酒を飲む日々

空を見る。曇っている。なんだか心に挟んで使う釣り重りを垂らしたようなちょっとしたけだるさを感じながらいつものスーパーへ通う。

正面から見ると目がちょっと張るような色とりどりな缶が並ぶ酒売り場へ自然と足が向かう。

とくにこれといって飲みたい酒があるわけではない。ただ漠然と足がその空間へと向かっていく。それって…と他人からの嘲笑を背中に感じながら目はそのカラフルな夢の塊へ吸い込まれていく。

これ知らないなぁ。ふと手に取る黄色の缶。よくあるようで見たことがない押しつけがましいぐらいに目につくNew!の文字。新しいものに目がない人間のサガだろうか、自然と手に取ってしまう。

ずしっと重く指に軽く食い込むビニール袋を抱えながらふらっと暗闇の街頭輝く、家路へとつく。今日は何を作ろうか。とくに食べたいものがあるわけではない。ただ、何か作らなければとふわっと背中にまとわりつく不快感を伴いながら手の中にある期待感に頭を迎えながら考える。

そうだ、鶏肉があった。照り焼きにして食べよう。醤油とみりんと酒。そして砂糖を足して煮立たせて完成。とても簡単だがおいしい。ずぼらな私にはとても助かる一品だ。

プシュ!軽快な音をたてながら黄色いラベルの缶を傾ける。

ふむ、爽快なのどごしだ、ふわっと柑橘の香りが抜けていく。ただそれだけだ。

飲み進めてるうちにふわっと頭に煙が昇っていく。

あぁ、これだ、味だ風味だ、そんなことはどうでもいい。この突き抜けていく感覚がたまらない。

酒の味だ、なんだといわれてもこの酒はそういう酒なのだ。ドライで頭を揺さぶるようなアルコール感。人を夢の世界へと導くためのカギ。

あぁあ、今日も悩みも、不安も、嫌悪感もすべてを丸っとアルコールの海へと流し込む。

日々を生きるということはそういった雑多なものをいかに消化していくかだ。悪くない、悪くないんだ。そう思いたいんだ。

そんなけだるさを噛みしめながら今日も終わる。今日もどうにか過ごせた。明日もどうにか向かっていかないといけない。

キラキラと輝く未来を夢見ながら今日も酒を飲む。酒が好きだ。これは現実を薄めるための薬ではない。好きだから飲むのだ。そう心に刻みながら今日も夢を見る。明日は何を飲もうかな。重い現実というカーテンを閉じて今日も眠ろう。明日の酒はおいしいだろうか。

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