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「なんでもやる」ではなんにもできない。

※)2021年2月、本アカウントを個人用から事業用に変更しました。
この記事は個人アカウント時代に民ノ布の中の人が書いたものです。


岡山県で、機能性のある服と伝統繊維に特化したブランドディレクション業を営んでいる岩崎と申します。現在はSAGYOという和装をベースにした作業着のメーカーの運営をメインに行っています。


「機能性のある服」と「伝統繊維」って、パッと聞いた限りでは対極のように感じるかもしれません。

でも、両方好きだし、好きを追求したいので、このふたつと関係ない服を扱うお相手と仕事することを3年ほど前に辞めました。ファッションビジネスの大半を占めている"着飾る為の服(おしゃれ着)"ジャンルを捨てた訳です。

それでも、仕事の幅をぐーっと狭めたことによるいい効果が、4つほどありました。


・印象に残る

仕事のジャンルを絞ることを公に宣言しなかったので、最初数か月はぽろぽろ謎な仕事(※)が舞い込みました。

(※)私の背景を知らない方が依頼する、明らかに自分より適任者がいる仕事。例えば、ダンス用衣装のデザインや、ノベルティ制作の依頼など。

もちろん丁重にお断りするのですが、「機能性のある服」と「伝統繊維」に絞っているので…というとすごく興味を持って質問されます。

印象には残るようで、数年後にイベントなどで声を掛けられたりしました。(私はすっかり忘れていていつも焦るのですが)

今のところそこから仕事につながったことは無いんですが、もしかしたら紹介など来るかもしれませんし、覚えて貰うこと自体がプラスだと考えます。

・余計なオペレーションが発生しにくい

「なんでも受けます」の姿勢だと、先方も何をどう頼めばいいか、ぼんやりしたままお問い合わせメールをくれたりします。そうなると、メールで質問の応酬が始まるわけです。本決まりになる前に擦り減る…。疲れますよね。それで結局流れたりしたら寝込みたくなります。

でも、「機能性のある服」と「伝統繊維」に特化することに決めてからは、擦り減る問い合わせが激減しました。先方も事前に「こいつは何者なんだ」「うちの依頼にフィットするのか」など調べてからメールを下さることが圧倒的に増えたためです。

その為か、仕事の問い合わせ件数は減ったものの成約率が上がり、収入自体も思っていたよりは落ち込みませんでした。(というかほぼ変わらず)


・特化したものに時間を費やせる

「好き!」なだけでは弱いので、「得意!(マニアなほどに)」に昇格するまで勉強あるのみです。

その為にはそのジャンルの勉強だけではなく、関係する事象の歴史や背景までも調べなければなりません。「好き」がたくさんあると、勉強の時間がいくつあっても足りず、知識も薄くなるので、やっぱある程度扱うジャンルを絞った方がいいと私は思います。


・専門性を持つことで単価が上がる

これは読んで字の如く、ですね。選んだものがニッチで専門性が高く、競合が少なければ確実に単価は上がります。

依頼は減るでしょうが、一件一件、時間の許す限り向き合うことで、自分も納得感のある納品が出来ますし、先方からの信頼を得られるのではないでしょうか。遠回りに見えますが、着実な一歩です。

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「好き」をひとつに絞るのもいいですが、そうなるとその道のトッププロと争うことになりかねないので、ハードモード突入です。
2つか3つ専門性を持っておくと、それらを掛け合わせた時に面白い化学反応が起こるし、競合が居ない(もしくは少ない)為その道のトッププロになれる可能性が高まります。

(余談ですが、座右の銘は「戦わない」です。)

私の場合、「機能性のある服」と「民具としての衣服(目下研究中のジャンルです)」を掛け合わせたことで、野良着ブランドが出来ましたし、またもや得意な「機能性のある服」と「伝統繊維産業」を掛け合わせて、日本の風土に合った伝統的な生地を使ったパジャマのブランドを立ち上げることになりました。

「作業着のブランド」や「パジャマのブランド」は他にもたくさんありますが、「和装をベースにした機能性のある作業着のブランド」だったり「日本のトラディショナルな生地(伝統繊維)を素材に使った、寝やすく着心地のいいパジャマブランド」となるとなかなかありません。

その分需要もニッチではありますが、好きな方はがっつりハマって下さるので、客層もリピーターがメインとなるはずです。

そうなれば、背景を理解し購入して下さる方ばかりになるので、こちらのオペレーションも減るうえ、トレンドを気にせず腰を据えてモノづくりが出来るという素晴らしい循環が起きることになります。(理想論ですよ!)

と、まぁ良いように言いすぎた感はありますが、私は「なんでもやります」を捨てた結果、本当にいいことしか起こってないので、小商い同盟の皆さんは、収入減を恐れず「2つか3つの専門性を持つこと」を激しくお勧めします。


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