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初めて入る彼女の部屋から聞く雨音は、しっとりと重くて、世界に2人だけしかいないんじゃないかと、そんな気がして、たまらなくドキドキした。 人生とは知ることだと思う。 だから新しいことをどんどん知りたい。 逆に、この世に知らないことが何一つなければ人生なんてかけらほども面白くないだろうなと思っている。 そういう意味でも幸せな日だった。 彼女のキスの仕方も、テレビを見ながらしてもらう膝枕の快適さも、彼女が寝る前にタイマー機能でテレビを消すことも、そしてそれらを知らな
見事な曇りだった。 晴れ間を一切見せない、なんなら雨が降るんじゃないかと不安になるくらい。 「晴れるといいね」 君はそう言っていたし、俺もそう思っていたので残念ではある。 でもそんなことは無関係だ。 なんたって今日はデートだから。 別に卵焼きが食べたかったワケではないし、万博公園に行きたかったワケではない。 君が作るものが食べたかっただけだし、君とゆっくりできるなら大和川の河川敷でもよかった。 今日、初めて君と手をつなぐ。 多分、きっと。 君が左手に荷物を持つもんだ
最近ちょくちょく大阪の福島で飲んでいる。 温泉街のように活気に溢れ、綺麗すぎず馴染みやすい街並み、手頃な料金で美味しい料理。 人気が出るのも頷ける。 今日も飲みに来ている。もちろん女の子と。 偶然見つけたかのように馴染みの店に行く。 その方がかっこいいと思っちゃっている。 ハイボールを注文し、通されたカウンターに腰掛けた。 ふと隣の席に座っているカップルに目をやると男女ともに半袖だった。 もうそんな季節かと思いを巡らせる。 とても長い冬だった。 その分だけ春の喜びも大き
新幹線の乗り換えで徳山駅ホームに降り立った。 外は土砂降りの雨、早起きでボーッとした頭に雨音が心地いい。 数える程しかないホームの椅子に座ると隣にピンク色のジャケットを着ている若い女が居た。俺は風下に居たもんだから、時折吹く風に乗ってくるドン・キホーテのような匂いが鼻についたが、不思議と悪い気はしなかった。 たった10分しかない乗り換え時間に、本を開く気にもなれず、雨に打たれる線路をただ見守っていた。 子どもの頃、濡れないところからただボーッと雨を見るのが好きだった。 こ