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木原功仁哉「世界を牛耳る国際金融資本 ② 通貨発行権をめぐる攻防」(『維新と興亜』第15号、令和4年10月28日発売)

権力の源泉「通貨発行権」


 今回は、国際金融資本の権力の源泉たる「通貨発行権」をめぐる攻防について述べていきたい。
 現在の世界経済は極端な格差社会である。平成29年の時点では、世界の大富豪8人(マイクロソフト創業者ビル・ゲイツなど)の資産が世界の富の50%を占めているという経済格差が生じていた。さらに、今般のコロナ禍で在宅勤務(テレワーク)が一般的になった結果、巨大IT企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)がさらに富を増殖させ、経済格差はさらに拡大している。
 そして、富豪たちのトップに君臨しているのは、DS(Deep State)とも呼ばれるロックフェラー財閥、ロスチャイルド財閥ら国際金融資本である。
 「私に一国の通貨の発行権と管理権を与えよ。そうすれば、誰が法律を作ろうと、そんなことはどうでも良い」と語ったのは、ロスチャイルド財閥の礎を築いたマイヤー・アムシェル・ロスチャイルド(1744~1812)である。
 この発言は、通貨発行権が「打ち出の小槌」そのものであることを物語っている。つまり、日本の一万円札を例にすると、製造コストは1枚あたり22~24円とされているので、日本国政府から紙幣の発行権を無償で付与されている日銀は、一万円札を1枚発行するごとに9970円余りの利潤を生み出す。このような「錬金術」のシステムに基づく富の増殖を、ロスチャイルドの初代の教えに従って末裔たちが忠実に実行し、FRBを設立することになる。
 すなわち、1910年、ネルソン・オルドリッチ(上院議員)、ポール・ウォーバーグ(ロスチャイルド代理人)、それにモルガン家やロックフェラー財閥の金融界の専門家などの6人により、合衆国政府が持つ通貨発行権を奪取して中央銀行を設立するための秘密会議がジキル島で開かれた。そして、ウィルソン大統領(Woodrow Wilson)が1913年に、クリスマス休暇で議員が居ないのに会議を開いて、電撃的に秘密会議の決定に基づく法案を成立させ、中央銀行への返済財源に充てるための所得税徴収法まで成立させたのである。その結果、翌年にFRBが設立され、合衆国の通貨発行権が専属することになった。これは、アメリカ合衆国連邦憲法第1章第8条第5項に定める「合衆国議会は貨幣発行権、貨幣価値決定権ならびに外国貨幣の価値決定権を有する。」に明らかに違反していたのである。

大金融権力との闘争


 ここに至るまでには、アメリカが独立戦争の際に欧州の民間銀行から戦費調達を余儀なくされ、通貨発行権が事実上奪われていたという経緯があった。
 すなわち、アメリカは18世紀、財政が脆弱なまま長期にわたる独立戦争を行い、その戦費等を欧州の民間銀行(ロスチャイルド家)から調達していた。そのため、独立戦争終結後の1782年には、最初の中央銀行であるバンク・オブ・ノースアメリカ(The Bank of North America)が設立されるが、恒久法にすると憲法違反となる。そこで、時限立法による中央銀行として、1791年にファーストバンク・オブ・ユナイテッドステイツ(The First Bank of United States)、1817年にセカンドバンク・オブ・ユナイテッドステイツ(The Second Bank of United States)が設立された。
 ところが、ジャクソン大統領(Andrew Jackson)は、1830年代、欧州の銀行家による支配に異議を唱え、セカンドバンクの廃止に向けた政治闘争を行う。ジャクソン大統領が語った言葉“The bank is trying to kill me, but I will kill it”は、彼が政治生命を賭けて中央銀行との闘いを表明したものといえる。すると、暗殺未遂の災難に遭い、その難から辛うじて逃れたジャクソン大統領は、暫定的に中央銀行として認める時限法を更新する改正をしなかったため、セカンドバンクは1836年に消滅した。
 そして、これが引き金となって南北戦争(1861~1865年)が勃発した。南軍も北軍もイギリスの銀行から戦費の調達を行った。イギリスの銀行は究極のリスクヘッジを行って、南北戦争終了後における恒久的な中央銀行の地位を狙ったのである。
 ビスマルクは、1876年にアメリカの南北戦争がヨーロッパの大金融権力(ロスチャイルド家)によって誘発されたことを看破して、以下のとおり語っていた。
 「アメリカを二つの連邦に分割することは、ヨーロッパの大金融権力によって、南北戦争のずっと以前に決定された。そうした銀行家はアメリカを恐れていた。アメリカ国民が結束したままであれば、当然ながら一国として経済的、金融的に独立独歩することになるだろうし、そうなれば、彼ら銀行家の世界支配が覆される、と。ロスチャイルド一族のこうした声に影響され、彼ら銀行家はアメリカを、自信に満ちて自給自足体制を貫く活力ある共和国を二つの弱小国家にして負債を負わせれば、大儲けができると考えたのだ。」(ジョン・コールマン+太田龍「ロスチャイルドの密謀」成甲書房、平成19年、103頁)
 ところが、北軍を率いたリンカーン大統領(Abraham Lincoln)は、真の敵は南軍ではなく欧州の大金融権力であることを悟り、南北戦争後の1862年に、アメリカ政府(財務省)の政府紙幣であるグリーンバックスドル(Greenbacks dollar)を発行し、欧州銀行連合体の支配からの脱却を図ろうとした。これは、中央銀行が発行するドルではなく、アメリカにおける初めての憲法通貨(法貨、Constitutioal Money)である。その結果、1865年にリンカーンは暗殺されるのである。
 さらに、暗殺といえばジョン・F・ケネディ大統領の暗殺も同じである。ケネディは、アメリカに大量に眠る銀の埋蔵量に着目し、FRBの金本位制から合衆国独自の銀本位制へと移行することが可能であるとして、1963年に、銀本位制により合衆国発行の法貨(政府紙幣)を発行する大統領行政命令(executive order 11110)を発令した。ケネディこそ、FRBに奪われた合衆國の通貨発行権を取り戻すことに最も熱心で勇気のある大統領であった。そして、ケネディもまた、大統領行政命令を発令した同じ年の11月22日にダラスで暗殺されるのである。

租税徴収権と通貨発行権


 国家が独立性(主権)を維持するための要素としては、租税徴収権と通貨発行権の双方が必要であり、前者は租税収入、後者は通貨発行益(シニョレッジ、seigniorage)であって、これらが揃うことによって国家財政が安定し、経済主権が確立されるのである。
 つまり、国家が自らの通貨発行権により政府紙幣を発行し、その政府紙幣で税金を支払わせることによって通貨の循環がなされるべきであり、通貨発行権を簒奪したFRBが自己を正当化するための「財政と金融の分離(財金分離)原則」というペテンのような仕組みを打ち破って、財政と金融の一体性(財金一体)を維持して経済的独立(経済主権)を確立させることができる。これにより財政破綻などは起こらなくなり、物価も安定する。
 ところが、通貨発行権が国家ではないFRBや日銀などによって、国家主権の一部が簒奪されていることに問題があり、帝国憲法でも占領憲法でもアメリカの憲法とは異なり租税徴収権は定めても通貨発行権についての定めはなく、本来はこれが憲法事項であるべきなのに法律事項になっていることが異常なのである。
 大東亜戦争の敗戰によるGHQの軍事占領下で日本国憲法と称する占領憲法が制定されたが、その実質的な草案となったマッカーサー草案の第76条には、「租税ヲ徴シ金銭ヲ借入レ資金ヲ使用シ並ニ硬貨及通貨ヲ発行シ及其ノ価格ヲ規整スル権限ハ国会ヲ通シテ行使セラルヘシ」として、租税徴収權と通貨発行権を一体として規定していた。しかし、最終的に占領憲法では通貨発行権の条項は削除された。その詳細な経緯は不明であるが、GHQ内部に居たFRBの手先が削除させたとすることは容易に推測しうることなのである。


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