石川貴章|IMIC|石川貴章整体インターナショナルカレッジ学長

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石川貴章|IMIC|石川貴章整体インターナショナルカレッジ学長

IMIC(石川貴章整体インターナショナルカレッジ)の代表の石川です。noteではyoutubeにあげている動画解説を行っています。これから整体を学びたい方。臨床をしているけど、施術方法や理論で困っている方、スポーツトレーナーを目指している方等など是非ご参考になさってください。

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斜角筋症候群とは

解剖学的に斜角筋隙(しゃかくきんげき)という部位が存在します。隙とは「Gap」のことで、腕神経叢と鎖骨下動脈が前斜角筋及び中斜角筋の筋間を通過する隙間を指します。 この斜角間隙が何らかの原因で狭窄すると腕神経叢と鎖骨下動脈が圧迫され、上肢の痺れを含む神経症状を引き起こす可能性が生じてきます。 臨床的には頚椎椎間板ヘルニアなどに代表される頚部神経根障害との鑑別を要しますが、 さらにはそれ以下の末梢神経障害との鑑別も必須となります。 斜角筋症候群以外の胸郭出口症候群(過剰外転症候群、肋鎖症候群、頚肋症候群)や、それ以下の円回内筋症候群、肘部管症候群、手根管症候群など、数多く存在する末梢神経障害の可能性を症状部位や軽減増悪要素などの問診事項からスクリーニングし、上肢における愁訴領域がデルマトーム領域に従うものか、末梢神経支配領域に従うものか、さらにはMyotome(筋力)、Dermatome(痛覚)、MSR(深部腱反射)を用いた神経学的鑑別を用いて、その障害部位を特定していく必要があります。 さらには同時に酷似した一見上肢の神経症状と捉えがちなMyofacial Pain Syndrome:MPS(筋筋膜痛症候群)による反射性の関連痛との鑑別も必要となる場合があります。 MPSの症例においては上肢領域に一見神経症状のような疼痛感が出現する場合があります。 MPSに関する代表的な書籍「Trigger Point Manual:Travell&Simons(1983)」において、著者は「トリガーポイントは特有の関連痛や関連性の過敏、運動機能障害あるいは自律神経症状が生じる。原因となる筋は柔軟性と筋力が低下し、固有受容を混乱させる」と定義しています。 上肢領域に関連痛を呈する可能性のある筋肉の代表格としては大胸筋、小胸筋、広背筋、棘上筋、棘下筋を挙げることができると考えます。 該当する筋肉の硬結部分を触診し圧迫を加えることで上肢への関連痛が出現もしくは増強する場合、また該当する筋肉の徒手筋力検査にて、筋肉の収縮時に関連痛が出現する場合などが予想されます。 斜角筋症候群と特定された場合の具体的なアプローチ方法として、斜角筋のストレッチや姿勢の改善などが紹介される機会が多いかと思いますが、なぜそこまで斜角筋が過剰な緊張状態に陥ったのか、もしくはなぜそこまでの緊張状態にならなければならなかったのか、原因部位や障害高位を特定できたら、ストレートにそれを変化させようとするのではなく、 「Why?」と考えることで患者さんが発症に至るまでの経緯が見えてきます。 ここで必要になるのは高価な検査機器ではなく、情報を引き出す対話力です。 こんなことがあったんじゃないか、こんな負担をかけていないか、患者さんは自分の身体についてよく考え、よく感じて、自分なりの答えを持っているものです。 それを聞き出すことができれば、なるほどそれが原因で結果的に斜角筋に負担をかけたのかと解釈に至ることができると思います。 このステップを踏むことでその後の施術がよりパーソナルで具体的なものになります。 斜角筋へのアプローチだけでなく、斜角筋に負担をかけた真犯人へのアプローチができるわけです。

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      Maximum Cervical Compression Test(マキシマムサービカルコンプレッションテスト)の解説

      「Maximum Cervical Compression Testの解説」 いつもご閲覧ありがとうございます。 IMICです。 今回はマキシマムサービカルコンプレッションの動画の解説を致します。 オーソペディックテストにおける頚椎神経根障害を鑑別する評価方法としてMaximum Cervical Compression Test(マキシマム・サービカル・コンプレッション・テスト)という技法があります。 我々は診断目的ではなくリスクマネジメントとしてこの技法を用いることがあります。 まず基本形として純粋に頚部中間位から長軸圧迫を加えて神経根障害の出現と増悪を確認するAxial Cervical Compressionがあります。 これに対してMaximumは字の通り、頚椎を圧迫テストするポジションを可能な限り「最大」のポジションをとるというものです。 この場合の最大ポジションというのは頚部神経根が絞扼される可能性のある頚椎椎間孔の孔径が狭くなるポジションを指します。 頚部神経根絞扼の原因は神経根症といっても様々で、頚椎椎間板ヘルニアによる神経根圧迫や変形性頚椎症による椎間孔狭窄により神経根症など多岐にわたる複数の可能性を想定すべきであり、さらには似て非なる酷似した症状を呈する頚椎椎間関節症(Facet syndrome)や上肢症状においては胸郭出口症候群を含む末梢神経障害との鑑別評価も臨床上大変重要なポイントであると考えます。 これらのリスクマネジメントに対しては、オーソペディックテストを単一で用いることなく、特に神経根障害を評価すべく上肢筋の筋力検査、上肢の感覚検査、頚椎分節に対応した深部腱反射を含む神経学検査が有用となります。 Maximum Cervical Compression Testは患者に対する疼痛の再現性が高く、比較的侵襲性の高い評価方法であると同時に、頚部の可動域が減少しているケースにおいては正確な評価が困難となる場合も少なくありません。 頚部痛、頚部の可動域、上肢症状の再現性等を経過観察の中もしくは施術等の前後の比較として用いることをお勧めします。 またMaximum Cervical Compression Testのセットポジションでは椎骨動脈症候群の可能性を含むケースにおいて眼振や二重視、眩暈などが観察されることがあります。 評価方法とその判定に捉われることなく、包括的に患者の状態を理解できることが求められます。 

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        SOTをベースとした応用テクニックの解説

        久々の投稿です。 これからまた定期的にはございますが、note で記事をアップして行きたいともいます。 どうぞご参考になれば幸いです。 今回は 「SOTをベースとした応用テクニックの解説」 です。 「Applied techniques based on SOT」 カイロプラクティックの学問の中にはSOT(Sacro‐Occiput‐Technique:仙骨後頭骨テクニック)というものがあります。 このSOTの基本的な概念としては身体機能が正常に働くには呼吸機能と脳脊髄液の流れが健全であるということが提唱されています。 仙骨と後頭骨がシンクロして正常な脳脊髄液の循環が維持できない場合には身体に様々な機能障害を引き起こすと考えられています。 SOTを施術のメソッドとして用いる場合、またその基本概念をもとに他のテクニックと合わせて用いる場合があるかと思いますが、私個人としましては構造的/力学的な主に筋骨格系由来の症状へのアプローチよりも、自律神経系や内分泌系および神経系の関与が大きいと考えられる状況、症状の際にSOTをベースに施術を組み立てることが多い傾向にあります。 後頭骨に付着する後頭下筋群、また仙骨に付着する仙結節靭帯、仙棘靭帯、仙腸関節靭帯などは固有受容器が豊富で神経学的な影響力を大きく持つ部位だと言われています。 マニピュレーションの種類に関わらず、ダイナミックなアジャストメントや関節モビリゼーション、またAKAなどStaticalな手技においても、その有効性は大きなものだと考えます。 脊柱における上部頚椎と下部腰椎(仙骨を含み)の機能的関係性はロベットブラザー・ルール(Rovvet Brother rule)においても提唱されているものです。 人間を発生学的な観点、また機能学的な観点から捉えても違和感のないところだと考えています。 臨床においては様々な応用のバリエーションがありますが、そのテクニックのサンプルの一例を紹介しておりますのでぜひご参考にしていただければ幸いです。

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          動的姿勢評価について【身体機能的評価】

          身体の機能的な評価には様々な手法があります。 例えば立位体前屈という方法で、立った状態から腰を曲げて前屈し床に指先がどの程度届くかというものです。 小学校の時にこのようなテストが体育の時間にあったことを覚えていますが、これはFFD(Floor Finger Distance)という評価方法としても実際に用いられています。 このFFDの評価対象は下肢後面の筋肉(殿筋群、ハムストリングス、下腿三頭筋など)の柔軟性、腰椎屈曲の可動性、股関節屈曲の可動性、膝関節伸展の可動性、足関節背屈の可動性というものです。 床からプラスマイナス何センチという計測であれば、その数値が判断の対象となりますが、動的機能を評価するという視点になりますと、FFDにおいては 例えば ▶︎腰部を屈曲していく際に殿部を後方に引いていないか ▶︎屈曲時に腰椎の屈曲を誘発できているか ▶︎前屈の際に頚部を伸展していないか ▶︎体幹を真っ直ぐ前屈しているか といったポイントを挙げることができます。 これは言わば、 「数値として現れないものを見る」 ということであり、動きが終わってからでは見逃してしまうものかもしれません。 顎関節を例にとると、口が開くときというのは、上顎に対して下顎が下制をすることで開口が成立します。 この際、左右の顎関節や関節円板、開口に関わる筋肉などが正常に機能していれば上顎に対して下顎が垂直に下制しますが、何かしらのトラブルが生じている場合には下制時に右や左に下顎がブレる場合があります。 このような現象を「偏倚:へんき」といいます。最終的には上顎に対して下顎も真っ直ぐゴールするとしても、動きの最中には正常なルートを脱して寄り道をしてしまう場合があるのです。 このような現象は顎関節のみならず、全ての全身運動において生じる可能性があり、動く前、動いた後だけの観察では重要なボディランゲージを見逃してしまうことになります。 このような身体の機能評価をする際には、あまり学問や理屈で考えずに自然を眺めるように人体の動きを見てみて下さい。 森の木々が風に揺れるように、川を流れる水のように、人間の身体も本来は自然で角のない美しい動きを持っています。 身体をアートな観点でみる、時にそんな意識が必要になると考えています。 IMIC 石川貴章

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        • 身体評価方法
          4本
        • テクニックの解説
          1本
        • 熟練者の手技シリーズ
          4本

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          姿勢評価を学ぶ

          姿勢評価を学ぶ 医師が実施する理学検査には視診、触診、打診、聴診というものがあります。 お腹が痛いとき、胸が苦しいときなど、何らかの症状を感じて病院で診察をお願いすると、これらの方法でまずは状態を大まかに状況を把握するスクリーニングというものが施されます。 その上でさらに追加で必要な検査が行われる手順です。 筋骨格系を扱う場合も例外ではなく、視る、触れる、打つ(パーカッション)、聴くという方法でスクリーニングすることからスタートします。 視るという事に関しては ■患部が腫れていないか ■赤くなっていないか ■内出血していないか という確認的な意味合いもあります。 また ■手や足が曲がっていないか ■肩の高さの左右差はないか ■背中が丸まっていないか ■腰は反っていないか など、 姿勢や肢位を評価するという意味合いもあります。 立位における姿勢の評価では主に正面の観察と側面の観察があり、その他には座位姿勢や仰臥位、腹臥位での評価も有意義であることが少なくありません。 基本的には静止して頂いた状態での評価となりますが、動作中の姿勢な肢位のチェックも有効です。 印象的だったケースとして、40代の腰部痛と下肢症状を10年も患っている患者さん、レントゲンとMRIの画像検査において特記すべき所見なく、その他血液検査や下肢の血管検査でも何ら異常が認められないという状況でご来院されました。 色々なバリエーションで姿勢と肢位の確認をした際、立位では特に認められなかったのですが、座位になっていただいた時に腰椎に著明な後彎形成があり、 それまで立ち仕事をしていたのに発症した10年前から長時間のデスクワークの仕事に転職されたことがわかりました。 このように、実際に患者さんを目の前にして様々なバリエーションで視ることが思いもよらぬ情報を与えてくれることがあります。 ほんの数秒、触れる前、動かす前に「視る」ということを習慣化することで、見落としを防ぎ、後の評価の整合性、信憑性を高めることができると考えています。

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          「頚椎における臨床の基礎とROM」

          頚椎の状態を正しく評価する際の基本事項とROMのポイントを解説したいと思います。 第1頚椎は別名:環椎(かんつい)といいます。第1頚椎と後頭骨は関節を形成しており「環椎後頭関節」といいます。 この環椎後頭関節には「後頭下筋群」と呼ばれるいくつかの小さく強力な筋肉が付着しており、しつこい頚部の凝りや肩こり、筋緊張性頭痛や眼精疲労に多大な影響があるとされています。 第2頚椎は軸椎(じくつい)と呼ばれています。その形は仏様が座禅をしている形に似ているとされています。 第7頚椎は棘突起が大きく後ろに出て隆起していることから「隆椎(りゅうつい)」と呼ばれています。 頚椎は全体として「前彎:ぜんわん」をと呼ぶ曲線を描いているのが正常ですが、悪い習慣や姿勢の影響などでこの前彎が減少した状態を「straight neck:ストレートネック」といいます。 またストレートネックの状態で頭部が前方に突き出した状態を「Crane neck:クレーンネック」といいます。クレーン車にその形が似ているように見えるためです。 すべての頚椎の側面部分には横突孔という小さな穴が存在します。 この横突孔はC7からC1まで縦に並んでおり、その孔内を「椎骨動脈:ついこつどうみゃく」が走行します。 この椎骨動脈は内頚動脈と共に、大脳動脈輪(ウイリス動脈輪)を形成している極めて重要な動脈です。 要はこの椎骨動脈が障害されれば、十分な血液が脳に供給されなくなり、重篤な脳障害を引き起こします。 特段に頚椎の扱いにはきちんとした知識と安全性の確保が必要です。 「きちんとした教育を受けずに危険性を理解していない頚椎への矯正操作は絶対に避けるべきです」 前述の通り、後頭骨・環椎・軸椎の3つの骨をそれぞれ繋ぐそうに付着している筋肉で、この部位の最深層部に位置する重要な筋群を総称して後頭下筋群といいます。 ここでは以下4つの筋肉の走行を確認します。 ・大後頭直筋:後頭骨と軸椎の棘突起(C0-C2SP) ・小後頭直筋:後頭骨と環椎の後結節(C0-C1SP) ・上頭斜筋 :後頭骨と環椎横突起 (C0-C1TP) ・下頭斜筋 :環椎横突起と軸椎の棘突起(C1TP-C2SP) これら後頭下筋群の中でも、大後頭直筋は臨床的に特に重要で、この筋肉を後頭神経が貫通し、後頭部の皮膚感覚を司っています。 大後頭直筋が緊張して後頭神経を圧迫してしますと、後頭部に痺れや違和感が出現することがあります。(後頭神経痛) また後頭下筋群は眼の動きと非常に密接な関わりがあり、首や頭の位置を動かさずに眼球だけを動かしているときにも、この後頭下筋群は収縮と弛緩を繰り返して、眼球運動に関与していることが分かっています。 眼精疲労などの治療にも応用が可能ということです。 頚椎の正常可動域は屈曲:60°伸展:50°回旋:70°側屈:50°(書籍等により多少の誤差あり)となっています。 頚椎の可動域を評価する際、特に注意が必要なのが伸展と側屈です。 伸展と側屈においては上部頚椎を主体とする動きと、中部頚椎以下を主体すると動きの2パターンがあります。 頚椎と一括りにせず、どの分節を中心に評価したいのかを意識する必要があります。 また頚椎ROMでは肩部でのCompansation(代償運動)が頻繁に観察されます。可動域の計測だけでなく同時に動きを観察するようにしましょう。

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          足底筋膜炎へのアプローチのポイント

          足底に出現する痛みは正常な歩行に支障をきたし、時に著しいQOL(Quality Of Life:生活の質)に多大な影響を与えることがあります。 その発症は年齢を問わず、児童から高齢の方々まで様々です。 一重に足底筋膜炎と括ることはできません。 様々な原因が考えられますが、その中でも私の考えるアプローチをご紹介したいと思います。 まず10歳前後の児童に発症する踵骨骨端症(別名:セーバー病)は発達段階の踵骨骨端部分に炎症が生じ、踵骨骨端核(骨端軟骨の先端部分)の壊死、もしくは骨軟骨炎を発症する可能性があるものです。 主な原因はスポーツなどの運動を急に始めたことや、練習量が増えたことなどによるオーバーユース(過使用)が大きな原因と考えられます。 その為、急性期には安静を要するものと考えます。 筋力の強化と柔軟性の回復が再発予防と早期回復には欠かせないものですが、さらに私はここで足関節及び足根関節の正常化が必要だと考えています。 オーバーユースによって生じた踵骨骨端の炎症は、一時的にスポーツを休止すれば経時的に回復するものと思いますし、筋肉のケアとパワーアップを図ることはもちろん効果的ですが、その発症までの経過の中で筋肉のみならず関節に関わる構造には機能障害を起こしていることが少なくありません。 これは成人における広義の足底筋膜炎や踵骨棘(ショウコツキョク)においても同様だと考えます。 足関節は距骨を中心に脛骨と腓骨が関節面を形成し、その下部に踵骨、前方には舟状骨と立方骨、さらに前列に楔状骨と中足骨を配列し、内側縦アーチ、外側縦アーチ、前横アーチを保ちながら全身の加重を分散しながら地面からの反作用を受けて踏み出す力を下肢上方へ繋げていきます。 言わば足底筋膜炎や踵骨部でのトラブルはこのような力学構造の破綻といえる状況であり、慢性化した状態ではそのフレームから立て直しが必要であると考えます。 つまりは前述の骨同士の関節運動を回復させる必要があり、中でもそのKeyとなるのが内側楔状骨と第一中足骨、舟状骨が形成する関節、踵立方関節の3つであると考えています。 これら骨及び関節はそれぞれに該当するアーチ形成の要役を担っており、同時に関節のFixation(フィクセーション:可動制限)を生じやすいものです。 有効なアプローチの上、正しくフォローアップすることで慢性化からの回復と再発予防に貢献できるものだと考えています。 IMIC 石川貴章

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          仙腸関節の基本理解と現状

          街を歩けば「骨盤矯正」という看板や広告をよく目にするようになりました。医学用語でもなければ専門用語でもありませんが、何となく「痩せる」「美容効果」などの付加価値も連想させる不思議な言葉として国内で広まりました。 その中身はまさに玉石混交で施術者によってその捉え方や考え型、実際の施術方法も何ら共通したものはないようです。 そもそも骨盤というのは広義な意味で用いられる言葉で、左右の寛骨と仙骨をまとめて骨盤と呼びます。寛骨はさらに腸骨・坐骨・恥骨の3つに分けて考えることがあり、仙骨は左右の腸骨に挟まれるように位置しています。骨盤という括りの中に大腿骨を含めるか、第5腰椎を含めるかは各々の解釈により違いがあるかと思いますが、ここでは仙腸関節について解説したいと思います。 仙腸関節とは字の通り仙骨と腸骨の間の関節で、言わば骨盤の中の関節といえます。 しかしこの仙腸関節、長らくの間、不動関節と呼ばれその可動性、機能性が認められない時代が続いていました。 それから近年では様々な研究と理解が進み、仙腸関節が腰痛の原因になることや、時に坐骨神経痛のような痛みも呈してくることが分かっています。 このような場合、仙腸関節の状態を正しく評価し、正しく施術する能力が求められますが、これらの習得には専門的な学習とトレーニングが必要であり、いわゆる巷の骨盤矯正とは異なるものです。 機能解剖学に基づく仙腸関節面の屈曲、伸展、内旋、外旋の動的評価、腸骨に対する仙骨のカップリングモーションの評価、さらに関節運動を主体的に起動している筋肉群の各々の機能性評価を要します。 さらには仙腸関節と頭蓋骨を含む頚椎との連動性、恥骨の評価、坐骨及び股関節の評価と視野を広げた解釈が求めらることも少なくありません。 仙腸関節の機能評価のベースにはジャイロスコープモーションというものがあり、立体的に左右の仙腸関節及び周囲の軟部組織を含めたダイナミックなイマジネーションが必要になります。 今後国内において、骨盤矯正というものが仙腸関節を含めた骨盤帯全体の包括的なアセスメントとテクニックに昇華し、安全で有効な施術として成り立ち確実な患者利益となり得るよう願っています。 IMIC石川貴章整体インターナショナルカレッジ 石川貴章

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          可動域(ROM:Range Of Motion)の 臨床的解説

          身体の各関節には可動域というものが存在します。 その関節がゼロ地点からどこまで動くことができるのか、また動かせることができるのかという評価方法です。 ゼロ地点というのは、解剖学的基本姿位といって、その関節における筋肉の収縮が始まっていない状態といえます。 動くことができるか、動かせることができるか、という2つの表現は自動(Active:能動的)と他動(Passive:受動的)という意味で、自らの力を使う自動と、他者に動かしてもらう他動に分けることができます。 自動は自らの筋肉を収縮させて関節を動かしていますが、他動は筋肉を収縮させずに関節を動かして(動かされて)います。 我々は患者さんの関節や筋肉の状況を理解するためにこの2つのROMを評価することがあります。 さらにこのROMは可動の範囲(角度)を計測するだけでなく、どのような動かし方をするか、動かされ方をするかを観察することで有意義な所見を得ることがあります。 例えば左肩を外転させる際、必ず頚部を左肩に側屈させる、左股関節を屈曲させる時に必ず腰椎を伸展させているなど、他の部位のCompensation(代償)の存在を推測することが可能です。 臨床においてはこのROMに加え、触診による圧痛の確認、軟部組織のトーンの評価、MMT(Manual Muscle Testing)、神経機能評価などを併用して総合的に身体評価をし具体的なアセスメントをしていきます。

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          股関節の基本理解と変形性股関節症へのアプローチ

          「股関節の基本理解と変形性股関節症へのアプローチ」 股関節は肩関節(肩甲上腕関節)と同じ球関節という形態をしています。肩関節ほどの大きな可動域は持ち合わせていませんが、その代わりに強靭な筋肉と靭帯により重い上半身を支え、歩いたり走ったりすることができるほどのパワーを生み出すことができる関節です。 股関節の内部には重厚な靭帯群があり、さらにその上に深部の細かく強い筋肉、表面には3層構造の筋肉が存在しています。 さらに腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯、輪帯、この4本の靭帯が股関節を支えている靭帯です。寛骨の3パート(腸骨・恥骨・坐骨)と大腿骨頭をそれぞれ連結し、さらに輪帯は最深層にあり、関節面をグルっと1周包み込んでいるような形態の靭帯組織です。 股関節と関わりの大きい仙腸関節についても基本事項を確認しておきます。仙腸関節の周囲にはたくさんの靭帯が存在しており、仙腸関節およびその周囲の骨との連結をしています。仙腸関節の前面を覆うように位置する前仙腸関節靭帯、後面では後仙腸靭帯、仙骨と坐骨棘を繋いでいる仙棘靭帯、仙骨と坐骨結節を繋いでいる仙結節靭帯があります。いずれも治療上で大変重要なポイントとなる部位です。 これら仙腸関節に関係する靭帯は多くの固有感覚受容器を持っており、姿勢の維持や主に背筋群の緊張調整に関わっているとされています。 固有感覚受容器とは言わば、全身各所に存在している身体のバランスセンサーの役割をもつ神経組織であり、全身の筋肉の中や靭帯の中にあります。何らかの原因により、この固有感覚受容器が異常な神経信号を発することで神経・筋肉の緊張が生じ、同時に関節本来の正常な働きを低下させることで痛みや過剰な緊張を生んでしまうものだと考えられています。 私は股関節と仙腸関節の連動性に着目し、股関節の施術に仙腸関節および仙結節靭帯などの靭帯へのアプローチを展開していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。 股関節の関するご相談のうち、最も多いのがやはり変形性股関節症と診断を受けた方々です。 変形の状態と進行度(ステージ)、炎症や関節浸食の確認には専門医による画像所見と診断が必須であると考えますが、手術を受けることを迷われている方、手術適応ではないと診断を受けているが、毎日の疼痛に苦しまれている、著しいQOLの低下などによってご相談を頂くケースが少なくありません。 変形性股関節症の患者さんの中には、この発育性股関節形成不全(Developmental Dysplasia of the Hip: DDH)を持っている方が少なくありません。先天性股関節脱臼と呼ばれていたもので、略して「先股脱(せんこだつ)」と言われていましたが、最近では股関節発育性形成不全:DDHと呼ばれています。 これは名の通り股関節の発育が何らかの原因によって遅れ、股関節の臼側と頭側の嵌りが浅く、外れやすい・外れそうで不安定だという状態です。 関節の不安定性をカバーするために、周囲の軟部組織が緊張し、周辺組織との癒着を起こし、可動域の著しい低下とそれによる疼痛と歩行障害を併発していく可能性の高いものです。 DDHに苦しむ患者さんの多くは、疼痛度や生活の状況を加味して、外科的手術を受ける方が最近では少なくないかと思いますが、患者さんの選択によって、我々が積極的に貢献できるケースもあります。 根本的な完治は難しいものですが、OOLの低下を防いだり、疼痛の緩和を図ることができます。 その為には何よりも患者さん自身との対話を深め、共通理解のもと安全第一に無理のない手技と計画的な施術マネジメントを提供する必要があります。 DDHの可能性がある場合、診断を受けている場合は特に、股関節の屈曲、内転、内旋の複合的な姿位を極力さける必要があります。これは股関節の緊張が弛緩し、臼蓋から大腿骨頭が脱臼しやすいLPP(Least Pack Position)となるためです。 丁寧な股関節の可動域検査(ROM:Range of Motion)による評価が前提となります。 また可動中の急激なエンドフィール(関節の運動終止感)が出現する場合が少なくありません。急激な操作は禁物です。 施術の方法を動画にていくつか紹介しておりますが、これはほんの一部であり、個々の患者さんのケースによって様々な応用があります。 一貫して言えることは、力任せな操作や強い圧を加えるなどの操作で、変形を呈した関節面及び周辺の軟部組織に明かな効果を出すことは困難であり、むしろ状態を悪化させてしまう可能性が高くなるものと考えます。 大きなポイントは、いかに他動域とエンドフィールを回復できるかということです。 関節のAccessory movement(アクセサリームーブメント:副運動)もしくは関節包内運動に着眼し施術内容を構成することが大切になってくると考えています。 実際の施術においては、股関節は比較的大きな部位のために施術に工夫が必要ですが、その様々なバリエーションをお伝えしていければと考えています。

          股関節の基本理解と変形性股関節症へのアプローチ

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          手技における熟練者の身体の使い方

          「先生はたくさん施術して手や指が痛くなることはないんですか?」 患者さんからそんな質問を頂くことがあります。 やはり大学で教わり初めたばかりの頃は勝手が分からず”見様見真似”だったので、 酷いと指の腱鞘炎になったり、手首を痛めたり、私も大なり小なりそんな経験をしながら、 これではダメだ、もっとどうしたらいいだろうと繰返し繰返し練習したものです。 原則として、術者側が辛かったり、すぐに疲れたり、自身が痛い思いをするようなことであれば、 それは優れた手技ができる状況ではなく、患者さんに対しても有効に作用することもありません。 手技といっても多種多様な手法や考え方、アレンジの仕方が存在しますが、 このような術者と患者さんとの作用は一貫したものがあると思いますし、 そもそも身体を使うこと全てに精通する要素だと捉えています。 「手技」といっても、施術だけではなく手技を用いた身体の評価という技法が様々ありますので、 効果的かどうかという前に、そんな状況では客観的に評価できませんので、施術はその時点で意味を成さなくなってしまうかもしれません。 では実際に、優れた手技をするためにはどうしたら良いのでしょうか。 私はカイロプラクティック大学で脊椎・四肢のアジャストメントテクニックの講師をしておりましたが、 カイロプラクティックの大学教育では、まず初めに各々そのテクニックの基本操作と手順、 注意事項などをまとめたテキストを配布し、講師がデモンストレーションしながら学生全員に解説し、学生は理解した上で、ペアになりその手順を繰返し反復するという実習講義が行われます。    知識としてまず各々のテクニックの目的、適応、方法、危険性等をしっかりと理解し、それを基本に従い一つ一つの行程を再現していくというものです。これは手技のテクニックをた正しく指導する上では全うな教育方法であることは疑う余地もありません。 ですがこの反復練習の延長線上のままでは、実際に臨床で有効に用いることができるテクニックにまで上達することは、なかなか難しいものです。 それは何故かというと、そもそも「身体という道具の使い方を理解していないから」なのです。 我々は生まれながらにして、身体の取扱説明書を授けられていませんし、両親も身体はこう使うのですよと我が子に教えることはできないと思います。 例えば皆さん、今椅子に座って頂いて、そこから立ち上がってみて下さい。 殆どの方は椅子から立ち上がろうとした最初の初動で、ほんの少しでも目線を下げ、上半身を前傾させてその位置から足と背中に力を入れて立ち上がったと思います。 間違いではありませんが、実はこの普通のように見える動作は要領が悪い。 もっと簡単に立ち上がることができます。 椅子から立ち上がろうとする前に、目線をやや天井方向に向けて、その目線の位置を保ったまま立ち上がってみて下さい。あれ、今までどうやってたんだっけ。と思うくらい簡単に立てたと思います。 これは運動学的に理屈で説明できることのようですが、 それを実際に体現できたのは、「動きの最後を意識したから」です。 逆にいくと、動きの最後をイメージできたなら、椅子から立ち上がる際に視線も上半身も一度下に下げる必要は全然ないのです。ではなぜ下げる人が多いのか、間違いとは言いませんが、ただそうやってきた、やり続けてきた、そう学習してしまったからです。 何も教えなくても「すっ」と出来てしまう人、見本を一度見せただけですぐに上手に出来てしまう人がたまにおりますが、そんな方々は自身の身体を効率よく使うイメージ力が高く、またそれをその通りに体現できる運動機能を持ち合わせているということになります。 私はこのような身体の上手な使い方を学生に伝えるために、様々な指導方法を模索していた時期がありました。その際、このような身体の使い方や意識の仕方を提唱されている学問が日本にあることを知り、関係する書籍をすべて購入し熟読して、学生に上手く伝えていけるよう思考錯誤していました。 その中で私が気づくことのできた、上手く手技が上達できない学生に多く見られた最大の現象が 「患者さんに触れた瞬間に手に力を入れてしまう」というものです。 最初に患者さんの身体に触れたその瞬間に条件反射的に手を固定し過ぎてしまうのです。 人と手を繋ぐとき、力を入れて握ったら痛いですよね。 でも程々の”繋がり感”はないと手と手が離れてしまいます。 まさにあの感覚なのです。 あの感覚で患者さんに触れ、そこから手技が始まるのです。 多くの方々が最初力を入れてフライングしてしまうということです。 身体というのは一度フライングをすると元には戻れません。 一度手を離すまではもう戻れなくなって、そこからどうするかというと、 無理やり筋力を使って何とか対処しようとするのです。 でもそれはその時点ですでに手技ではなく、暴力に近いものがあります。 我々の手技は「Technique」であって「Power」ではありません。 そうすると結局、上手く押せない、力が入らない感覚になりますし、患者さんに苦痛を与えるだけになってしまいます。 力はすでに効率的に伝えることができないのに、伝えようと無理に身体に力を入れたり、 無理に腕力に頼ろうとすると、患者さんにも危害を加えてしまう可能性が生じてきます。 様々な手技を修得するということは、真似事で出来るほど簡単ではありません。 さらにはこの感覚自体が身体の状態を分析し評価していく時の基本でもあり、 小さな関節の動きを感知したり、筋肉の正しい収縮を感じ取るといった局面において、 その能力に圧倒的な違いが出てきます。 そして患者さんのお身体を扱う際の一つ一つの細かな所作として、その違いが現れてくるものなのです。 きっと多くの患者さんはプロフェッショナルなその手に触れられた瞬間に、その「違い」を肌で感じるでしょう。 IMIC学長 石川貴章 ホームページは以下です。 https://imic-edu.com/