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TOKYO ISLANDHOOD with STARTUPS 採択企業インタビュー「アイランデクス株式会社」

引越しは“暮らしの入口”。物流を通じて島の暮らしを支えたい


アイランデクス株式会社 
代表取締役 池田和法さん

物流を通じて離島の課題解決を目指し、日本唯一の離島専門引越し業者として沖縄、奄美、五島列島などで事業を展開しているアイランデクス。「離島引越しに関わる課題改善と雇用づくり」をテーマに、伊豆諸島北部5島での事業を模索されています。対象の島に足しげく通い、関係づくりと情報収集に努めた代表の池田さんに、東京諸島への思いを伺いました。(インタビュー:株式会社TIAM/伊藤奨)


――まずはTOKYO ISLANDHOOD with STARTUPSに応募した理由について教えてください。

池田:アドバイザーとして就任されていた山下賢太さんのSNSを通じて、この事業を知りました。我々はスタートアップという定義に合うのかわかりませんでしたが、山下さんに相談したところ「要件には合っているから応募してみたら?」と背中を押されて、応募してみることにしました。

伊豆諸島での物流は少し経験がありましたが、改めて暮らしのニーズを深く理解したいと思っていたんです。そのためには島に何度も通うことが必要不可欠です。今回の取り組みは、そのきっかけになるのではと考えました。


――池田さんは島に行って自分の足で動いて、いろんな人と話すことで情報を集めているのが印象的でした。「まずは知る」ということを大事にされているんですね。

池田:そうですね。事業の成り立ちがそうなんですが、自分がどうのというより、目の前に困っているお客さんがいて初めて仕事に対するモチベーションが湧くんです。お客さんと愛し愛される関係というんでしょうか。そのためには、自分がちゃんと島の人たちのことを好きになりたいと思っています。


――素敵ですね。10月以降、伊豆大島をはじめいくつかの島に来られたと思いますが、来る前と来た後でイメージの変化はありましたでしょうか?

池田:何度か通わせていただいたことで、暮らしの課題の全体感を捉えることができたかなと思います。伊豆大島と新島には3回行きましたし、対象となる島には全て行くことができました。一番の収穫はご近所づきあいをしたいと思えるような、尊敬できる友人や先輩が増えたこと、顔が見える関係になったことでモチベーションをいただけたことが大きかったですね。


また最初の現地見学で伊豆大島へ行ったとき、みんなで早朝5時に起きて裏砂漠まで朝日を見に行きました。大島の美しさ、島の人の自然に対する敬意をすごく感じて、「これから始まる離島へのトリップが楽しみだな」と思わせてくれる瞬間でした。溶岩のような養分の少ない場所でも生きていけるパイオニアプランツの話も聞きましたが、人も同じで最初は根付いてなくても、少しずつ関係ができていくと思えたこともよかったです。


――今回、東京都の支援を受けたことで、どんな点がよかったですか?

池田:それぞれの島のトップランナーと出会うことができたことが大きかったですね。伊豆大島では行政や商工会のトップの方にお会いできましたし、利島では村長、神津島では観光協会理事長、式根島では校長先生と診療所の院長先生とお話させていただき、新島では村長にプレゼンをする機会もいただけました。人生をかけて島のことを考え続けている方々のお話を聞けたのは嬉しかったです。


また、担当コーディネーターの方に伴走していただけたことも、非常にありがたかったです。自分たちだけで行くと壁ができてしまうと思いますし、営業に来ていると受け取られてしまったと思います。島の方と会うときはいつも「この島の課題について聞きたいけれど、どこか押しつけがましく聞こえないだろうか?」という恐れがあります。

それが、あらかじめ島の方と関係性を作っているコーディネーターの方が間に入ってくださったことで、最初から信頼関係を作っていただけたのがありがたかったです。島の方とお会いした後に、先方の反応などをフィードバックしあえたので「じゃあ次はここを強調しよう、ここは資料を用意しておこう」といった準備ができ、必要な情報を整理して伝えられたことも大きかったです。


――この事業は資金援助がありませんでしたが、どのように感じましたか?

池田:むしろ、事業に補助がないことが応募の決め手でした。島の方に「補助事業だから島に行くんでしょ」と初動で思われたら、仲良くなりようがないですから。それよりもコーディネーターさんの伴走やアポイントの設計に投資いただけたことがありがたかったです。あと、我々のような民間事業者は補助金に詳しくないので、この先、事業を展開するうえで補助が必要になったときに、資金調達についてアドバイスいただける方々がいるというのは心強かったです。


――アイランデクスさん以外に5社が採択されていますが、他の企業との交流はいかがでしたか?

池田:うちはどの会社とも関われそうな業態だなという気づきがありましたね。離島の物流課題に取り組んでいますので、エアロセンスさんのドローンの活用についてはご一緒させていただくかもしれません。普段は引越しという大きな荷物を運んでいますが、ドローンで運べるような小さな荷物を島での実運送部分で協業できることがあるのでは?と打診をいただけたことが面白かったですね。

僕たちは島に実働部隊を作ることで離島での雇用を生み、一緒に働く仲間を作っています。多くの事業者さんは「人さえいれば収益を上げられる業態なのに、島に担い手がいない」という状態で、スタートアップの方々にも同じことが起きていると感じました。


――最後に、今後の伊豆諸島での事業展望について教えてください。

池田:まずは直近の事業展開として、対象となった5つの島で1回以上引っ越しを通じた物流を実施することが目標です。これまで何度か島に通ったりお話をしたりして、人間関係はできてきたのですが、我々は事業者なので仕事でつながり合うことが大事。ちゃんと仕事をして、仕事を通じた信頼も築いていきたいです。

そのうえで、伊豆諸島のどこかの島で雇用を生み出し、離島に暮らしたいという人に貢献したいと思います。引越しという事業は、この先何十年もニーズがあるものだと思っているので、何十年もおつきあいしていくということで焦らずじっくり取り組んでいきたいですね。


――今後の活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

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