往路

高速道路を走るトラックの屋根と屋根を心が飛び移って行くのを他人事みたいに見ていると薄墨で描かれた山が日に映えて緑を光らせ始めて眩しいから私はカーテンを閉めてそれでも遮れない光の欠片だけを口許で受け止めて精一杯になっていたら急にマリリンモンローが耳元で歌い始めたから

醒めたフリをしてみても
それは言わないで
昔知らない間に同じように聴いていた歌を
それは聴かないで
馬鹿みたいに陽気なジャズ
涙を流させてばっかりじゃないか
青空はどこまでも広がってしまって
白い闇をどこまでも
どこまでも
トラックの屋根の反射光
狂わせる
高速道路を捻じ曲げる
木々が覆い被さる
無理をしちゃったら
駄目
合図を待っている

トンネル
ゴゥと音がイヤホン越しに聞こえる
イヤホンは大音量で
信じるなと警告する
私は聞きたくない
聴きたく無い
信じたい
出来ない
知りたく無い
私は識りたくない
案ずるなと鎮撫する
イヤホンは猫撫声で
ゴゥと音がイヤホン越しに聞こえる
トウメイ

またトンネルに
長いトンネルに
眩しさが少し懐かしい
ここを抜けたらまた
暗闇が少し懐かしい
きっとそうでしょう
懐かしい音がする
夕方の音


そんなところに連れて行かないで!

トラックの反転した文字

!でいなか行てれ連にろことなんそ


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