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隕石

7月最後の朝
”地球に隕石が衝突するとしたら”
朝のワイドショーではにぎやかにそんな話をしている
隕石は◯時間前に観測されて
◯時間後には日本の東京が落ちることが発覚して
途中から観たせいでわからないけどたぶんそんな話。

わたしはシリアルをほおばりながら考える
◯時間後に京都に隕石が落ちるとなったらわたしはどうするだろう
職場にいる確率が高いんじゃないかな
そしたらたぶん、東京の本社の指示を仰ぐことになるかな
隕石なんて落っこちた記憶がないからきっとよくわからないきもちになるんだろう
だからとりあえず会社の指示を仰ぐんだ
隕石なんていう途方のないものに乱されるわたしの人生があって
べつに全然わたしの人生じゃない会社がわたしの生きるを導くんだ
すぐに新幹線でもとって逃げた方がいいのかもしれない
でも京都にいる人みんなを避難させるだけの新幹線のキャパはあるのかな
国がヘリコプターみたいなものをチャーターしたりするんだろうか
とりあえず会社なんて関係ない身の安全を確保しないといけない
なりふりかまわず逃げなくちゃいけない
そんなふうにできるかな
かたおもいしているすきなひとに連絡したりするかな
そんな窮地に、かたおもいなんだから、連絡なんて要らないのかな
逃げ遅れたらどうなるんだろう
京都にぽっかり穴が空いて、

隕石が近づいてくる

そんなこと考えていたら
同居しているフィリピン人のお母さんみたいな女の人が
部屋のクーラーがつかなくて困っていると話しかけてきた
かたことの日本語で、身振り手振りもいっしょに
その顔はひどくひどく困っているように見える

こんなに暑いんだもん
クーラーがないと眠れないよね
眠れないと働けないし、死んじゃうよ
今日中に直してもらえるかな
9:00には業者さんが来るはず
今晩使うクーラーの修理だ

隕石が音を立てて近づいている気がする

ふと気づくと蝉がけたたましく鳴いている
地面にはたくさんの穴ぼこ
ここで過ごす蝉たちの年月
7日経ったら死んでしまうんだろうか
明日も、明後日も、穴ぼこは増えていく
蝉の声は代わる代わる
かわるがわる
汗が首筋を流れる
今日もひどく蒸し暑い
けたたましい鳴き声

隕石がごうごうと音を立てて近づいている気がする

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