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ベトナム駐妻がナニーさんを雇い始めた話

ベトナムに帯同して3か月。縁があり、とある日系企業で雇ってもらえることになった。パートタイムで、週に3回のみの出勤だが、少しでもキャリアを続けられると思うとありがたい。子どもがまだ1歳になりたてで、預け先がなかったのでナニーさんをフルタイムで雇うことにした。

日本人の駐妻さんも、多くの人がナニーさんを雇っている。けれど、ほとんどが午前中や午後の3時間のみ、週に2~3回という雇い方のようだ。私は今回、週に3回ではあるが、朝8時~夕方6時半までのフルタイム勤務ができる人を探していた。

これが、まぁ、大変だった。週3回というのも、1日は土曜日が入るからだと思う。8時からという長時間も厳しい条件だったのか、良さそうな人が見つからない。

さて、そんな私がどうやってナニーさんをみつけたかというと、紹介である。

ナニーさんを探してるんです!と知り合った日本人に、とにかく言いまくった。婦人会やベビー会、こちらで6年以上暮らしているベテラン母達、キッズルームでよく一緒になる日本語が堪能なベトナム人ナニーさんにお願いして、合計で7人も紹介をもらうことができた。そのうち何人かは家が遠い、拘束時間が長い等であちらからお断りされてしまった。順に面接させてもらい、その3人目の人がとても良かった。今も日本人家庭でのナニーをしているので、曜日は限られてしまうが、日本語・英語ができる40歳の人だった。

彼女はミンさん、という。

ミンさんを紹介してくれた方は、在ベトナム10年目で会社を経営されている。彼女の家でもクッカーとして働いたことがあるそうだ。それがなによりの決め手かもしれない。

海外へきて、見知らぬ人を長時間家に、娘と一緒に過ごしてもらうことに抵抗はなかった私だが、さすがに全く知らない人よりは、素性の明らかな人のほうがいいよなと思ったのだ。初めはお試しかつ慣れということで、5時間ずつきてもらうことにした。

初日、彼女は家に入るなり早速、何しましょう?掃除機?食器あらう?とてきぱき、お仕事を開始。初日だし、ゆったり娘とすごしてもらうかな~と思っていた私は驚き。別に、部屋に掃除のお姉さんもいるので、掃除はしてもらわなくてもいいのだけど、してくれるのであれば、してもらおう。そんな気持ちで、お願いした。

リビングだけでいいですよ。そう言ったつもりが、全ての部屋の掃除機がけ、トイレ洗面も掃除機をかけてくれた。トイレなんて掃除機をかけたら菌が部屋中に巻き散らかされそうですごく嫌だったけど、洗面は髪の毛が落ちているのでかけてほしい。私は、うまく伝えられず、そのまましてもらうことに。

その晩、夫にこのことを言うと、「どっちみち半分土足だしいいんじゃない。どうしても気になるならちゃんと言ったほうがいいよ」と正論をいわれてしまった。

私は、自分で言うのもアレだが、自己主張できるタイプである。小学校の頃から、ディベートは得意だし、演説や発表も得意だった。周りからは、きつそうな人だとよく言われる。けれど、なぜかここハノイでは、うまくはっきり伝えられなかった。まぁ、いっかぁで流してしまったのである。

悪い人ではない、けれどやっぱりこちらがしっかりと軸を持っていないと、あちらの軸につられてしまう。

こんなこともあった。駐輪場代が高すぎるので、月末ではなく毎日払ってくださいと言われたのである。ナニーさんへの経費で、駐輪場代が発生するのだが、4時間までは4,000ドン。それ以降は1時間につき+1,000ドンだそうだ。

5時間+αで6,000ドンということは、日本円で36円ぐらい。日々それぐらい建て替えられないものか…?と疑問に思ったがそんなものだろうか。まだベトナム初心者で、現地の人の感覚が分からない。加えて困ったことに、私たちは現金貧乏で、小さいお金を持っていない。いっそ定期券120,000ドンを買おうという話になった。

マンションのフロントで定期券を買うようなのだが、ベトナム語でやりとりしてもらうも、また高すぎます!と言い出した。払うのはこっちなので、別に良いのだが、なぜか話を切り上げてしまった。これは困ったなぁ、良い人だけど、やっぱり違う人にしようか…そんな不安がこみあげてくる。

結局、日払いはできないし、月末払いか月極で払いたいと伝えると、月極にしてくださいと言われ、一件落着した。

日本人のはっきりしない、空気を読んでなんとかの文化と、しっかり言わないと分からないベトナム文化。こっちの人達は優しいし、よく気が利くけれど、してほしいこと辞めて欲しいことはしっかり伝えなければいけないなと、思った。

娘は絶賛、人見知り中である。知らない人がいると、ルンルンで歩いていても、ぎゅっと母の足をつかんで離さない。

そんな娘がミンさんには、1日目から懐いている。トコトコ歩いてついて回るのだ。

彼女の雰囲気が気に入ったのか、母としては一安心である。

色々言いたいことはあるし、こうしてほしいなと思うこともある。もっと日付の融通が利く人の方がよかったのではないか?まだ何人か候補がいたので、全員に会ってからのほうが良かったのではないか?そんな気持ちが定期的に湧き上がってくる。けれど、娘が気に入って、一緒に安全に遊んでくれるというのは、なにより大切だ。

そんなこんなで、娘のフルタイムナニーさんが決定したのである。彼女とはこれからも色々あるだろうし、後悔もあると思う。ただそれは、私たちも雇い主初心者なので、良い経験だと思うしかないか。娘の安全と笑顔さえ守ってくれれば、と願うばかりである。