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馬なのか鹿なのか

『馬鹿(バカ)』という言葉の語源にはいくつかの説があります。

サンスクリット(梵語)説
史記の「指鹿為馬(しかをさしてうまとなす)」の故事を語源とする説
若者説
破家説
馬家説
はかなし説
をこ説
ぼけ説

Wikipediaより

その中でも私は「史記の故事説」を長らく信じていました。
横山光輝著「項羽と劉邦」にそのシーンがあったからです。

趙高欲為亂、恐群臣不聽、乃先設驗。持鹿獻於二世、曰「馬也。」二世笑曰、「丞相誤邪。謂鹿為馬。」問左右。左右或默、或言馬以阿順趙高、或言鹿。高因陰中諸言鹿者以法。後群臣皆畏高。

宦官の趙高が、政治を簒奪しようと企んだが、群臣が従わないのに用心して、まず試してみることとした。二世皇帝胡亥に鹿を献上して「馬です」と言った。皇帝は笑って「丞相よ、間違っているよ。鹿を馬と言っている」と言った。そしてそこにいた家臣たちに聞いた。家臣らは、おし黙る者あり、中には趙高におもねって馬という者もいたが、鹿と言ったものもいた。趙高は鹿と言った者を法に引っ掛けてひそかに陥れた。その後、群臣は趙高を恐れしたがった。

司馬遷『史記・秦始皇本紀』

なるほどなーと納得していたのですが、この故事から生まれた「指鹿為馬」は、

自分の権勢をよいことに矛盾したことを押し通す

https://gogen-yurai.jp/baka/

という意味であり、現在使われている『バカ』とは違うので語源ではないとされているようです。あくまで『馬鹿』は当て字とのこと。

そうかー残念だなーと思いつつ、変なことを考えてしまいました。


ショートコント「馬なのか鹿なのか」

とある会社の一室。
中央に一匹の鹿と思しき動物がいる。
その場に集まった全員に資料が配られ、目を通し終わったであろうタイミングで、
社長より偉い専務「これは馬です」
社長「何を言っているのかね。鹿じゃないか。なあみんな?」
部下たち「・・・・・・」
社長「え、ちょっとみんな!?」
部下A「馬ですね」
部下B「そうだ馬だ」
社長「えええ!?」
部下C「どう見たって鹿じゃないか」
部下D「鹿でした」
社長「だよね。鹿だよね」
社長より偉い専務「なるほど。CとD、そして社長、君たちクビ」
社長「おいおい、さすがにそれは理不尽すぎる。君はどこぞの宦官か?」
社長より偉い専務「『指鹿為馬』の故事、とでも言いたいのですか?」
社長「そう、それ。自分に従わない者を切り捨てるという」
社長より偉い専務「そんなわけないでしょう。いつの時代の話ですか」
社長「違うというのかね」
社長より偉い専務「A君、説明を」
部下A「かしこまりました。社長、これは馬です」
社長「いやだからどう見ても鹿だって」
部下A「確かに見た目は馬ですが遺伝子的には鹿です」
社長「は?」
部下A「簡単に言うと”鹿の外見をした馬”ですね」
社長「はぁぁぁぁぁっ???」
社長より偉い専務「ようやく実験が成功いたしました」
社長「いやいやいや、わからないって。というかそんなことして何の意味があるの? いくらかかったのその実験?」
社長より偉い専務「は?」
社長「は? じゃないよ。とんでもない額なんでしょ?」
社長より偉い専務「はい。いくらかかってもよいとのことでしたので」
社長「誰が言ったのそんなこと」
社長より偉い専務「社長です」
社長「へ?」
社長より偉い専務「1年前、”外見で判断するやつは馬鹿だ。それを知らしめるためにも鹿に見える馬を作ってくれ。金はいくらかかってもかまわん!”と」
社長「・・・・・・あ、ああああ! 思い出した! 確かに言った。でもあれはジョークのつもりで……」
社長より偉い専務「というわけで、荷物をまとめてとっとと出てってください。馬鹿は我が社に必要ないので」
社長「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。実験は成功したんだろ? 見分けがつくわけないじゃないか。あまりにも酷過ぎる!」
部下C&D「そうだそうだ! 横暴ここに極まれり!」
社長より偉い専務「はぁ(ため息)。B君、あとよろしく」
部下B「かしこまりました。お手元の資料をご覧ください」
社長「は?」
部下B「今回の議題をご確認いただけますか?」
社長「何々、”鹿の外見をした馬の研究結果報告とお披露目”……あれ?」
社長より偉い専務「資料も読まないような馬鹿は我が社にはいらん!」
社長&C&D「ぎゃふん」

おしまい

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