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カクヨム誕生祭2024参加しました&ライナーノーツ


 3月は相当に険しい月だった。週に2回、3・4日に1回短編を上げるスケジュールをこなしていたからだ。なぜか? カクヨム誕生祭というイベントに参加していたからだ。イベントの概要は以下である。

 カクヨムに登録したのは去年中ごろ、つまり私はまだ1年も満たないニュービーカクヨムユーザだ。だが、特に参加資格はなく、ちょうど同タイミングでカクヨムDiscordも解説されたので、せっかくの機会と思い参加した次第である。

 カクヨムからのお題は3・4日に1回お出しされる。その後次のお題が発表されるまでに、文字数800文字の作品を書き、公式タグをつけて公開すれば参加完了である。そのままでもよかったが、パルプスリンガーとしてはより実践的なチャレンジをしたい、そう考えたので私は以下のように実施した。

・各作品カクヨムのお題に従い、かつなるべく他の作品と被らないジャンルにする
・文字数制限はないが、ちゃんと物語が動いて完結する1作品に仕上げる
・パルプ作品である

 そういうわけで、週に1・2回パルプをぶっ放す期間を過ごすことになった。ものすごく忙しないが、とても経験になり、楽しい1月を過ごすことができた。この記事は、そうした戦いの記録である。

 それぞれカクヨムのお題ごとに表題分けした。8作品、どのようなジャンルにし、どうテーマを咀嚼したのか。ライナーノーツと共に振り返りたいと思う。私と共に8作品巡りにお付き合いいただけたら幸いだ。

 





お題① 三分間+バッファロー

お題:~にはあと三分以内にやらなければならないことがあった。
   すべてを破壊するバッファローの群れ
テーマ:宇宙SF
タイトル:ムレタ・シークエンス

 最強のバッファローを出したいと考えたので、銀河系をも破壊する超宇宙生物として出すことにした。バッファロー主観だとただ壊すだけの話になるので、対抗する人類の話になった。そういうわけで、これは破壊を免れるために悪戦苦闘する人間の話である。

 宇宙SFといいつつ、怪獣もののニュアンスも含まれたように思う。たとえばシン・ゴジラの、ゴジラに対抗するため話し込む内閣のシーンだ。足並みの揃わなさに悪戦苦闘しながらも作戦を考え実行する政治部分を書きつつ、最後はSF的な事象の気持ちよさを書いてみた。10000字の三話構成になったが、実際に読んでみるとそこまで長く感じないと思う。

 ついでに、1話ごとに3分使うような話になった。冒頭で3分縛りをしたからといって厳密に従う必要はないのだが、期せずして30秒勇者式になった。勇者30とは30秒以内に世界を救う話なのだが、当然間に合わないので実際には時間を継ぎ接ぎしたり巻き戻したりする。意識したわけではないのだが、面白い構造になったと思う。各話ごとの頭を揃えたり、最後の一文もそれに倣ってみたりと、第一回目として爽やかな作品になったと思う。



お題② 住居の内見

お題:住居の内見
テーマ:コズミックホラー+恋愛
タイトル:内なる家としゃん

 このお題を聞いて真っ先に浮かんだのがシャッガイからの昆虫、シャンであった。もうこの時点でクトゥルフ路線は確定なのだが、捻りを効かせて恋愛ものにすることにした。恋愛ものなんて初めて書いた。なにしろ恋愛欲がないので。

 住みやすい心の住居を考えたときに、幼少の記憶が心地いいもので溢れていることだと考えた。彼の記憶には色々出てくるが、時間がなかったので一部作者の実体験を入れている。ドムドムバーガーの店舗が少なくなってさみしい……。

 さて、神話生物的邪悪でなく、シャンはだいぶ可愛い存在だ。昔遊んだ唯一のエロゲ、沙耶の唄をかなり参考にした。もっとも、沙耶はとても献身的な少女だったが、碩子は最後まで人間の脅威だったか、それとも純粋な隣人だったか分からないように描いた。クトゥルフ的には、人間が勇気を出した結果も割とバッドに終わる。今回は失恋だった。様々な謎を残しつつ、宅見にとってはとてつもない苦い記憶として残る……そんな話になった。



お題③ 箱

お題:箱
テーマ:ギャグ×架空のスポーツ
タイトル:第29回キューブ・ボクシング全国大会

 今まで真面目な話が続いたので、一旦ギャグに振ろうと考えた。結果、架空のスポーツを考えるに至った。箱という言葉から連想される英単語、「キューブ」と「ボックス」。両者を合わせた結果、ルービックキューブを回しながらお互いに蹴りあう摩訶不思議なスポーツが産まれた。パクっていいよ。

 記憶にあるコロコロコミックのバトルをイメージしながら描いていった。何しろお題がトンチキなので、こういう時は真面目にスポーツさせるだけでも面白くなる。とはいえ、蹴りが続くだけでも単調だし、かといってルービックキューブに実はあまり詳しくないので、最終的に投げ合う戦いになった。

 この手のホビーは割と頑丈にできているので、仮にぶつけても想像以上に破損はしないと思う。むしろ、それだけ頑丈なものなのだから、そんなものを人に向かって投げるのはやはりよくない。絶対ダメ。しかし、勝負に勝ちたいという欲求は、スポーツマンシップをむしろ裏切るほどの熱量があるものだと私は考えている。本来人はそういうものだからこそ、ルール無用の地下試合に人は危険な喜びを見出すのだし、蓋をして正々堂々と戦う者はより輝いて見えるのだ。……今回はそういう神聖さより、欲望をぶつけあうような戦いになった。



お題④ ささくれ

お題:ささくれ
テーマ:ヤクザノワール+SF
タイトル:鉄のささくれ

「どんなお題を出すんだ!?」枠。色々悩んだ挙句、頭に浮かんだのがささくれをやたら気にしている傭兵ヤクザだった。ものぐさな性格だと、本当はよくないのにささくれを取ろうとしがちだ。その上不器用だと中々取れなかったりする。なんかそういうフワっとしたところから始まり、SFヤクザノワールになった。

 トゲトゲした印象から、敵は刺々しいヤツになった。色んな変遷を経てトゲトゲできる奴になった。一方のヤクザは普段はヤクザアーツを使って戦う。格好いい。また、指に出来る方のささくれは、偶発的に発生してしまうものだ。よってSFささくれ存在もそういう悲しい生命になった。

 時代的に死に行くヤクザの境遇を、金属人種の台頭による絶滅に重ねて、色々とアレンジしてこんな作品になった。やや忍殺の影響が強すぎる気もする。それでも味のあるいい作品になったと思う。弟分と兄貴の関係はどんな作品でも好き。



お題⑤ はなさないで

お題:はなさないで
テーマ:サイバーパンクレース
タイトル:ぺガススの尾を追って

 お題をこねくり回した枠。全部ひらがなだったので、明らかに好きに解釈してくれと言わんばかりの企画だった。色々友人と話した結果、『ハナ差、ないで』という案が出た。私は競馬について何も知らなかったが、どうやら普通のレースでも代用できそうだったので、そう解釈して書くことにした。

 走るというのは、根源的な人間の行動の一つだ。あらゆる手を尽くして早く走りたい人はいるだろう。いくら試合に出られないとしても、世のランナーはよくドーピングなどを我慢しているなと感心する。今回はあらゆる手を尽くす方を書いた。不正感が出ないように、相手はジェット機よりも早い化物になった。空気抵抗とかは考えないことにする。

 主人公のサイバネは色んなものをオマージュした。本当にあらゆる手を尽くしてほしかったので、最後は滅茶苦茶な手段も使う。先にも書いたが、勝負事に本気を出すとは、究極的にこういうコトだと思う。命の限りを尽くして、目標に手を伸ばして……そういう思いがあり、タイトルは敢えて『ペガサス』でなく『ぺガスス』、星の方になった。勝負に命を燃やし尽くすというのもまた、現代では本当に体験しがたい、理想的な終わり方だと私は思う。理解できない人もいるだろうが。



お題⑥ トリあえず

お題:トリあえず
テーマ:ファンタジー×食
タイトル:回食のエルフ

 お題をこねくり回した枠。『トリ』だけカタカナで、明らかに好きに解釈してくれと言わんばかりの企画だった。ひらがなに着目し、『和える』という言葉を深堀した結果……ふつうはありえないだろう『鶏和え』というアイディアが浮かんだ。なお、私は自炊能力が皆無であり、料理の知識もない。次の日には認識が覆るかもしれない。

 鶏を和える以上、野菜がメインだろう。『エルフは採食が基本だからね』。そんな声が聞こえた気がしたので、エルフが主役になった。だったらいっそとファンタジーになった。恐るべきサンダーバードを倒し、食べてスキルを手に入れる……そんな構想で書き始めた。

 書き始めながら思ったが、世のエルフはだいたい善側だという思考が過ぎった。悪いヤツはダークエルフになるか。そういうわけで最後は少し捻ることにした。『トリあえず』書いた小説だが、鳥から離れてシリーズ化できるかもしれない。面白い感触を得た一作だった。



お題⑦ 色

お題:色
テーマ:サイコホラー×芸術
タイトル:赤の残流

 第2回に書いたホラーが恋愛色強めだったので、違ったテイストで書きたくなった。色で連想したのが血液アートだ。昔読んだ小説で、採血された患者が、抜かれた血の赤に興奮するという話があった。あれを自分なりに解釈したいと思った。真面目にやりたかったので、今回はサイコホラーの形式になった。

 今回、フルイドアートというものを題材にした。実在する画法で、友人が一時期かなりハマっていたのを覚えていたので、取材という名目で色々と聞かせてもらった。やり方からキャンバスサイズ、実際に使う量とか……断っておくが、ちゃんと上記経緯を話した上で質問している。ごあんしんだ。

 芸術描写やそれに絡めたホラー要素は良かったと思う一方で、警察描写が非常に乏しいなと思った。ふつうはこんな1対1で話さないかもだし、実際には調書を取りながら、情緒的でないやり取りになるだろう。フィクションと言えばそれまでだが、サイコホラー……現実に根差した話を書く以上は一定のリアリティを張りたいと思った。反省点だ。



お題⑧ めがね

お題:めがね
テーマ:童話+終末もの
タイトル:眼鏡と鏡とゴルゴオン

 はじまりが最強のバッファローだったので、今回は最強の眼鏡っ子を書くことにした。石化させたかったのでゴルゴーンにした。ジャンルを考えた結果、まだ童話書いてないなと思ったので童話ジャンルになった。そういうわけでゴルゴーン終末童話だ。

 射程が長いゴルゴーンというのはまず滅茶苦茶強いと思う。童話的な視点でモリモリ盛った結果、空と海と大地を滅ぼすまでに至った。あんまり破壊的にしすぎると物語ではなくなるので、眼鏡を手に入れるまでの動機……視力が元々弱いということにして、洞窟暮らしから始めることにしたのだった。

 ……実のところゴルゴーンという名前は石化を連想させるために付けたもので、彼女の正体は最後まで謎だ。ヒトの姿をしているが、彼女の石化は像にするとかでなく、完全に石にしてしまうので、結局彼女はヒトの姿を知らずに死んでしまった。とても神話的だと思う。世界にとっても娘にとってもバッドエンドだが、個人の視点にすることでちゃんとした物語……パルプになった。童話を書いたのは初めてだが、中々はっちゃけられたと思う。

 

未来へ……


 私はふだん、考えてから書くタイプだ。頭の中の構想通りに書き進め、その途中で話がドライヴして話が離れていく場合も、元の流れとどちらが良いかそれなりに理由を付けて書いている。そういうわけで、1作書くのにどちらかというと時間をかけるタイプだ。2,3日で書くとか、よっぽど時間がない時でもあんまりない。

 そういうわけで、今回は常にパルプ衝動に駆られながら書くいい機会だった。イラストで例えれば、連日1時間ドローイング――ワンドロ企画に参加していたようなものだ。短時間のなかで書かなければいけない都合、手癖や身に着いた能力がそのまま作品の出来になる。自分が何を書きやすいとか、この辺り詰めると楽しくなるなとか、そういう事を連続して考えることができた。

 また、そうやって絞り出していったことで、どの作品も粗削りながら個人的に良い出来になったと思う。そもそも、実は皆勤賞を狙っていたわけではなく、満足いくクオリティに達しなかったらその回は参加をやめようとか、そういう事も考えていた。にも関わらず、全て違うテーマやジャンルで書くという縛りのままに、全八回全てのお題に挑戦できた。中々の快挙だと我ながら思う。

 今回培った経験を元に、新たなパルプ作品に臨んでいきたいと思う。しばらくNoteとカクヨムの二足草鞋が続くと思うが、応援いただければ幸いである。差し当たって、4月1日は何か投稿するかも……?





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