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家から出ない鳩時計

在宅勤務が続いて、1ヶ月以上が経った。

この間、本当にほとんど家で仕事をしている。自分の場合、元々Macに向かってデザインしていることがほとんどなので、リモートワークでも何とか成立している。

リモートワークは、会社にとっても社会にとっても実は良いことだらけだ。会社にとっては、通勤手当が抑えられるだけでなく、リモート主体になれば「デスク」や「社屋」といった、いわゆる「不動産」も必要なくなる。

社会にとっても、ストレスの元である通勤ラッシュが減少し、それに伴ってCO2の削減にもつながるはずだ。実際、中国やヨーロッパでは、今回のことで空気がキレイになっているらしい。

また、働く人にとっても、家族と共に過ごす時間が増えるというメリットもある(それによって喧嘩も増えているという噂もあるが)。

もちろん、今回のCOVID-19の問題に関しては、言わずもがな人との接触を避けることが、ウイルスの拡散防止に効果が高いとされている。

しかしながら、ここまで外出の自粛を呼びかけられているにも関わらず、日本では未だに外を出歩く人が後を絶たない。もちろん、一歩も外に出るなというわけではないけれども、やはりどう考えても不要不急の外出は避けるべきだ。

日本では、偶然まだ爆発的なウイルスの拡散にはなっていないものの、中国や欧米の先行事例があるわけだから、そこに学ばない手はない。国の方針がどうであろうと、それぞれの立場で自分たちにできる防衛策を、一人一人が意識するべきだと思う。

今は、世界規模で「ガマンの時期」なのだ。

そんな中、デザイナーである自分にも何かできないかとずっと考えていた。実はこの感覚は、少し前に経験した覚えがある。そう、震災のときだ。

世の中に危機的な災厄が起こって、人々の生活が脅かされ、衣食住もままならないような事態に陥ったとき、デザイナーという職業にできることは、なんて少ないんだろうと、あのとき痛感した。

しかし、あのときと今回とでは、少し状況が異なっている。被災地とそうでない所に大きな格差があったこと、放射能という物理的に防ぐことが難しい敵が相手だったこと。そして何よりも、予測もできない巨大な力によって、一瞬にして多くの命が奪われてしまったことが、大きく異なっている。

今回のことは、本来なら予測も防御もできるはずの敵だ。それも、誰にでもできる簡単なことで、被害を最小限に抑えられるはずのものだ。しかしながら、ウイルスの魔の手は、もはや身近なところまで迫ってきている。

「とにかく今は家にいよう」

このメッセージを、なんらかの形で多くの人に届けたい。自分にできることなんて、本当にちっぽけなことかもしれないけれども、やらないよりはやった方がいいに決まっている。

ただそれも、説教くさくない方がいい。恐怖訴求もよくない。それよりも、こんなときだからこそ、どこかユーモアがあり、人々の興味をそそるようなものの方ががいい。できれば、ちょっとチャーミングな方がいいかもしれない…

そこで考えたのが、これだ。

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家から出ない鳩時計。

本来1時間おきに「ぱっぽー」と家から出てくるはずの鳩が、出てこない。ただそれだけのビジュアルだ。鳩だって家から出ないのだから、あんたも家にいよーぜ、と。

最初思いついたときは、ただ「そのワンビジュアルがあればいいか」ぐらいに思っていたのだが、それだけだとどうも弱い気がする。

グラフィックの弱点は、その「消化スピードの速さ」だ。「一過性」と例えてもいいかもしれない。いくらキレイなビジュアルを作ったところで、一度見て「ふーん」で終わってしまっては、まったく意味がない。

特に、日本人はとにかく飽きっぽい。こうした社会的なメッセージは、多少嫌われようとも、飽きられようとも、愚直にしつこく訴求することが大切なのではないかと思う。

そこで考えたのが「時報」だ。

Twitterを活用して、毎時0分に繰り返しツイートする。フォロワーからは嫌われるかもしれないが、そんなことは構っていられない。ただ、できるだけ飽きられないように、工夫は必要だと考えた。

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細かい話だが、時間帯によって微妙に色味が変わるようにしてみた。また、時折フキダシを付けて、鳩が何か言っているような時間があったりなど。

これを4/5の朝から、定期的にポストするようにしている。まだまだ予断を許さない状況の中、しばらくは続けてみるつもりだ。

たったこれだけのことが、何になるかなんてわからない。それほど大した効果もないのかもしれない。でも、しつこく続けることで、どこかの誰かにとって、少しでも何かを考えるキッカケになることを期待している。

もしも賛同してくれる方がいたら、できればこの時報を拡散して欲しいと思う。

明日も家にいよう。

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今こそ、みんなが余裕を持って面白いことを考えるべきときなのではないかと思います。在宅での読書にぜひ。

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