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「TOKYO ISLANDHOOD with STARTUPS」島しょ訪問レポート

採択事業者も決まり、いよいよスタートした「TOKYO ISLANDHOOD with STARTUPS(以降、本事業)」。今回はそんな活動の入り口となる対象島しょ地域(大島・利島・新島・式根島・神津島)現地見学の様子を、東京諸島の未来を考えるWebメディア「東京都離島区」編集部の千葉がレポートします。

採択事業者が各島へ入り事業展開のきっかけを探した現地見学
初日は採択事業者6社と運営事務局及び関係者が伊豆大島に入り、大島町役場をはじめとした各関係機関へのご挨拶と意見交換、オリエンテーリングとしてそれぞれのスタートアップからのプレゼンテーション、懇親会が行われました。

会場には大島町、商工会、地元金融機関の関係者の方々、そして「島プレゼンター“ぶっちゃけ”座談会」では島目線で大いにぶっちゃけていただいた株式会社こうづしま観光公社 代表取締役の稲葉さん、新島村商工会経営指導員の下井さんにもご参加いただきました。

プレゼンテーション後の質問タイムにおいて島側の視点やそれぞれの立場から質問や意見が活発に投げかけられて、これから始まる現地見学そしてその先の事業展開への期待やモチベーションを高めていきました。スタートアップの皆さんは島の課題に対して自分たちが出来ること、関われることはないかと、真摯に向き合って取り組んでいて、そんな想いに島側の関係者が心を開いて寄り添うべく、アドバイスや意見を投げかけている様子が印象的でした。「ISLANDHOOD」らしい事業の姿が初日から垣間見えて胸が熱くなるとともに、これから始まる取り組みに大きな期待を抱いた初日となりました。

それぞれの島へ向かい、地域と向き合う旅へ
翌日は各事業者がそれぞれ関心のある島々へと向かいました。私は新島へ向かうメンバーに同行しながら引き続き現地見学の行程に参加しました。

この日新島に向かったスタートアップは国産ドローンメーカーで自社開発の産業用ドローンとクラウドサービスを組み合わせて、さまざまな産業の現場で活用しやすいドローンソリューションを提供しているエアロセンス株式会社取締役の嶋田さんと、郊外や離島など医療アクセスの確保が難しい場所での利用を想定したオンライン診療や医薬品の提供等が可能なボックス型のシェアデバイスを開発しているFLOATBASE株式会社CEOの井川さん。

最初に向かったのは新島村役場。産業観光課の方が迎えてくれました。ご挨拶と本事業に関する概要について説明した後に、それぞれの事業内容やプロダクトについて説明しました。

島々の物流を補う存在としてドローンを活用
嶋田さんが所属するエアロセンスは自社のプロダクトである国産ドローン・次世代VTOL(垂直離着陸機)を活用した物流ソリューションを提供していることから、船の就航可否によって大きく左右される島しょ地域の物流事情において、自社のプロダクトやサービスが役に立つのではないかと考えています。今後最大積載量10kg、連続航行距離150kmを実現する大型ドローンの開発も予定されているとのことで、実現すれば島嶼部においても様々なニーズに対して十分機能しうるサービスが期待できます。

しかしながら、新島村をはじめ島しょ地域は冬場を中心に風速20mもの強い季節風が吹くこともあり、そのような環境下でどこまで安定した飛行が実現できるのか、今後、テスト飛行を行うことで明らかにしていくとともに、厳しい環境下で検証することで、より機能性の高い製品の開発も目指せることから、エアロセンス、新島村双方にとってメリットのある事業になりうると共感されている様子でした。

島の医療事情を知り、より活用イメージが明確に
続いて、FLOATBASE井川さんは「医療ボックス」を通じて誰もが医療サービスを身近に利用できる環境を提供することで、地域格差を少しでも埋めようと取り組まれています。今回の現地見学などを通じて、都心に比べて医療水準が決して高いとは言えない地域に暮らす方々に医療に対する課題や困りごとを伺うことで、プロダクトに求められる機能や実現させるためのスペックを見極めていく予定です。

お話の中で、新島村の診療所に常駐しているドクターは総合診療のみで、専門診療は月に1回もしくは数ヶ月に1回ドクターが来島して診療する程度であることがわかりました。実際、眼科診療については患者さんが多くいらっしゃるため、眼科の専門ドクターが来島する際は診療が集中し、診察が長時間に及ぶこともよくあるそうです。そんな状況を改善すべく、オンライン診療や医薬品等の提供が可能な医療ボックスが大いに役立ちそうです。

もちろん、サービス化に向けてクリアにすべき課題もありますが、引き続き現場でのヒアリングやリサーチを重ねながら一つ一つ整理・解決しながら進めていくことで、実用的かつ価値あるプロダクトとして完成度を高めていくことでしょう。今回の現地見学でも新島と式根島の診療所を訪問されるとのことで、さらに有益な情報や意見がうかがえそうだと早くも手応えを感じていました。

さらに島を巡りながら現地の空気を感じ、イメージを具体化させていく
続いて新島村商工会を訪問。こちらでも商工会関係者の方々と意見を交わしていく中で様々な課題やニーズをうかがうことができました。やはり、現地に直接足を運び、現場の声を聞くことで、サービスを提供する側と利用する側の双方にとって価値あるサービスのあるべき姿が浮かびあがってくることを実感しました(もちろん、新たな課題が明らかになることもありますが…笑)。

そういった大きなきっかけを本事業がつくることで、スタートアップが今後も継続的に島へ入り、現地との関係性を築きながら、より具体的な事業展開を描いていくことにつながる。その結果として地域にフィットした最適な事業が生まれてくるのだと思います。

というわけで、現地訪問レポートをお届けしました。
今後の展開にぜひご注目ください!


執筆・編集:千葉 努(ちば つとむ)
株式会社TIAM 代表取締役最高技術責任者/トウオンデザイン 2010年に伊豆大島に移住。島を拠点にデザインオフィス「トウオンデザイン」を営み、コミュニティや場づくりをテーマにした多種多様なイベント企画やメディアづくりを行う。南北1,000kmに及ぶ東京諸島の豊かさを未来へとつないでいく株式会社TIAMを21年に設立。11の島々の魅力を伝えるメディア「東京都離島区」や、新しいワークスタイルの創出を目指す「多働海域コミュニティWELAGO」のデザインディレクション・プロジェクトマネジメントを行う。その他、一般社団法人大島観光協会 専務理事など。




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