見出し画像

初夏の独り言。

夏の匂いがしている。扉が開く毎にしめっぽい土の匂い。新幹線の窓からの景色には大きな入道雲。もうこんな季節なんだ。年々時が過ぎるのが早く感じる。30を過ぎたら早いよ、と先輩によく言われたっけ。そんなことを言ったら、先輩たちはどんなスピードで季節を感じているんだろう。ちょっとこわいや。

質のいいざわざわ感を胸に抱きながらスーツケースを引く。自然と背筋は伸びて、歩幅が広くなる。カラカラという音が小気味いい。もう午後5時をまわるけれど、空はまだ明るい。西陽が暖かい。むしろすこし暑いくらいだ。最近開通したこの駅での乗り換えは、まだあんまり慣れないし、普段なら雑踏に負けてもう一駅乗って、その後すぐにタクシーの中、1人の世界に篭ってしまう。けれど今日はなんだか、人混みが気にならない。右に左にあるたくさんの目がぎょろぎょろ動くのが、なぜだかこわくない。みんなそれぞれの方向に向いていて、その奥にそれぞれに向けた温かみさえ感じる。へんなの。

人は人の言動によって傷つくけれど、人の言動によって救われる。他人からの影響なしでは、日頃こんなに感情を揺さぶられることはないし、良くも悪くも味気ないんだと思う。近況から比べると、今私はきっと少し心が満たされている。ちょっとだけ、人がこわくない。一時期の無気力や焦燥感からは解放された感覚にある。確かな言葉や事象はなくていい。背中に感じる太陽があったかいと感じられる、こんな日が続いていくように、もっともっとこの世界で生きていて居心地がよくなっていくように、向き合いたい人とはしっかりと向き合って生きていこう。

ながーーーい独り言でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?