月に溺れる

どこかで聴いたような聴いてないような月の歌をなんとなく口ずさんだ。
今夜は月が綺麗ですねなんて誰も言っていなかった。
星月夜の青さに溺れてしまってはいけないよ。
雲がこの月を覆い隠すその一瞬だけ我々は呼吸ができる。
そこで寒さを堪えている君の上にも月が煌々と迫ってくる。
星月夜の青さに溺れてしまってはいけないよ。
気持ちは全部隠して月を見ていよう。息を止めていよう。
何十億年後かに月が無いとしても。
その何百億年後かに何もなくなって月がまた出来ていたとしても。
ふと見上げた何者かが息を吸えるように。
どこかで聴いたような聴いてないような月の歌をなんとなく口ずさんだ。

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