美味しいWの殺し方⑥

〔ものすごくお久しぶり。SIMフリーのスマホに変えるので、今までのアドレスは使えなくなります。なのでこっちのアドレスにお願いします。電話番号は変わってないよ〕
〔ホントにお久しぶり!てか何年ぶりだ?元気だった⁉私は苗字が変わったよー(*´з`)(笑)〕
〔そうなの⁉おめでとう!全然知らなかったよ…実は私も変わったんだけど笑 元気だよー〕
〔連絡してなくてごめん…身内だけで式して、Facebookに写真載せて報告ってことにしたんだー。って、えええええ!そうなの⁉誰と⁉まさかリョウクン?だいぶ前にメールしたとき、まだ付き合ってるんかい!って思った記憶が( ゚Д゚)〕
〔リョウくんだよ。まだ付き合ってた笑 私も教えてなくてごめんね。入籍だけして何もナシ婚だったから〕
〔そうだったのね!なんか、らしい感じ(笑)S市に住んでるの?私は今C市だよー(*'ω'*)〕
〔こっちに帰ってきていたんだね。S市だよ。近いね。会いたいなぁ〕
〔よし、会おうぜ!!(*'▽')〕


 久しぶりに会った彼女は、かつてのチンアナゴからタチウオに変貌していた。肥えたというわけでは全くないのに、何だかたくましく存在感を強めた感じとでもいうのだろうか。もっとも、三日月の目ではにかんで笑う仕草は全然変わっていなかったが。

 「もうすぐ新しい家に引っ越すんだ」彼女はフレッシュオレンジジュースを、パルプの感触を確かめるようにもにゅもにゅとストローで吸い込みながら言った。お互いの近況について一通り話し終えた後だった。
「おお、素敵じゃん!どこに?S市内?」
「うん、そうだよ。T町」
「うちの実家近くじゃん。遊びに行くわ」
「おいでおいで。二月に完成予定だよ。ちっちゃいけど、車停めるスペースもあるよ」
「注文住宅かあ!いいなあ。うちも早く引っ越したい」
「今の家、築五十年だからね…もうほとんど人が住んでなくて、暑いし寒いしお風呂は露天風呂状態だしカメムシは出現するし」
「ムシ…」
「ああ、ごめん…」(続く)

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