた話を繋ぎ合わせているので事実誤認があるかもしれません。もし、それらに気づいたらどうかご指摘お願いします。

バスクとは、スペインとフランスの二つの国にまたがった地域の事で、そこにはバスク人が住んでおり、フランスともスペインとも異なった独自の言語や文化が存在している。
バスク地方は山や川、海などの資源や立地にも恵まれていた土地だった事もあり、数多くの戦争の被害にあっていた。そして、現在は二つの国に分かれているものの、バスク独立に向けた運動が盛んに行われている。

歴史を辿れば、スペインのフランシスコ・フランコ政権時に遡る。
当時、スペインはバスク人に対してバスク語を話す事を禁じる法律や暴力による弾圧が激しく、それに抵抗するためバスク解放を目的とした武装組織などが結成され、治安部隊との銃撃戦、暗殺などが繰り返され、首相が乗った車を爆破し殺害まで行うなど過激な武力闘争が行われていた。
そんな中、1977年にはバスク地方初の総選挙が行われ、自治権が与えられる。

しかし、その後もスペイン当局は多額の報酬で殺し屋を雇い、非公式に暗殺部隊を創設し、バスク独立派組織ETAとの対立は続いた。
現在、バスク側も政府側も武装グループは解体されているが、依然として独立はされておらず、政治犯として投獄された人々の解放を求める張り紙やグラフィティーアートが街のいたるところで見られる。

と言うのが、簡単なバスクの歴史である。これだけ読むとすごく物騒で危なそうな街にも見えるが、バスクは美しい海や山、川があり、スペイン随一の観光都市で、現在では治安はとても良い。また、鉄鋼業などスペインを支える経済力にも恵まれ、一人当たりの所得はスペインで最も高く、EU圏内の平均所得の40％も上回るなど、経済的にもかなり豊かな場所でもある。

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そんな土地でTHE RODEOSは二度目のツアーをするのだが、彼らは一度目のツアーの際に地元の共演バンドから注意を受けたという。
それは、彼らが当初スペインツアーと銘打っていたことによる。
「バスクはスペインでは無い。バスクはバスクだ。一括りにしないで欲しい」と言うことだった。
そんなこともあり「ツアーの際にはくれぐれもスペインとバスクは別物であるという意識で気をつけて欲しい」と伝えられた。

感覚的には"香港"及び"台湾"と"中国"の関係に近いかもしれない。
それに加えて、バスクは独自の文化と言語を持つ民族である事から、民族意識の高さは他を凌ぐものがある。実際、バスクに着いてそこで二週間ほど過ごしてみたが、バスク人はすごく誇り高い人々という印象だった。

ロデオズはそんなバスクの中で３つの野外イベントに出演した。
その全てのイベントにはバスクの左翼政党が関与、主導しているものだった。
ちなみに左翼政党と聞いてギョっとする人もいるかもしれないが、基本的に欧米や欧州では右翼、左翼、アナキストなどの言葉はとてもフランクに使われている印象で、それこそ政党名に「LEFT」という言葉が当たり前に入っていたりするなど、日本での捉え方とは違って、誇りを持って使われる事が多い。

一応、あえて、ここで右翼や左翼といった言葉をおさらいしようと思う。
なんとなく、僕らは感覚的に分かったつもりでいて、実はわざわざ調べたりしてない事も多いだろうし改めて確認しておいて欲しい。

【左翼】

政治においては通常、「より平等な社会を目指すための社会変革を支持する層」を指すとされる。

「左翼」は急進的、革新的、また、革命的な政治勢力や人を指し、社会主義的、共産主義的、進歩主義、急進的な自由主義、無政府主義傾向の人や団体を指す。

【右翼】

左翼の対立概念であり、保守主義・反動主義・排外主義的な思想や運動、または革命・急進に対して反動・漸進を志向する政治勢力や人物を指す。概して反共産主義・反社会主義・反民主主義・国家主義・超国家主義の精神やイデオロギーを持つ、結束主義（ファシズム）的集団や人物を意味する。「一般にはドイツのナチス，イタリアのファシスト，日本の超国家主義者などがその代表」と言う。

どちらもwikipediaより抜粋。

僕は、右翼でも左翼でも無いと思っていたが、こうして定義付けされたものに当てはめてみると、社会主義や共産主義では無いけど、自由主義だし、国家ってのは積極的に公平な社会環境を作るべきだとも思っているし、国のやることになんでも頷けるほど国家主義でもなければ民主主義を否定するなんてありえないので、大分左翼寄りだと気づかされる。

でも文化や伝統とかが関わってくると保守的思想はあるしなあ。あれ？でも今日本という国家が制度や法律を変えまくったり憲法まで変えようとしてるのって急進的な事なのに、それを支持する層を保守派と言われるのなんで？？
とか色々余計な事まで考えさせられる。
そう、今回のバスクでも勉強不足な僕は同じようにわけが分からなくなってしまったのだ。

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ロデオズが出演したイベントの多くは、いわゆる左翼政党との関わりがあるものだったのだが、バスクの左翼は愛国左翼などとも言われており、僕の感覚的には右翼のように感じた。
きっとそれは僕がバスク視点から見ているからに他ならない。スペイン視点から見ると、独立を目指す勢力は間違いなく左翼ではあるが、ツアーの都合上、どうしても僕はバスクの内側からしかスペインを見ることが出来なかったため、よりそういう風に感じたのだと思う。

この感覚の逆転現象は沖縄のそれに近いとも思った。たとえば、沖縄でもごく稀に日本からの独立を口にする人がいるが、僕はそういった意見を聞く度にとても右翼的だと感じる。
歴史的に自らの文化や土地、言葉や国家が奪われた歴史が経て、それらを取り戻し自主自律を目指すという帰属意識の高さはナショナリズムそのものだと思っているからだ。

さすがに、沖縄独立論は極論の一つだと僕は認識しているが、たまにネットで見かける「沖縄左翼」という言葉だが、内側にいる僕から見ると「琉球右翼」だと思っている。結局、僕が何を言いたいのかと言うと、帰属意識をどこに持っていくかによって立ち位置というのは変わって見えるのだということだろうか。

自分の所属が「世界」にあるのか、「アジア」にあるのか、それとも「日本」か「都道府県」か「市町村」か、仲間同士の「コミュニティ」か、「家族」か。それがどこにあるのかによって右は左にでも成るし、その逆だってある。

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ちなみに、僕は基本的にあらゆるものに帰属意識が薄いため、ナショナリズムとは程遠い性格をしているのもしれない。とは言っても、県外の人から見たら僕は沖縄県人だし、国外から見たら日本人として見られる。
それくらいは僕は理解している。
だからこそ、沖縄県外に行く時は沖縄代表という意識を持つし、国外に出れば日本人代表のつもりで国境を超える。

とは言っても、だらしのないところは十二分にあるため、「お前が勝手に代表なんか気取るな」と言われるかもしれない。
でも、外に出て、他者と接する時、多くの人は僕を僕個人として見る前に、日本人として見る。彼らにとっての日本人像は僕らで決まるわけだ。だから僕はその場所に別の日本人が行った時に温かく迎えてもらえるように、ちゃんと礼節を持って接する。お互いが傷つかないように相手を尊重する。

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今現在、日本と韓国では政治的対立が起きている。もしかしたら、今後は中国やロシアとだって同じような対立は十分に起き得る。それに焚き付けられるように両国の国民はどちらも、自分たちが正しいのだと、自身の国家を後ろ盾にし、政策ではなく人種を愚弄するような事が起きている。

僕は出来るのなら、そういったナショナリストにこそ僕と同じように接して欲しいと願っている。

あなた方は自分自身は誇り高い民族と言うのなら、絶対に他者を貶めてはいけない。
あなたが人をバカにしたりコケにしたりすることは自分自身でその所属先の誇りに傷をつけているのだ。
他人を下に見ても自分が上に立てる事はない。あなたが何を思うのも自由であるが、あなたが愛する気高い民族やコミュニティを守るためにあなたは一時の感情に左右されて野蛮な言葉を口にする事を控えるべきではなかろうか。
僕はいくら自分と同じ意見の人だとしても、正しかったとしても、その人が口汚く人を罵倒したり、他者をバカにしたりするような人だとしたら、その味方にはつきたくない。

※ちなみに、The Rodeosのバスクツアーの様子はYouTubeで公開しています。主に日本のバンドが海外ツアーを回る際のレクチャーや文化の違いがピックアップされた映像になっています。興味がある方は、個人的には総集編ではなく、僕はツアー先から撮影と編集を同時進行でアップし続けた本編を観て欲しい。