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オンライン授業を取り入れた「国際理解」授業シラバスを公開(中1対象)

2020年度から全8回にわたり、地域人材(外部講師)として、毎年伊江中学校1~2年生むけに「国際理解」の授業を実施させていただいています。

今回ご紹介させていただく2021年度の取り組みは、沖縄県の地方紙:琉球新報にもご取材いただきました。

生徒たちから寄せられた声は、とても興味深いもので、特に「もともと国際理解なんて興味がなかった」という生徒から、とても長くて深みのある感想を多数いただきました。

今日まで国際理解の授業をして、どんな未来もじぶんを大切にして、少しでも楽しみたいです。また、よく考えてみれば、知らないうちにすれちがったり、今となりにいる人とも、みんなどこかではつながっているし、それに壁をつくってしまい、「この人は他国の人だ」とかんちがいせずに、フレンドリーに接したいです。動画をみて、他国の人との親近感がわきました。

合計8回の授業で国際理解について学んで、国際理解は相手のことを知ったり、自分のことを知ったり、未来のことについて考えて、じぶんはこの授業をするまで興味はなかったけど、8回の授業を受けて、ちょっと興味をもちました。

ぼくがこの授業を通して思ったことは、世界の同級生はみんないとこだとわかりました。2030年まであと9年です。ぼくが1人でやることはかんたんです。でも、ぼくがやることで他の人たちも共感する人たちがいるかもしれないので、じぶんで積極的にやっていきたいです。

そのほか多数、以下の記事にまとめているのでよろしければご覧ください。

SDGsをどうやって自分たちの生活に結びつけるか
国際理解に必要なマインドセットとはなにか

それぞれを生徒たち自身のことばで表現し、互いに学び合うことが今回の趣旨でもありました。最終的に生徒たちからの感想から、その内容が端々に伺えたことが、微力ながら授業の成果かなと感じています。

より多くの地域で「地球市民」としてのマインドセットを持ち、これからの社会の課題解決に向けて行動する学生が増えることを願い、今回取り組みの内容を詳細にご紹介するに至りました。


総合学習の時間をアップデートしませんか?

じつは全国的に「国際理解」のシラバスや、体系立てて何をするのか、アイディアや仕組みや人材がなくて、きちんと取り組めていない学校が多いとのこと…

そこで僭越ながら、私が担当した全8回のカリキュラムが何かの役に立てばという想いで、シラバスを公開することにしました。

とはいえ、本取り組みは、私自身が「SDGs for School 認定エデュケーター」として最初の2回を実施し、後半はシンガポールの日系企業Vivid Creations Pte Ltd.様の全面的なご協力の上で実施された取り組みです。

必ずしもすべて同じようにできるとは限りませんが、本記事を通じて、地域にいらっしゃる多彩な人材や、まだ眠っている機会をご活用いただき、「地球人(地球市民)」という大きな視点に生徒たちが学校で触れるきっかけづくりに貢献できればと、微力ながら願っています。

個別のご相談などございましたらnoteのコメントやTwitterのDMなどからご連絡いただけますと幸いです。可能な限りお返事させていただきます。

それでは、全第1~8回まで、どうぞご覧ください!

【第1回】私たちの未来と国際社会

 私たちの未来が世界規模で取り組まなくてはならない国際社会の問題と密接に関わっていることに触れる段階です。具体的には国際社会のニュースや世界的なイノベーションを取り上げて説明し、SDGsを通じて社会現象を考えてみるグループワーク(関連するゴールを考える)を実施しました。

【 内容 】
・自己紹介/全体の流れ(オリエンテーション)
・「国際理解」の定義
・私たちが生きる2030年
・SDGsで国際社会を考える

【 準備物 】
・A4の白紙(グループ分)
真ん中に「国際理解」と書き、連想されるものを制限時間内に書き出すワークショップを実施する際に使います。(『「国際理解」の定義』)

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・A3の白紙(グループ分)
真ん中に授業中に触れた国際社会のニュースやイノベーションの事例を1つ選んで書き、関係が深いSDGsのゴールとその理由を書き出すワークショップを実施する際に使います。(『SDGsで国際社会を考える』)

【 宿題 】
テレビ番組・Youtube・メディア記事などあらゆる媒体で知った、自分が興味関心があるニュースや事柄についてまとめ、関連するゴールを考える。

【第2回】このクラスの関心は?私たちの未来を、私たちで考えてみよう

4人1組になり宿題の内容をシェア。それぞれが持ち寄ったニュースに関連するゴールを、A3の紙の四隅に書き出し、それぞれのゴールの連動性を考え、最も重要なゴールを決めるグループワークを実施しました。

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つづいて、最も重要なゴールを決めるまでのプロセスをPREP(結論→理由→例え→結論)でまとめ、2人ずつに分かれてグループをシャッフル。お互いのグループで話し合った内容をPREPでまとめた台本を使ってプレゼンし、気づきをメモしました。

※PREPをつかったプレゼンは、自己PRなどにも役立ち、面接対策やほかの授業での発表にも役立てることができるため、学校側の要望により本取り組みに組み込まれました。

【 内容 】
・宿題を使ってなにに/なぜ関心があったのかをシェア
・PREPをつかった良い発表の仕方を伝授
・グループを2つに分け互いに発表x2
・元のグループに戻りクラスの特徴を考える
・クラスの特徴を発表

【 準備物 】
・A3の白紙(グループ分)
宿題として持ち寄ったニュースに関連するゴールをA3の紙の四隅に書き出し、それぞれのゴールの連動性を考え、最も重要なゴールを決めるグループワークを実施する際に使用します。

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【第3回】多民族国家で『国際理解』は必要?シンガポールで活躍する日本人にインタビュー

SDGsという枠組みを使って概念的に国際社会を理解できたところで、実際に多国籍国家シンガポールで活躍する日本人に「国際理解がなぜ必要か?」「国際理解とはなにか?」をインタビュー・意見交換する授業です。

ここからは後半の課題につながる内容にシフトし、企画に必要なインプットを、授業スタイルで講師が教えるのではなく、なるべく生徒が体感したことから見つけ出すプロセスで学習できるように設計していきます。

第3回~第5回までの流れは以下の通りです。(「企画しよう」のグループワークには2時間分の時間を当てました)

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インタビューにご協力いただいたのは、シンガポールの日系マーケティング企業Vivid Creations Pte Ltd. 代表取締役の齋藤真帆さん。ご自身の経験談からはじまり「国際理解」を実践する者として大切にされていることに触れ、後半の課題につながるシンガポール人の特徴(国民性)や課題の設定について説明しました。

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【 内容 】
・齋藤真帆さんからの質問
・シンガポールでの生活(仕事、家族、友達、お気に入りの場所)
・齋藤さんにとっての「国際理解」の意味、何が重要か?
・後半の課題「オンライン伊江島ツアーを企画しよう」の成功のポイント
・シンガポールの特徴(国民性)、課題に対する制約(条件)

【 準備物 】
・生徒たちがメモできる紙
全授業に個別に用意している「振り返りシート」に、インタビュー内容をメモする欄を大きくとって用意しました。後半の課題を実施している際にも読み返すとヒントになることが書き出せるように、インタビュー中に齊藤さんからお話を引き出す意識で臨みました。

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【第4回】体験から学ぼう!オンライン・シンガポールツアー

伊江島(生徒たちが住んでいる場所)のオンラインツアーを企画する前に、そもそも「オンラインツアー」とはどういうものかを知ってもらうために、シンガポールへのオンラインツアーを実施しました。

コロナによるロックダウンのため生中継でのツアーはできませんでしたが、チャイナタウンやホーカーセンターなどを散策する体験をし、途中途中に組み込まれている参加者を楽しませる工夫を体感することで、自身の企画に活かすヒントを得ました。

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オンラインツアーのあとは、実際にツアーでアテンドしてくださったVivid Creationsのスタッフをオンラインで招聘し、どんな点に苦労したか・どういう点を工夫したかなどの舞台裏を細かくヒアリングしました。

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【 内容 】
・準備・自己紹介
・シンガポール・オンラインツアー
(実施の仕方・演出を学ぶ、多文化・多民族を体感する)
・Vivid Creations スタッフとの生中継による質疑応答
・グループワーク

【 準備物 】
・生徒たちがメモできる紙
全授業に個別に用意している「振り返りシート」に、インタビュー内容をメモする欄を大きくとって用意しました。後半の課題を実施している際にも読み返すとヒントになることが書き出せるように、Vivid Creationsのスタッフからお話を引き出す意識で臨みました。


【第5回】魅力を届ける『海外向けオンライン伊江島ツアー』を企画しよう

シンガポール人カップル、または家族をターゲットとする「オンライン伊江島ツアー」をグループごとに企画する授業です。

第3・4回でVivid Creationsの皆さんから伺った、シンガポールの国民性やオンラインツアーで実現できること・注意点などを踏まえて、魅力的なツアー内容を企画し、最終的にはコンペティションを行うことを前提として取り組みました。

以下のような「企画にあたっての条件」を明確にすることで、グループ間での差異がないように配慮し、より企画力勝負のコンペティションができます。

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使用機材はギガスクールによりひとり1台あてがわれているChromebook。事前にグループごとに「Google スライド」を用意し、閲覧者に編集権限を与え、グループ全員で同時編集を行いました。インターネットで検索して情報収集する生徒、スライドに文字入力する生徒、発表の台本をPREPに沿って考える生徒など役割分担を行い、第7回での発表に備えます。

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【 内容 】
・注意事項(条件の確認、完成後の流れの確認)
・グループワーク

【 準備物 】
・Chromebook
生徒がひとり人1台使えるように用意。

・Google スライド(グループ分)
予め「概要」「紹介する場所(3か所としたため、1か所1スライドで計3スライド)」「まとめ」の3部構成のGoogle スライドを用意します。

・発表用の台本(紙)
全授業に個別に用意している「振り返りシート」とは別に、Google スライドのひな型(中身が埋まっていない状態のもの)を、メモ欄に台本が書けるように印刷します。生徒はPREPを意識して、1スライド1PREPの台本を考えます。


【第6回】オンラインツアーのプロに企画を発表して、改善点をみつけよう

Vivid Creationsのスタッフをオンラインで招聘し、企画した内容に対してグループごとにフィードバックをもらいます。

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普段の学校生活ではアウトプットに対してフィードバックをもらい、修正するという作業は発生しませんが、今回はキャリア教育の一端に少しだけ触れる意味合いで、あえて「考え抜いたものを作り変える」というプロセスを経験してもらいました。

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また、招聘したスタッフには、生徒たちと同年代のインターンシップ生(シンガポール留学中の日本人)を交え、海外への進学やインターンシップについても生徒たちに紹介できるようにしました。

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【 内容 】
・注意事項(条件の確認、完成後の流れの確認)
Vivid Creationsのスタッフの自己紹介
・グループ発表
Vivid Creationsのスタッフから総評

【 準備物 】
・フィードバックをメモできる紙
他のグループへのフィールドワークからも学べることがたくさんあるので、全グループのフィールドワークをメモできる紙を用意しました。


【第7回】フィードバックをふまえて最高の企画をつくろう

第6回で受けたフィードバックを基に、グループで修正をします。このグループワークで最終的に完了したものが、コンペティションの対象となります。

【 内容 】
・注意事項(条件の確認、完成後の流れの確認)
・グループワーク

【 準備物 】
・Chromebook
生徒がひとり人1台使えるように用意。

・Google スライド(グループ分)
予め「概要」「紹介する場所(3か所としたため、1か所1スライドで計3スライド)」「まとめ」の3部構成のGoogle スライドを用意します。


【第8回】オンライン伊江島ツアーのグランプリ決定!『国際理解』で大切なことはなんだろう

グループで最終提出した企画を全員でレビューし、投票をします。授業を見学しに来てくださっていた校長先生や外部の方々、先生方も投票権を持ち、授業時間内に開票・集計をして(サポートの先生に依頼)、最後に発表をします。グランプリは、伊江村役場商工観光課に提案されます。

開票・集計中に、第1回で書き出した「国際理解」から連想される言葉を書き出したA4の紙を再び取り出し、別の色のペンで8回を経た今、付け足せることを書くワークショップを実施。その中からグループで1つずつ、全体に共有したい内容を選び、黒板に書き出し、全員で理解が深められたことを確認します。

今回の伊江中学校での取り組みでは、すべて「相手」と「自分」のあいだに関連するポイントが挙げられました。

(例)
・自分の当たり前を知って取り払う
・相手を理解しようとする
・違いを楽しむ
・自分と相手のことを考える

再び生徒たちが社会人となる頃の、2030年に達成すべきゴールとして挙げられたSDGsや国際社会の課題にふれ、国と国との間を越えて理解し合うことの大切さ・必要性を強調しました。

また、知らないあいだに自分たちの生活がすでに国際社会と密接な関係をもっており、すでに「〇〇人」というアイデンティティを超えた「地球人(地球市民)」であるということにもふれ、2030年より先の未来もまた、ひとりひとりの人生が国際理解が必要とされる時代になるということに目を向けてもらいました。

【 内容 】
・修正した企画案の再共有
・ターゲット別にグランプリ決定【投票】
・「国際理解」を考える【グループワーク】
・国際社会を自分ごとに
・地球市民として、2030年の主役に

【 準備物 】
・修正した企画案が一覧になっているA3の紙
全員で全グループの内容がわかるようにExcelで一覧化した紙を用意しました。投票に際して参照できるように、必要あれば各企画にグループ名とは別のラベルを振るなどすると便利です。

・投票用紙と投票箱
小さな紙で結構です。今回は「カップル向け」と「家族向け」の2部門用意したので、生徒は1部門につき1企画、投票しました。自分たちのグループには投票しないルールとしましたが、力作ぞろいだったため「自分のに入れたい」という生徒もいました。


最後に(生徒の感想・お問い合わせ)

全8回の授業を終えて生徒たちから寄せられた声は、とても興味深いものでした。特に「もともと国際理解なんて興味がなかった」という生徒から、とても長くて深みのある感想を多数もらうことがきました。

【 生徒たちの感想(一部抜粋)】

 今日まで国際理解の授業をして「(2030年までの)9年間の砂時計」、どんな未来もじぶんを大切にして、少しでも楽しみたいです。
 また、よく考えてみれば、知らないうちにすれちがったり、今となりにいる人とも、みんなどこかではつながっているし、それに壁をつくってしまい、「この人は他国の人だ」とかんちがいせずに、フレンドリーに接したいです。動画をみて、他国の人との親近感がわきました。

合計8回の授業で国際理解について学んで、国際理解は相手のことを知ったり、自分のことを知ったり、未来のことについて考えて、じぶんはこの授業をするまで興味はなかったけど、8回の授業を受けて、ちょっと興味をもちました。

ぼくがこの授業を通して思ったことは、世界の同級生はみんないとこだとわかりました。2030年まであと9年です。ぼくが1人でやることはかんたんです。でも、ぼくがやることで他の人たちも共感する人たちがいるかもしれないので、じぶんで積極的にやっていきたいです。

それぞれを生徒たち自身のことばで表現し、互いに学び合うことが今回の趣旨でもありました。最終的に生徒たちからの感想から、その内容が端々に伺えたことが、このシラバスで運営した授業の成果かなと感じています。

一方で、学年の先生方との連携や、他の強化との横断的な学習の深め方などには課題があり、本シラバスは改善の余地が大いにあります。

ぜひこの取り組みを参考にしていただき、より多くの地域で「地球市民」としてのマインドセットを持ち、これからの社会の課題解決に向けて行動する日本の学生が増えることを、微力ながら心より願っています。

最後までご覧いただき、誠に有難うございました。

*追加情報や個別のご相談をご希望の方へ

国際理解や教育に関する記事は、こちらのマガジンにまとめています。

ご興味ございましたらご覧ください。

また個別のお問い合わせやご相談は、各種SNSのDMにて受付中です。

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*活動を応援して下さる方へ

世界中の人々が場所や環境の制約に限らず、「地球市民」として自由に交流し、関わりあえる社会にしたい

そのような想いで日々、外部講師として、あるいは多拠点複業家としてさまざまな活動しています。

詳細はご興味ございましたら以下をご覧ください。

国境を越えて解決していかなければならない社会問題が起きているいま、全世界で国際理解の授業を実施したいと考えています。

活動を支援してくださる仲間を、全国(いや、全世界!)から募集しています。共感してくださる方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談いただけますと幸いです。

何度も重ねて重ねではありますが、最後までご覧いただき誠にありがとうございます。


多謝

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