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隣の女

新幹線の乗り換えで徳山駅ホームに降り立った。
外は土砂降りの雨、早起きでボーッとした頭に雨音が心地いい。

数える程しかないホームの椅子に座ると隣にピンク色のジャケットを着ている若い女が居た。俺は風下に居たもんだから、時折吹く風に乗ってくるドン・キホーテのような匂いが鼻についたが、不思議と悪い気はしなかった。

たった10分しかない乗り換え時間に、本を開く気にもなれず、雨に打たれる線路をただ見守っていた。
子どもの頃、濡れないところからただボーッと雨を見るのが好きだった。
こんな風に雨を見なくなったのはいつからだろうか。

ふと隣を見ると、女も雨を見ている。
俺よりも10歳くらい歳下だろうか、綺麗な顔をしている。

「10年前は何をしてたかな・・・」なんて感傷に浸ろうと思ったが、そんな間も無く次の新幹線はやってきた。

女はいつの間にか居なくなっていた。

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