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そうして君たちはおとなになっていく

3連休最終日だった今日も、息子たちと近所の公園に行った。

私は駐車場に車を止めて、「お母さんは車の中で本を読んでいるから、遊んでおいで」と息子たちを送り出した。

しばらくフロントガラス越しに走り回る兄弟を見ていたが、そのうち本に没頭した。


1時間くらい経ったころだろうか。

5歳の次男が「もうぼくも車にのっておく」と言って泣きそうな顔で戻ってきた。

寒くなったか、兄が遊んでくれなくて飽きたのかと思い「どうしたの?」と聞くと、

「だって、ぼくのいやなこと言ってくる子がいるんだもん」と次男。

「え、なんて?」

「うんこまん、しっこまんて…」と声を詰まらせながら言う次男。

なんとくだらない…

でも涙をぽろぽろこぼして悔しそうな顔を見ていたら、かわいそうになってきたので「そっか、そんなこと言われたら嫌だよね、楽しいことしよう、お母さんと遊ぼう」と手をつないで一緒に公園内に戻った。

話を聞くと、嫌なことを言った子の名前はわからないとのこと。

子どもたちは公園で会えば誰とでも一緒に遊ぶので、何度か遊んだ子ではあるのだろうけれど。

「なんでぼくだけ嫌なこといわれなきゃいけないのかな…」と、まだ泣きそうな顔をしているので、抱っこしてあげた。

思えば、意外とお友達から嫌なことをされたり、言われたりして泣きついてくるという経験はあまりない。

保育園ではきっといろいろあるのだろうけれど、そこに私はいないし、子ども同士のことなのできっとお迎えに行くときには仲直りしているのだろう。

そしてこういう気持ちを素直に伝えてくれる機会って、意外と少ないかもしれないと思った。もう少し大きくなると、外で嫌なことがあっても多分親には言わなくなる。

さて、この貴重な機会になんと言うべきか…

「うーんとね、きっとその子はふざけて言っただけなんだろうね。でも、言われて嫌な気持ちになったよね。だから、そういうことはお友達には言ってはいけないよ。」と話したら、素直に「うん」と聞いていた。

「今度嫌なこと言われたら、『そんなこと言わないで』とか『なんでそんなこと言うの?』とか言ってもいいけど、お母さんだったら何も言わないでその子から離れるかな。だって、そんな嫌なことを言う子とは何も話したくないから」とも付け加えておいた。それも「うん」と聞いていた。

暖かかった日だったが、日が陰って風が出てきて、肌寒くなってきていた。

公園から見える港にフェリーが止まっていたので、それを「見てみな」と伝えながら、私は思った。

これからも、いろいろ悲しいことや嫌なことがあるだろう。それはきっと今日のこととは比べ物にならないくらい、もう明日が来るのが嫌になってしまうくらい嫌なことかもしれない。
それを思うと、いつまでも腕の中で育ててあげたいような気持ちになる。

でも、腕の中では出会えない、素敵な人や出来事もたくさん待っている。

だから嫌なことがあっても外の世界をあきらめないで。傷ついて帰ってきたら、私の側で眠って傷を癒して、また外に出ていこう。

そのたくましさを、きっともうすでにこの子たちは持っている。私がぼんやりしている間に、君たちはおとなになっていく。

フェリーを飽きずに眺めている息子の頬を見ながらそう思った。

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