素敵な「もの」の世界#7~一心同体の時計~
『素敵な「もの」の世界#6~喜びに満ちた時計~』でお伝えした話を、仲間内で話していた時、Rさんが「時計には縁がなかったんだよね」と言い出しました。話を聞いてみると、時計の針などが爆発したみたいにバラバラになったり(どういうこと!?)、修理不可能な壊れ方をしたり、という感じでなかなか時計が長く持たなかったとのこと。でも今の時計はもう20年以上もっている、とのことで見せていただきました。
時計を見たとき、「この時計をK先生に見ていただきたいな」と思いました。翌日が「石の勉強会」だったので、その旨をお伝えしたところ「え?ちょっと怖いなあ」とためらっていましたが、結局「いいよ」と託してくださいました。
K先生に見ていただいたところ、最初の一言は「この時計は繊細だなあ」でした。そして「Rさんの写真ある?」と聞かれました。(そうか!写真のことすっかり忘れていた!)と思ったのですが、幸いにも最近一緒にイベントをした時に写っているものがあったので良かった・・・
写真と時計を比べながら、先生がおっしゃったのは「さっき、繊細って言ったでしょ?あれはどういう意味かというと、うーん、何ていう言葉が一番合うかなあ、人で言えばちょっと潔癖症、という感じ。だから本当は一人でいるのが楽だから買われたくなかったらしい。でも、Rさんが今度こそ自分に合う時計が欲しいと思った気持ちに呼ばれ、行くことに決めたんだって。今、この時計とRさんは一心同体というくらい馴染んでいて、肌の一部のようになっている。だからこの時計も全く違和感がないらしい。一心同体だから、相思相愛という以上の深い絆で結ばれている。Rさんはものを大切にする人なんだね。信頼にあたる人だと思われていて、そういう意味で相思相愛でもある。すごいよ!」とのこと。「Rさんは今、自分の体の一部を持っていかれているような気持でいるよ」とおっしゃるので「そういえば、ちょっとためらっていたのだけど、お願いして腕から外してもらったんです」と言ったら、先生は苦笑いして「早く返してあげて」と・・・あらら、Rさんごめんなさい!「このまま帰りながらお返ししてきます」とお伝えしました。
そういうわけで、帰りながらRさんに電話をしてカフェで待ち合わせをしてお返ししました。最初の一言が、手首をさすりながら「なんか寂しかった」だったので、「やっぱり!ごめんなさい!」と謝りました。(K先生、先生のおっしゃる通りでした)
冒頭の写真はそのカフェで撮らせてもらった1枚です。
先生からお聞きした時計のことをお伝えしたら、すごく嬉しそうでした。そしてあらためて時計とどのように出逢ったか教えていただきました。
その時計はある宝飾店のチラシに載っていたそうで、限定商品だったとのこと。一目見て「いいな」と思って店に足を運び購入したとのことでした。しかも結婚記念日が近かったとのことで、自分は時計を奥様にはアクセサリーを購入したとのことでした。よくよく見たら1996年となっていたので、28年も一緒にいたことになります。
「先生は一心同体、とおっしゃっていたから、そういうものはなくなったりしないし、なくなったと思っても戻ってくると思います」と伝えたら、ハッとした顔をして「一度なくしたことがあった。ゴルフから帰ってきたらなくて、なくしたと思ってすごく焦ったけど、カバンの底に入っていて、あー良かった、と思ったことがあった」と。そうでしょうとも!
「話を聞いたら、ますます大事になったでしょう?」と聞いたら「そうだね」と時計をさすっていました。この時計はオメガのシーマスターというダイバーズウォッチでずっしりと重いのですが、Rさんは「最初の頃は重いな、と感じたけど、今は重さは全く感じない」とのこと。ええ、それもそうでしょうとも!肌の一部のようになじんでいるとのことだから。
人と「もの」との関係って本当に面白いですね。「一人がいい、本当は購入されたくない」と思っている時計もあるんですね。でも相性の良い人と出逢えたら、それはもう一心同体となれるほどの深い絆が結ばれる。そういう出会いがあるとはなんという希望でしょうか。
Rさん、半日ほどではありましたが、寂しい思いをさせてごめんなさい。これからもずっとずっと時計と仲良くしてくださいね。この物語をまずはRさんに確認していただいたところ「素敵な物語ですね」という返信がありました。いつもとってもお世話になっているRさん、あったかい優しい人柄で、それでいて正義感も強く好奇心も旺盛。頼らせていただいているRさんへ、この物語が少しでも感謝の気持ちを伝える御礼になれたなら嬉しいです。
Rさんと時計の関係に乾杯!