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于武陵の「勧酒」について。


まず、原文。

勧酒
勧君金屈巵
満酌不須辞
花發多風雨
人生足別離


つぎに、読み下し文。

酒を勧む
君に勧む金屈巵(きんくつし)
満酌辞するを須(もち)いず
花發(ひら)けば風雨多く
人生別離足る


そして、井伏鱒二の現代語訳。

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ


さいごに、それを受けた寺山修司の「幸福が遠すぎたら」という詩。

さよならだけが人生ならば
また来る春は何だろう
はるかなはるかな地の果てに
咲いている野の百合何だろう

さよならだけが人生ならば
めぐり会う日は何だろう
やさしいやさしい夕焼と
ふたりの愛は何だろう

さよならだけが人生ならば
建てた我が家なんだろう
さみしいさみしい平原に
ともす灯りは何だろう

さよならだけが人生ならば
人生なんかいりません

𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄

さよならという言葉にセンチメンタリズムを感じる節もあるけれど、実際のさよならのとき、丁寧に「さよなら」と挨拶することは難しい。

仮にこれでさよならだと思っても、相手方に「さよなら」と言ったら本当にそこで終わってしまうから惜しくなる。

今、さよならと言いたい。

さよならと言えたら、きっともっと苦しくなって、後にきっとずっと楽になる。

ポエムを書くのは苦手です。

楽しい瞬間のことだけを旅行鞄に詰め込んで、あとは全てにさよならしたい。

───花に嵐のたとえもあるぞ
───さよならだけが人生だ

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