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ANOTHER ATTITUDE~#2 東アジア反日武装戦線ドキュメンタリー映画「狼をさがして」

映画「狼をさがして」 予告編
https://youtu.be/cOCsGhI4Nts

 1974年から1975年にかけて、連続企業爆破テロをおこなった「東アジア反日武装戦線」の若者たち。事件から45年が経ち、なぜ彼らはテロを起こしたのか?彼らの言う反日とは?
 韓国人監督キム・ミレによって、日本を揺るがした事件を追うドキュメンタリー。
 第21回釜山映画評論家協会審査員特別賞、第40回韓国映画評論家協会独立映画支援賞受賞作品。
公式ホームページ http://eaajaf.com

 2021年3月27日より、渋谷シアター・イメージフォーラムで公開されている「狼をさがして」を観に行ってきた。
 以前から東アジア反日武装戦線に関しては関心があり、それまであった左翼闘争とは全く違った新しい形で、国家に戦いを挑んだ当時まだ20代の若者たちに強く惹かれて、関連の書籍を何冊か読んでいた。
 すると1972年のあさま山荘事件による連合赤軍の敗北と、日本赤軍の海外脱出などもあり、世間的にも左翼闘争内部的にも闘いに一定の終止符が打たれ、左翼闘争は下火になっていくような雰囲気も漂っていた。しかし新たな闘争の形を模索している時期でもあり、それまでにあった組織間の共闘ではなく、個別の組織で独自に動いていく闘争に変化していた時期とも言われている。
 しかしそこに、今までとは違った新しい形の「組織」と呼ぶには違和感を覚えるグループが誕生した。それが東アジア反日武装戦線である。

 狼、大地の牙、さそりという3つのグループで構成される東アジア反日武装戦線だが、その実態は思想に共鳴した人間たちが、自然と共闘を表明し各グループが独立して活動を行う。
 既存の左翼組織などとの繋がりもないと言われ、指導体制もない。既存左翼の攻撃対象が国家権力そのものであったのに対し、大企業などの資本を権力と見て攻撃を行うといった、それまでにあった左翼闘争組織とは違う視点を持った新しいグループだった。
 指導体制がなく、ひとつの理念や思想に基づいて共鳴した人間たちが活動を行うというグループは、現在世界で行われているエコテロリストと呼ばれる団体のA.L.F(Animal Liberation Front 動物解放戦線)という、動物実験などに反対するグループも同じ形式をとっていて、こうしたゲリラ的要手法は足取りを掴むことが難しく、権力や体制、大企業や資本家、国家などの自らよりもはるかに巨大な力に挑む場合に適した手法と思われる。

 こうした若者たちが大企業に立ち向かい、爆弾テロを敢行し、日本を揺るがす大事件を次々と起こして行った。
 そして現在、東アジア反日武装戦線のメンバーや支援者の思いはどのようなものなのか?彼らはなぜそのような事件を起こしたのかを、韓国人監督の視点で捉えた珠玉のドキュメンタリー作品である。

・ 「狼をさがして」

 キム・ミレ監督の国である韓国での、日本企業による日雇い労働者への扱いの酷さを知り、日本の大阪釜ヶ崎(西成)のあいりん地区での日雇い労働者を撮影し始める。韓国での日雇い労働者の扱いは非人道的であり、日本で撮影を行ううちに、それは日本でも変わらないことを知る。
 そんな頃にひとりの労働者から、東アジア反日武装戦線の存在を聞かされ、彼らの思想をたどるドキュメンタリーを撮り始める。

 今でこそメンバーには、逮捕され収監されている人間や、死んでしまった人間、日本赤軍によるハイジャック事件の開放要求に対する超法規的措置により海外逃亡をした者、捕まらずに逃げ続けている人間などもいて、支援者もいるために事件の概要があきらかになっている。そのため足跡や事件の内容をたどることができるが、当時東アジア反日武装戦線は全く謎のグループとして警視庁でも特定するには時間がかかったようだ。

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30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!