はじめてのほっかいどう ~「ぼくたちの現在地」からちょうど一年経ったオタクの現在地は、未開の北国だった件
今回語られるのは、そんな村をふとしたきっかけで飛び出したひとりの若者の先のお話。
こんなタイトルと前置きをしているけれど引き合いに出したかつての居場所に対する否定的な言葉とかは多分、無い。そう思っているので、「かつてのこの若者」を知っている人も、「今のこの若者」の状態を知っている人も、適当にこの文章に行きついてしまった人も、軽い気持ちで読んでもらえたら、と思う。
・はじめての場所、何度目かのモヤモヤ
人生ってものは、本当に何が起こるか分からない。
二年前のこの頃は好きな「キャラクター」に対して、僕史上でも5本の指に入る大号泣をかましていたし、
一年前は好きな「声優グループ」の年明け初ライブに参加していた。
そんな僕が2023年1月、何をしたかと言うと。
好きな「アイドルグループ」、タイトル未定を観に行くために、今までの人生の北限を大幅に突破し、彼女たちの拠点である北海道にやってきていたのである。
いちばんの目的は22日の夜。
7年ぶりにアイドルという世界に引き込んでくれた人、阿部葉菜さんのバースデーライブ。
人生ではじめての北上を決心する障壁は全く無く、ノータイムでチケットを申し込むくらいには大きな存在になっていたらしい。
ただ、飛行機から降りたとき。
はじめて足を踏み入れた土地特有のワクワク感以上に負の気持ちが押し寄せてきていた。
「土日のLIVEは、3人での出演となります」
僕が何かを追いかけようとすると、原因は様々とはいえ、ほぼ必ずと行ってもいいほど、この知らせに遭遇してきた。
去年の一月に追っていたグループを、思うように推し切れなくなった原因のひとつでもあれば、今、リアルタイムで心を悩ませている別の要因でもある、「何かが欠けたステージ」に向かわないといけない。
それともうひとつ、頭をよぎったのが、「当日、ちゃんと"おめでとう"、"ありがとう"を伝えられるのか」ということ。
長くTwitterとかいうツールを使って来たせいで、変に検索機能の使い方を身につけているから、去年のー僕が彼女たちを知る前のーバースデーライブが、同じような状況で延期になったことを中途半端に知ってしまっていたのが良くなかった。
彼女たちがステージで歌う限り、そのステージは僕にとって「観たいもの」になるけれど、彼女たちにとって100%の「観せたかった」ものでは無いだろうから、振替になってもやむなし、と思いつつも、もし、この日のいちばんの目的を失ってしまったとしたら、どう振る舞えば良いだろうか。
そんな余計な「if」への「畏怖」がグッと押し寄せてくるのに抗うかのように取った行動は、21日の僕の予定に無かったはずの、「タイトル未定のライブに行く」という選択肢だった。
たまたま一緒にいた、2次元コンテンツを追っているときからの旧い友人ー当然、アイドルのライブなんて初体験だったーを引き連れて入ったステージ。
いつもは歌わないパートを、空白を感じさせないよう気持ち出力高めに歌っていた3人が、空回りして歌詞を飛ばしてしまうところも含め印象に残っている。
そんな、「明日、味わうであろう空白」に対する「自分向けのワクチン」をつくるためのライブで、連れて来た友人が、何も説明していないのに「この子たち、本当は4人だよね?」と気付いてくれたこと、「機会があれば4人のステージを観てみたい」と言ってくれたことが、今、追っているアイドルを布教する、という予期せぬ旅の目的になり、じわじわと気持ちが上向いていくきっかけとなった。
・ホームグラウンドで聴く、ホームの音
色々な気持ちの整理がついた次の日の昼。
月イチでゲストを迎えて行われる定期公演をする、という新しい試み(こういう変化をしていくのって色んなコンテンツ触って来て大事だと近頃思う)の第1回目に参加した。
元々北海道での一本目のライブにする予定だったこのライブ。
予期せずワンクッションを置いたのと、拗らせオタク特有の理由(北海道に行く雰囲気を殺して振る舞っていたので、夜まで目立ちたくなかった)があって、「北海道になんかアイドルいるじゃん、行ってみるか」という少しライトな気持ちの皮を被ってー”ノリと勢い”で、様々な現場に行くときのようにー楽しむことにした。
そんな、いつもと違う見方をしたライブは、いつもは自動追尾機能が勝手に推しを追いかけてしまうから、それをオフにして臨んだ分、いつもより谷乃愛さん、川本空さんの印象が焼き付いていた。
谷さんは「綺麗事」で迫るかのように感情むき出しで向かってくるような印象を受けたし、髪飾りを吹き飛ばして、乱れた髪を戻す様子もなく最後まで走り切った川本さんは殺気に分類したほうが良いような雰囲気を醸し出していた。
はじめて心と腰を据えて浴びた、ホームでの「タイトル未定のライブ」。本来の形ではなかったけれど、「個人」をお祝いするために来たはずの旅で、チームとしての魅力を浴びせられる、素晴らしい時間であった。
・As you like
そんなホームで繰り広げられたより一層、アットホームな時間。
それがこの日の夜。
久々に観た特大のスタンドフラワー、入場して渡されたグッズ、記念のカレンダー。受け手と渡し手双方の手作り感。
ライブ前といえば、少し張り詰めた緊張感が漂うものとばかり思っていた(というより、思わざるを得ない環境にずっといた)から、ぽかぽかとした温もりに満ちた開演前の雰囲気を持ったライブはなかなか味わえるものではない。
ドレスコードに指定された「赤」にちょっとした私信のような感情を持ちながら、特別な一日だと思いつつも、普段彼女たちのライブを観るときに着ている赤いスウェットを身に纏い、普段着のような気持ちでこの日の主役が姿を現すのを待っていた。
幕間が終わり(この内容もだいぶグッときてしまった、地元に残るか戻るしか基本的に選択肢がないコミュニティを飛び出して上京した身なので。)、赤を纏った阿部葉菜さんが現れた瞬間、この世の酸素を全て吸入する勢いで息を呑んだ。
このライブの前後から体感私服や衣装の写真が増えていて「いや、推しててすみません……ホント……」と申し訳ない顔をしながらスマートフォンの画像フォルダが爆発していたその火が目に引火して大爆発。目玉のストックを用意していたからなんとかライブの続きは観ることができたので、推しの生誕を控えた皆さんは目玉の替えを用意していたほうが良い。これは学び。
そんな衣装を身に纏い披露されるセットリストにもたくさんの仕掛けが施されていた。カバー曲、サプライズ、米。米……
そんな仕掛けのなかで唸ってしまったのは谷さん、川本さんが「歴代の”あべはな”衣装」を着て現れて歌っていたこと。
2022年の8月に出会った僕ー当然、動画でしか過去の衣装を知らなかったのと、あまりにもその衣装に心惹かれた印象が強すぎたのでーは、「蜃気楼」でようやくこの仕掛けに気づいたのだが、そのあとのメッセージ動画で彼女が大事にしている言葉である「出会えたタイミングに意味がある」ことを強調されて、「うわぁ~、手のひらの上でコロコロですわ……」という気持ちにさせられてしまった。
好きなことを、好きなようにする。できる。
年に一度の、彼女の生き様にフォーカスしたライブの特別感に足先から頭のてっぺんまで浸かっていた。
・たまたま思い出した、一年前のハミング
ここからは完全に私情。
この暖かい時間の最後に披露された曲が、「青春群像」。僕が彼女たちを追うきっかけとなったTIFでも最後に披露されたこの曲を、彼女のリクエストで最後のサビを合唱することになった。
それを歌っているときに、ふと頭をよぎった光景があった。
2022年1月23日、Zepp Haneda。
例の病気が猛威を振るっていて、「わぁ!」という驚きの声を出すことすら憚られるような時期に開催されたライブの最後の一曲で、紫色の衣装を身に纏った女性(もうぼんやりした記憶なんだけど彼女であってるよね?)から提案されたウルトラCが、最後の「ラララ……」を「ハミング」で歌って欲しい、というもの。
そこから一年。
心置きなく、何の躊躇いもなく、とは言えないけれども、大好きな曲を、その歌詞を噛みしめながら「歌える」日。ちょうど一年前に味わった感動の突然のフラッシュバックとこの日の感動が混ざり合ってぐちゃぐちゃになってしまっていた。
そのことをまとまりきれないまま特典会で話してしまった挙句、思い出し泣きしそうになって「あ、まずいな」と焦っていたところに笑顔を投げ返してくれた彼女の表情は、この日なんども「可愛い」「綺麗」と思った阿部葉菜さんのいちばんの表情として脳裏に焼き付いている。
その日の帰り道。
雪の降らない街で生まれ育った僕が、10年振りくらいに目にした「積もった雪」。それを踏み締める足音と、この日を楽しんだログとしての何枚かの写真は、いまの僕の現在地を知らせていた。
「いつも、たくさん、ありがとう」
そんな言葉を伝えたい何かがある、
今の僕の現在地は、こんな場所である。
・あとがき
絶対に勝てない先手を打たれました。
なにこの「あとがき」。ズルすぎるって。人がああいう闇を吐き出したあとにやっていいことじゃないと思うんですよね。大罪です。ちなみに僕も「素直にならずに斜めに構える罪」持ちなので一緒に網走のほうに収監されませんか?????
まぁこの闇も、この「ずるい」って思う感情も、この人が7年ぶりのアイドルの入り口じゃないと抱かなかった感情だと思うし、その先でいろいろな楽しい現場との出会い、素晴らしい音楽との出会い、予期せず同じ穴に落ちたかつての同志たちとのバトルも無いと思うとまぁ、この敗北も受け入れようかな……と思います。
出会えて本当に嬉しかったです。ありがとう。〇〇〇です。
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