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UPLINK60本全部見る

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UPLINK Cloudの60本3ヶ月見放題の作品を全部見て、その感想をまとめるためのノートです。みなさんの自宅待機の暇つぶしに少しでも貢献できたらいいなと思っています。
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2020年5月の記事一覧

9年越しに『100,000年後の安全』を見たら少し楽観的になっていた

UPLINK見放題37本目は放射性廃棄物の最終処分場についての映画『100,000年後の安全』です。 2011年に3.11の直後に見て、geenzに記事を書きました。その時の記事はこちら。 自分で言うのも変ですが、これはこれで言ってることはわかります。放射性廃棄物の問題は私たちが考えなければいけない問題として今もここにあることは事実です。 ただ、9年ぶりに見て思ったのは、「この映画、同じことしか言ってなくね?」ということで、その同じこととは「未来はどうなるかわからない」

ロウ・イエ見るならまずはこれ。『二重生活』のミステリーに隠された中国の社会問題と愛の本質

UPLINK見放題こなすのに精一杯な上に、今度は「Help!the映画配給会社プロジェクト」にも手を伸ばしてしまったので、ただ映画を見るだけで時間がどんどんなくなっていきます。 勝手にランキングもしたいんですが、もう少し時間が必要そうです。 さて、そんな中、5本あるロウ・イエ監督作品の4本目を観ました。これまでの3本はかなり重かったんですが、今回の『二重生活』はストーリーが思いっきりミステリーに振られているので、映画に入り込みやすくて見やすかったです。 「ロウ・イエ面白

ウィズ・コロナ時代に必見の『ラッカは静かに虐殺されている』の次に観てほしい映画

greenz.jp5本目のUPLINK見放題記事です。 『ラッカは静かに虐殺されている』は本当におすすめなので、ぜひ観て、記事も読んでください。 ここでは、見たよ!という人のために、ぜひ観てほしい関連作品を2本上げておきます。 1本目は『すべての政府は嘘をつく』 こちらは、独立メディアについての作品で、かつアメリカが舞台なので、中東という精神的な距離が遠い国が舞台の『ラッカは静かに虐殺されている』より、問題を私たちの暮らしにひきつけて考えることができます。 そして、

ピンク映画の歴史を描いた『ピンクリボン』で日本映画をより深く知る。

UPLINK見放題34本目です。 「ピンク映画」と「ポルノ映画」の違いも意識したことなかったんですが、この映画を見て違いがわかりました。そして、日活ロマンポルノが日本映画史において重要なことは知っていたんですが、ポルノ映画もまた独自の発展を遂げることで、日本映画を守っていたんだなと思いました。 映画好きなら若松孝二や高橋伴明くらいは知っているかと思いますが、彼らの実験的な手法を培ったのがピンク映画だということは特筆に値します。 映画の冒頭に黒沢清監督が登場します。知って

映画とアートは地続きだと『デヴィッド・リンチ アートライフ』を観て思う。

映画監督デヴィッド・リンチは映画以外に絵画や彫刻作品も発表しているそうで、その「アートライフ」の源泉を探ったドキュメンタリー映画。 基本的にデヴィッド・リンチのインタビューのみで構成されていて、現在の制作風景と、過去の映像や写真がそこに被せられていきます。 デヴィッド・リンチを知っている人、ちょっとは好きという人なら、その世界観がどのように構築されていったかを知ることができて興味深く見ることができます。 映画というと今はエンターテインメントという印象が強いですが、アート

リアルに引きこもりを描くと社会の問題が見えてくる『今、僕は』

UPLINKの見放題、作品が追加されて77エピソードになっているんですが、今回は追加されたものの中から一本。新作『ふたつのシルエット』の公開を待つ竹馬靖具監督の2009年のデビュー作です。 引きこもりの青年を描いていて、その心情にわかり味しかないんですが、そこから引きこもりを生み出しているのは社会であると考えるに至りました。 映画自体は社会問題を扱った映画ではなく、一人の青年の心の動きを描いているだけなんですが、そこに入り込んでいくと社会が見えてくるのです。 竹馬靖具監

ロウ・イエ作品の重みは愛の始原への探究心から生まれる『パリ、ただよう花』

UPLINK60本以上見放題全部見るも半分に差し掛かり、「まだ半分か」という気がしますが、面白い作品ばかりなので行けそうな気もしてきました。 そんな中、ロウ・イエ監督作品は5本ラインナップされていてこれが3本目。どの作品もどっしりと重く、見るのも書くのも気力が必要なので、休み休み見たいと思います。 この3本目も面白かった。セックスシーン満載なので、「そういうのはあまり…」という方は避けていただいて、でも人間の本質を探っていくと、そこにはやはり愛や性や欲が存在しているので、

12年ぶりに『おいしいコーヒーの真実』を見て背筋を伸ばす

今回の(今季の?)新型コロナウイルス禍も収束に向かいすつあるようですが、UPLINK見放題は続いています。この作品で記念すべき30本目!やっと30本まで来たので勝手におすすめランキング中間発表でもやりたいところです。 で、今日のところはこちら『おいしいコーヒーの真実』。この作品は記録をたどっていくと2008年に見ているらしく、12年ぶり2回目です。12年前とは思えないくらい鮮烈な記憶が残っていて、この映画を見てしばらくは「俺はフェアトレードのコーヒーしか買わない!」と意気込

映画の手法も素晴らしい『アルマジロ』は本当の戦場を感じられる。

戦争って一体どのようなものなのか。知らない人のほうが世界には多いわけですが、それでも今も世界のどこかで戦争は起きています。なぜ兵士は戦うのか、死ぬかも知れないのに。 この映画を見ればそれがわかるとは言いません。でも、この映画は私たちを見事に戦場に連れて行ってくれます。それはこの映画の見事な手法によるもの、その事も記事に書きました。 そして、戦場で私たちが目にする兵士たちの生の感情。そこから見てくる本当の戦争。 これはすごい映画だし、本当に見てほしい映画です。残虐なシーン

『トゥーマスト』は武器ではなく音楽で迫害と戦う。トゥアレグ族を知れただけでも見る価値があった。

週末を挟んで2本ということで連投になりますが、お付き合いください。 1本目は、サハラ砂漠の遊牧民トゥアレグ族のロックバンド『トゥーマスト』のドキュメンタリー。 トゥアレグ族のことも、トゥーマストのことも知らなかったので、知れてよかったというのが何よりの感想。トゥアレグ族の人々は欧米によるアフリカの植民地化によって分断され、差別され、迫害されてきたという民族。 迫害と戦うためにリビアのカダフィ大佐のもとで訓練を受け、しかし後にカラシニコフをギターに持ち替え音楽で戦うことに

ロウ・イエ監督『ふたりの人魚』と『スプリング・フィーバー』を見て思考の迷宮をさまよう

外出自粛が続いて不便ではあるものの、アルコール消毒や手洗いになれてくるとそれほど窮屈さを感じなくなってきた今日このごろです。東京の状況は予断を許さないのでとりあえず5月末まではこんな状況かなと思いつつ、今日も家で映画を見ています。 さて、UPLINKの60本(以上)見放題、全部見ると言ってやっと半分の30本までたどり着きました。今日は26本目と27本目、ロウ・イエ監督の2本『ふたりの人魚』と『スプリング・フィーバー』です。 かなり難しく、しかも暗く閉塞感のある映画なので「

女性が支えたアメリカの戦後。『ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイ』が示すデザインと多様な視点の重要性。

UPLINK見放題作品60本全部見ようのペースが落ちてきているのでちょっとスピードアップして1日2本ペースで見ようと思います。 今日のところはこちらのイームズのドキュメンタリー。 「イームズっていいよね」という軽い気持ちで見始めましたが、なかなか深い内容で、デザインに留まらず女性の社会的地位やコンピュータなど、現代的な問題意識に溢れた映画でした。 チャールズの影に隠れていたレイ・イームズが実は大きな役割を果たしていたということから、アメリカの戦後史における女性の立場の変

みんなそれぞれ「家族の教会」をもてば世界は変わる?『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』

昨日、簡単に1ヶ月あまりの振り返りをgreenz.jpの記事でしましたが、 前に進もうが何しようが60本見なければいけないので、気分転換的にも少し毛色の違うドキュメンタリーをということで見たのが『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』。サグラダ・ファミリアの内側を見られるというドキュメンタリーです。 もちろん、普通は見ることができない中を見ることも楽しいのですが、この映画から伝わってきたのは、サグラダ・ファミリアの教会としての意味。ガウディが「家族の教会」を作ることを通して考

greenzに書いた4本のUPLINK記事で振り返るコロナに対する心境の変化

新型コロナウイルス感染拡大のため外出を自粛し始めてもう2ヶ月になろうとしています。 その中で私がやっていることと言えば家で映画を見ていることだけですが、greenzで4本目『わたしたちの宣戦布告』の記事が掲載されたので、少し振り返ってみます。 STEP1:不安から逃げる最初の記事は4月6日『顔たち、ところどころ』でした。 なぜこの作品にしたのか、ラインナップの中で一番好きな作品だったというのが一番の理由ですが、好きな作品を選んだのはなぜか分析していみると、不安から逃れよ