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ISHIYA'sインタビュー〜VESPERA Drums.EIJI「ヴィーガンカフェを目指してるんじゃなくて、飯屋として確立したい」

 第一回目のインタビューとなるのは、D.S.B時代には多くの海外ツアーに行き、海外へ日本のハードコアを伝えてきたドラムスのEIJI。
 現在VESPERAというバンドで活動しているが、バンドと同名のヴィーガン飲食店も経営している。

 ヴィーガンとは、肉・魚介類、卵、乳製品、はちみつなどの動物性食品や、革、ウールなどの動物性の製品を一切使用しない生活を、極力可能な限り実践する生き方で、家畜として消費されてしまう生命を救う意味のほかに、森林伐採やプラスチックの海洋汚染などの環境破壊、資本主義社会の抱える問題や、あらゆる差別問題を止めるために誰でもできる方法として、世界中にいる多くのPUNKSたちが実践しているライフスタイルである。

 俺自身も約2年ほど前にヴィーガンになったのだが、東京に住んでいてヴィーガンのPUNKSならば、VESPERAは絶対に外せない場所である。何度かVESPERAに訪れた俺は、その料理やEIJIの理念に深い感銘を受け、久々に理解し合えて楽な話のできる人間と出会った感覚になったために、バンドとしてというより個人としてインタビューを行った。

 このインタビューを読んで、一人でも多くの心やさしき人間が増えてくれたら、少しずつ地球や社会などの世の中そのものが確実によくなっていくだろう。
 ヴィーガンという言葉で頭から拒否しまう人もいるだろうが、そうんな人にも読んで欲しい素晴らしいインタビューとなった。
 もしこのインタビューで「何か」を感じたならば、ぜひVESPERAに行って欲しい。


店舗はこちら
VESPERA 東京都文京区千駄木3丁目44−1
Google MAP
HP https://ameblo.jp/vegan-vegan/

※写真の料理は、すべて動物性不使用のヴィーガン料理です。

 高円寺時代のコピー

「ヴィーガンカフェを目指してるんじゃなくて、飯屋として確立したい」

—VESPERAっていつ頃からやってるの?

EIJI  10年ほど前に初めて実店舗を持ちました。でもVESPERAの始まりは、実店舗を持つ以前にあったのかなと思います。
 自分のバンドでの海外ツアー以降、知り合った海外PUNKSから訪問を受けるようになって、友達が友達を紹介する感じで「東京観光するならEIJIのとこに泊まれるぜ」っていう情報がバルセロナパンクシーンに流れてたみたいで、会ったこともない連中が泊まりに来るようになったんですよ(笑)。
 彼らの大部分がヴィーガンで、日本の家庭の味のヴィーガンアレンジ料理を作ると喜んでくれて、その反応を見るのが楽しかったですね。VESPERAの根っこの部分は、それが始まりだったんじゃないかなと思います。

—EIJIがやってるバンドもVESPERAじゃん?名前の意味とかその名前にした理由みたいなのはあるの?

EIJI VESPERAはエスペラント語とラテン語圏の単語で、意味は夕暮れとかイブっていう意味です。沈みゆくものと何かの起きる前夜って相反するエネルギーが込められていて面白いなと思って。
 英語に支配されるのも嫌だし、かといって日本語名も難しいみたいな理由もありました。
 自分のやってるPUNKバンドもヴィーガンカフェも、同名で並行することで「自分が受けた影響に対して正直かな?」と思って店の名前も同じ名前にしました。

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写真:VESPERA高円寺時代

—なんでヴィーガン料理を始めたの?

EIJI 好奇心からですね。思想はゼロでした。カナダ人PUNKSの友達が東京に来るっていうんで、焼き鳥とかラーメンとか食べに連れていってやろうって色々考えたんですよ。
 でも彼らはヴィーガンだったので、全て拒否してコンビニでおにぎり買ったりとかしてたんですよね。
「こいつら日本に来てるのにもったいないな」とか思ってたんですけど、その頑なさに好奇心を刺激されて「ヴィーガンってどんなもんだろ?」って真似してみたのが始まりです。
 菜食レシピの本を色々買ってみて自分で作り始めました。理屈は後付けですね(笑)。
 真似事を始めていったら、好きなPUNKバンドのメッセージや世の中のシステム、自身の体調など、バラバラだったパズルが噛み合ってきたんですよね。
「理に適ってるな」って思えて、今度は菜食生活をやめる理由がなくなりました。
 やってみてダメだったら辞めればいいや、って適当な気持ちで始めたんですけど、今では肉、魚を使用することの方がハードルの高さを感じます。

カウンター今

写真:現在のVESPERA店内

—最初はやってみてからだよね。俺の場合も知識では知っていたから「じゃあやってみちゃおう!」ってのが始まりだし。

EIJI このコロナ禍で弁当を出さざるを得なくなったことによって、ヴィーガンを知らないお客さんが飛び込みで来やすくなって、お試しヴィーガンみたいな感じでできるようにはなりましたね。
 お店に入って来るには、敷居をまたいでヴィーガン側のテリトリーに入って来なければいけない。それはライブハウスのPUNKのライブを観に行くときに、PUNKっていう囲いの中に飛び込まなきゃいけないっていうのと同じで、来づらい部分もあると思うんですよね。
 音楽だったら配信だったりYouTubeで一曲聴けるみたいなお試しがあるけど、食べ物の場合にはお試しが弁当だったりするわけですよ。そういう役割がこの一年で果たせたかな?っていうのはありますね。

—食生活版Band campみたいな感じか(笑)。コロナ禍で結構弁当は出たの?

EIJI 4月5月は弁当バブルが来たんですけど、あの頃ってウチが凄いんじゃなくて全体が凄かったんですよね。
 3食家で食わなきゃいけないから、外に出る理由が欲しいって人もいるんですよ。弁当買いに行くって言えば外出許可されるから、そういうニーズと合致していたのを勘違いして「こりゃ行けるんじゃねぇかな?」と思ったら、6月になったら弁当バブルが崩壊して(笑)。

—でもそこで掴んだお客さんはまた来るよね。俺が入ってるFacebookの「ヴィーガンの食卓」っていうグループでVESPERAのことあげたら「テイクアウトで買ったことあります。すごいボリュームですよね。今度は店で食べたいと思います」って言ってる人もいたし、東京のヴィーガンの人たちの中じゃ結構有名だと思うよ。

EIJI 菜食メニューを提供するお店の多様性を凄く出したいんですよ。渋谷の「真さか」(渋谷パルコB1にある、ヴィーガン中華料理店)さんみたいに、ヴィーガンで面白いことやってる店って増えてきていると思います。独創的なスタイルの流れがヴィーガン飲食店にできてきたら、自分はトラディショナルなヴィーガンカフェに変えますね。とにかく主流からは外れたいんですよ(笑)。

—VESPERAの看板メニューのファラフェルも、ファラフェルブラザース(六本木、渋谷、恵比寿にあるヴィーガン料理店)がやり出したじゃん?でもファラフェルは外せないんだろ?

EIJI そうです(笑)。最初に海外で食べたファラフェルに衝撃を受けましたからね。今はもうやってないんですけど、最初の頃は和風ファラフェルサンドっていう甘ダレのをやったんですけど、結構ウケて。ファラフェルの探究はやめないです。

ファラフェルと唐揚げ

写真:ファラフェルと唐揚げ

—ヴィーガン対応で飯食えて酒も気軽に飲める店って、あってもちょっと高いし、やっぱりカフェっぽいから酒飲む感じでもないしね。その点VESPERAはいいよ。美味い飯食えるスナックみたいだし(笑)。

EIJI スナック!それです!コミュニケーションっていうのは提供する食事同様に重視しているんです。VESPERAの高円寺時代は、広過ぎてお客さんとのやり取りもホールスタッフの子を介してだったので、お客さんの嗜好を覚えられなかったんですよね。今はお客さんと至近距離なんで、カウンターだけの店にしてよかったです。
 スナック的アプローチは開拓していきます!何にも食わないで1杯飲んで帰ってもらって構いません(笑)。

カウンター

写真:酒類の品揃えも豊富

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30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!