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#7 小さな声を拾うことの大切さ

今回の雑談相手は、私の中高時代の同級生でライター・編集者の玉居子泰子(たまいこ・やすこ)さん。東京に住む彼女は、「家族会議」をテーマに連載を書いたり書籍を出したりしています。東京の様子や仕事のことはもちろん、同じ2児の母親として子どもたちとどのように接しているか、あれこれ聞いてみました。


雑談日 2020.4.18


―ニュースを見ると、東京は大変そうだよね。大丈夫?

大変だよー。東京といっても私が住むのは郊外だから、人の少ない時間帯に散歩に行ったり公園で身体を動かしたりはできるけど、毎日の買物もちょっと怖いなと思ってる。

―仕事はどう?

フリーランスってもともと仕事の波があるし、あまりダメージはないけど、海外の出版社と進めていた案件が止まったり、インタビューがなくなったりとかはちょいちょいあるかな。

―オンラインの取材もすっかり定番になったというか……なかなか慣れないけど。

やっぱり対面の方がいいよね。その場所の雰囲気みたいなものは行かないと感じられないと思うし。

―仕事の面で、今後変わるかもって感じることはある?

知り合いのライターさんは海外に行くのが好きなんだけど、「オンライン取材が浸透したら、海外にいながら仕事ができる」って前向きに捉えてたよ。私も今までは1時間以上かけて都心に出てたし、取材が終わった後はケーキ食べたりして無駄な経費も使ってたから、お金も時間も節約になるなとは思ってる(笑)。

―わかるなー。私も東京出張の最後は必ず空港でビール飲むもんなぁ

でも、そういう無駄なことも含めて、この仕事が好きなんだと思う。仕事ってお金や名誉のためだけじゃなくて、自分の生き方とからめて生活を回す要だから。コロナは「何が自分にとって必要なのか」を考える機会だなと思ってるよ。

―コロナが騒がれるようになって2ヶ月くらい経つけど、気持ちの面では何か変化があった?

3月はまだ「子どもたちとのんびり過ごせるしラッキー」くらいな感覚だったけど、4月に入ってからは「何か嫌な感じだな」と思うようになってきたなぁ。それに加えて、家族に近い人が体調不良になったことも大きくて、もしコロナだったら……と思うと、身動きが取れないほど怖くなって。人間ってリアルに「死」が近くなったり恐怖心が募ったりすると、前向きな気持ちにはとてもなれないんだなと思った。

―それは不安になるよね。でも、そういう人って見えていないだけで、実は多いんだろうなと思う

そう、地味に傷ついている人っていっぱいいると思うし、だからこそ大事にしないといけないんじゃないかなと思ってる。特に子どもね。

―やすこのお子さんはどう?

うちの息子は毎日欠かさずニュースをチェックしてるんだけど、このまま対策がなければ42万人が亡くなるっていうニュースが出た時に、「42万人も亡くなるなら、そのなかに僕も入るのかなぁ」ってボソッとつぶやいていて。そういう小さな声をちゃんと拾わないといけないなってすごく感じた。

―うちの子も、何人感染したとか、情報だけは知ってるんだよね。でも、コロナに対して本当のところどう感じているか、ちゃんと聞けてないかもって今の話を聞いて思った。

新聞の見出しやtwitterのトレンドって一瞬で目に入っちゃうから。内容をちゃんと理解できていないまま、見出しの強い言葉で不安になってることもあると思う。情報を噛み砕いて伝えるのも、親にできることかもしれないよね。

―2ヶ月近くも休校だと、親としては「この期間にちょっとは意味のある過ごし方をしてほしい」ってつい思っちゃうけど、大人以上に子どもたちもいろいろ感じてるよね、きっと。

いろんなコンテンツも生まれてるし、休校中のこの時にしっかり勉強させたいっていう親の気持ちはわかるけど、そういうの疲れるよね(笑)。子どもたちが不安に感じている気持ちを、逃げ場のないまま別の方向に紛らわせるんじゃなくて、ちゃんと向き合って聞いてあげたいな。

(雑談終わり)


雑談後、「コロナについて自分はどう思っているんだろう」とぼんやり考えていました。健康や仕事、休校のことなど、断片的にはいろいろ感じているものの、正直私もうまく言語化できません。大人の私でさえもやもやしているのだから、子どもたちはもっとよくわからない気持ちを抱えたまま、毎日を過ごしているんだろうなと思います。
多くの県で緊急事態宣言の解除が発表され、経済も教育もこれからすごいスピードで元に戻ろうとする動きが強くなりそうです。コロナが落ち着いてひと安心、ではなく、そんな時だからこそ、小さな声をちゃんと拾うことが必要だなと感じています。

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